十二 決断と決着を求め
秀一は警察署に拘束されていた。目の前の刑事は凄まじい怒声を上げ、取り調べを行う。それは今までしていた刑事ではなく別の刑事。あの時秀一の家に来た刑事は今、2人とも病院に行っている。
「もう一度聞く。波華美奈は何処に逃げた! 知ってることをしっかり話せ! 今あいつは警官の銃も所持してるんだ!」
ひたすらに恫喝するが変わらないままに秀一は答える。
「分かりませんし知ってる事は全部話しました」
それにさらに刑事は怒りを膨らます。
「きさまぁ!」
拳をかため振りかぶったとき、
「やめときなさい。後々面倒だぞ」
右肩に怪我をした刑事が入ってきた。
「すみませんが今事情聴取の最中ですので」
「2、3話をするだけだ。少しはずしてくれ」
数秒間のにらみ合いのあと渋々と出ていった。
「さて、君のしたことの重大性は理解してるかな?」
秀一は答えない。その沈黙にふぅとため息をついた。
「彼女には今現在5人を殺害した容疑がかかっている重要参考人だ。公務執行妨害に殺人未遂も犯している」
その言葉に秀一は疑問を浮かべる。
「5人?」
「そうだ」
諭すようにゆっくりと答える。
「君が発見した3人と彼女自身の両親だ」
それを聞いた瞬間、秀一の表情が沈む。
「彼女の心は歪んでいる。君と一緒にいたい一心だが、それによって多くの人が死ぬ」
肩に手を置き語りかける。
「彼女を止める手助けをしてくれないか?」
それは何かの契約のようにも感じられる語りかけであった。
しかしその思考もケータイの着信で中断させられた。
「すまないね」
そう言うと秀一に背を向け幾つか話すと振り向き、
「彼女の殺人容疑は6人になった。君の母親もだ」
そう告げられたとき秀一は頭を抱え絶叫した。その声を背に受けながら外で待っていた刑事と入れ替わった。
「うまくやれよ。今なら簡単だろ」
含みのある笑みを送る。
「そちらこそ。すぐに動かせる奴等を待機させておいてくださいね」
獣のような笑みで返答した。それは小さな声で交わされたやり取りであり誰も気づくものはいなかった。
――――
秀一は近くのホテルにいた。秀一の解放は夜になってからだった。家は現在使用できないために警察がとってくれたものである。
そこで秀一はあることを考えている。美奈についての事だ。もう手に負えない殺人鬼になってしまったのか。完全に狂気に染まってしまったのか。しかし信じたくない。ミナが喜んで人を殺すなんて。
ひたすらに考えを秀一は巡らすが答えは出ない。理由が分からない。その時、ノックが部屋に響いた。
「お~い秀一~開けてぇな~。呼んだんわそっちやろ~」
間延びした声に気がつく。
「ああ悪りぃ」
立ち上がり、呼んでいた海を招き入れる。
海は秀一の顔を見た瞬間剥がれるように笑顔がなくなり、全力で顔面を殴り付けた。秀一は後ろに倒れるがふらつきながらも体を起こす。
「取り合えず一発。あとどんくらいいくかは話次第や」
秀一を見下ろしながらそう宣言し部屋の奥へ向かっていく。それに秀一はただ「すまない」と呟いた。
「ほな話しな」
堂々とした態度で座り腕を組ながら促した。
「大丈夫だ。話すよ。全部……」
秀一は初めて全てを吐き出した。美奈の事も、10年前の事も、今回の事も、自分の今の想いも全てである。
全てを吐き出した秀一はただ俯き、吐き出した物を受け止めた海は天井を仰ぎ見ていた。
「ふぅ、さよか」
そのまま立ち上がり、
「これで終いや!」
再び全力で殴り付けた。
「で、どうすんや? おまえはまだ選ぶことができるんや」
さっきまでとは変わり静かに話しかける。
「見捨てるか拾い上げるか。自分でケリをつけるか他人に任せるか。まぁぱっと思い付いたのはそんなとこやな」
秀一はその言葉を噛み締める。
「どんな選択でもええ、聞かせてくれへんか? おまえ、清宮秀一は波華美奈をどうすんのか」
真面目な一言。秀一はどうするか考えていたが一つの確信が得られないため、それを口には出せない。
「ほな確信が得られたら教えてくれ。何か困ったことがあったら頼ってくれてエエで」 そう言って外に向かい出ていく。
「本当にすまない! 恩に着る!」
秀一の本気の感謝。
「あー頼まれたもんはテーブルの上や。がんばれよ~」
秀一は最後の確認のため、自分の決断、自分の行為、それを決める情報を得るためある所に電話をした。
「もしもし、警察ですか……」
結末へ向かいだした。