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十 少年の想いは……

 住宅地のとある一角が野次馬とそれを抑える警察で溢れていた。

 あまりにも凄惨な現場は人死にに慣れた警察の人間でも目を背ける者がいたくらいのもので、あまりにも物々しい雰囲気が野次馬を余計に引き付けていた。

 警察が来てから2時間が過ぎた頃3人の遺体が運び出され、その光景を秀一はパトカーに乗ったまま見続けていた。

 「ふぅ、ずいぶん待たせたね」

 気がつくと扉が開かれくたびれたスーツを着た40代後半の男の刑事の人が乗り込んだ。

 「あれほどのモノは珍しくてね、少々時間がかかったよ。では君の事について署に向かいながらでも軽く話そうか」

 温和な声質で刑事は話を進めながら警察署に向かってパトカーは走り出した。


――――


 「つまりあれは全て君の幼なじみの波華美奈って娘がやったて事だね」

 確かめるようにゆっくりと優しく刑事は秀一に話しかける。

 「はい。たぶん……いえきっとそうです」

 「そうか……それで美奈って娘とは連絡はとれないんだね」

 「はい。ミナはケータイを持ってないので。昨日も帰ってきませんでした」

 聞かれたことに秀一は嘘偽りなく淡々と答えていく。大切な人が大切な人を殺したことで秀一は深く考えることを半ば放棄しているのだ。

 「ふ~~~む、そうか」

 刑事の人は何か考えを巡らし1つの方法を試すことにした。

 「まぁ仕方あるまい。取りあえず今日は帰りなさい。美奈って娘はこっちで探すから余計なことはしないように」

 刑事は一応秀一に釘をさした。

 「それに君は見た訳じゃないんだろ? 犯人と決まった訳じゃ「違う! あれはミナがやったんだ! 間違いない!」

 秀一は発言を遮り大きな声を出した。

 「まぁ落ち着いて、帰ってゆっくり休みなさい」

 秀一はそのまま強制的に帰された。その行為に他の刑事はかみつく。

 「何やってんですか! もっと叩くことはあるでしょう!」

 その当然の反応に、

 「そんなことよりまず美奈って娘の確保が重要だ。1番楽なのはあちらから彼に接触してもらうことだ。解るな」

 その言葉に皆は押し黙る。それはまだニュースになっていないある情報を知っているがゆえにだ。

 「おい付いてこい。追うぞ」

 そう言うと1(・・)で帰された秀一を追っていった。


――――


 秀一は帰り道、美奈に会いたいと切実に思っていた。本当の事を知りたい。本当の理由を知りたい。こんなことをするはずがない。しかしあれは美奈がやった確信を秀一は持っている。

 「どこで間違ったんだろう」

 誰に聞かせるでもない言葉は何の反応も起きるはずはない。

 気がつくと秀一は家の前までたどり着いていた。ため息をつきつつ扉を開ける。

 「おかえりなさいシュウちゃん。やっと二人っきりになれたね」

 満面の笑みを浮かべた美奈がそこに立っていた。

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