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十一 少女の願いは……

 「もうシュウちゃんに近づかないようにあの女にはちゃんと言っておいたから」

 美奈は無邪気な笑顔で秀一に近づいて話す。

 「あんな奴に騙されるなんてやっぱりシュウちゃんは優しいね。でももう大丈夫、ミナがあんな奴等からシュウちゃんを守るから安心してね」

 美奈の無邪気さに秀一は打ちのめされた。何かとても大きな理由があるかもと言う願いは届かない。

 「覚えてる? 明後日はシュウちゃんの誕生日なんだよ。だから、「なんで!」

 秀一はその言葉を遮る。

 「どうして……琴葉を殺したんだ。どうして……」

 秀一の言葉にばつが悪そうに、

 「だってミナとシュウちゃんは結婚するんだよ。でもあいつはそれを邪魔しようとしたんだよ。話し合いもしようとしなかったんだから仕方ないでしょ?」

 「結婚? ミナは何を言ってるんだ?」

 何とかその言葉を理解しようとするが秀一は思い付かない。

 「そんなことミナにそんなこと言ってない! 何を勘違いしたんだ! そんなことで……琴葉を殺したのか」

 秀一はその場に膝をつく。

 「何で……そんな意地悪言うの? シュウちゃんとあのとき約束したじゃん」

 美奈は声を震わせ、笑顔が曇りだした。

 秀一はふと夢のことを思い出し、

 「まさか……幼稚園の頃に言ったことか?」

 思いついた事を言葉にした。

 「よかったぁ」

 美奈は目を涙で満たしながらも笑っていた。

 「何でそんな昔の話を理由にするんだ! 人を殺す理由に!」

 秀一は声を荒げて言う。

 美奈は無邪気な表情に戻して、

 「シュウちゃんにそばにいて欲しいんだもん」

 そう答えた。

 「昔、ミナはずっとひとりぼっちだったでしょ。ひとりぼっちなのは寂しかったけど誰かと話すのも怖かった。でもシュウちゃんはあまり話をしなくてもそばにいてくれた」

 目を閉じ、当時の事を思い出しながら、心の底に秘めた思いを美奈は語っていた。

 「怖くなくなった頃にミナから色々な事を話したよね。気がつくとミナはシュウちゃんにずっとそばにいて欲しいと思うようになったの」

 美奈は真っ直ぐに秀一の目を見つめる。

 「だからミナはシュウちゃんがそばにいてくれるためなら何だってする。どんな事だってやりきる」

 美奈の目には力強い思いが込められていた。

 「だって……ミナにシュウちゃんはあの時」

 その時、言葉を遮るように玄関の扉が開かれ、そこに2人の刑事が立っていた。

 新米の刑事とベテランの刑事である。その1人は秀一を事情聴取した刑事だ。

 「失礼。波華美奈さんだね。少し話を聞かせてもらうよ」

 2人は完全にあっけにとられていた。ベテランの刑事は警察手帳を見せながら新米の方へ目線で合図していた。

 「少し署まで来てくれますか?」

 一歩近づくと美奈は奥へ引っ込んだ。

 「っ! 捕まえろ!」

 素早く新米に指示を出し、それに従い追いかけたが、

 「邪魔」

 戻ってきた美奈は鉈を全力で振り回した。

 「うわぁ!」

 新米の刑事は鉈を避けたがバランスを崩し後ろに倒れ、美奈はそれに追撃する。

 「死ね」

 降り下ろされた鉈の刃を掌で必死に受け止めたが、赤い血が流れ出し新米の顔に滴が落ちる。

 「うぅ……あぅぅ……」

 ガチガチと歯を鳴らし必死に刃を握りしめているが、何時その拘束が解けるか分からない。ベテランの方は美奈を拘束せんと動いたが、

 「何をする!」

 秀一がそれを止めた。

 「離せ!」

 邪魔をする秀一を振りほどかんと腕を振った時、美奈が鉈を振り割って入った。

 「シュウちゃん!」

 その一振りで右肩から真下に掛けて傷ができる。それは服を裂き赤い血を滲ませた。

 それでも玄関を塞いだままの刑事を見て美奈は家の中に戻ろうとして振り返ると、拳銃を構える新米がいた。

 「ミナァァァァァァ!」

 秀一は美奈が撃たれるかと思い、叫んでいた。しかし銃声はせず代わりに何かが吹き飛び周りに血を撒き散らした。

 「ひぎゃぁぁぁぁ!」

 右手首から先を失い悲鳴を上げる新米がいた。そのまま倒れうずくまる。一瞬で鉈を振り、拳銃ごと切り飛ばしたのだ。

 「シュウちゃんこっち」

 美奈は手を引き奥に行こうとするが、反対の手を刑事が掴んでいた。それを見た美奈はあうあうと今にも泣きそうな顔で困っていた。

 「早く起きて捕まえろ!」

 新米に檄が飛ぶ。それに秀一が反応した。

 「ミナ逃げろ!」

 その叫び声が響く。

 「え……あぅ……」

 美奈は困惑したが、

 「早く!」

 秀一が急かしたとき美奈は涙を流して裏口に向かった。

 「絶対に……絶対に助けるから待っててね」

 涙を流しながら、しかし笑顔を見せて美奈は出ていった。

 ベテランの方は直ぐに追いかけるが、右腕が巧く動かないためすぐに追跡を断念する。秀一は目の前の血溜まりを、膝を付き手を付きうなだれて見つめていた。

 「何て事をしてくれたんだ……」

 刑事の言葉は全く聞いておらず、秀一は自分のしたい事するべき事をひたすらに考えていた。

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