第四話:剣 神VS鬼 武 者
ええ、ようやく半年分の更新ができました!
戦いの描写はやっぱり難しいですね?
それでは、どうぞお楽しみ下さい!!
霧影Side
翌日、壁に背を預けて寝ていた俺は自然と目を覚まし、外に出た。まだ誰も起きては居ないが、凄まじい気配を遠くから感じる………恐らく俺だけに感知できる様に放っているのだろう?普通なら諏訪子も気付くはずの気配なのに、それが無いのが何よりの証拠だ
「この気配は………フツヌシ?それに混じって神奈子やスサノオの気配もあるな………」普通は俺より、諏訪子に送るだろ?こっちの総大将はあの子なんだから………でも向うもやる気満々みたいだな?何たって、あっちには軍神、武神、剣神の三柱が居るんだ。バトルマニア……もとい、戦いを司る様な神が三人も居るとなると、俺も無事では済まないかも知れないな………
と、そんな事を考えてる内に朝陽が登ると、本殿から諏訪子が出て来る
「霧影?もう起きてたの?」
「ああ、実は、奴さんから猛烈なお誘い(気配)が届いてね………叩き起こされたんだよ」
「何でまた?普通なら私に来るでしょ?寄りにも由って何で霧影なのさ」
「恐らくだが、あの場所に居た俺が敵から見れば、戦争に措ける最大の脅威に思えたんだろう?諏訪子はまだ、姿を見られて無いからな?知らない奴に送るより知った奴の方が、何かと気を使わなくて良いんだろ?全体に送ってしまったら民にも悪影響が出る」
「意外な処で、律儀と言うかなんと言うか………まぁ、敵にして見れば中々如何して出来る見たいじゃん?民を説得させる手間が省けたよ」
「さて、君も起きたし………行くか」
「ごめんね、霧影………本当なら私が戦わないと駄目なのに、貴方に戦の大部分を任せてしまって……やっぱり今からでも遅くは「それ以上は言わない約束だ」あ…う……」諏訪子はやっぱり優しい子だ。祟り神とか言われてるけど、実際は民や知り合いが心配で怪我したり死んで欲しくないから、ワザと、人が耐えられる軽めの呪いを掛けて畏怖を持たせる。しかし、俺の様に特殊な奴や上位の妖怪や神には、呪いが効き難い事が多い
「乗り掛かった船なんだ、最後まで乗っててくれよ?」
「………分かったよ。じゃあ行こう!」暗い顔していた諏訪子だったが直ぐに笑みを浮かべながら、何時もと同じ、民に畏怖を持たせる威厳に満ちた雰囲気と共に俺達は戦場へと赴く事にした
諏訪子 Side
私達は戦場にある自分達の陣地に辿り着くと、目の前には私が神力で作り上げた神兵と私が土着神の頂点に立ってからも仕えてくれたミジャクジ達。そして今、私の隣に立つ緋色の鎧を纏い、私の事を友と言ってくれた男………半人半鬼の半妖・荒哉 霧影
「聞け、大和の神々よ!!我が名は、洩矢 諏訪子!!この土地を治めし祟り神なるぞ!祟られたく無ければ早々にこの土地から立ち去るが良い!」
「そして我の名は、荒哉 霧影!洩矢神の親友にして鬼武者なり!我を恐れぬと言うのなら、我が太刀でその命、斬り伏せてくれる!!」
たった十数年の付き合いなのに、私の祟りを恐れずに傍に居てくれた、たった一人の友人を私は、勝ち目が無く死ぬかも知れない戦いに送り出そうとしている………それを嫌な顔一つせずに引き受けた………私が始めて愛おしいと思った人………ああ、そうだ。私は彼の事が好きなんだ
神奈子 Side
「凄まじい程の覇気だな……アレで半妖なのか?」たったアレだけの名乗り挙げで此処まで、覇気が伝わるとはなぁ………半妖にして置くには勿体無い
「心地良い殺気ですなぁ?矢張り戦場は、こうで無くては張り合いが無いと言うものですなぁ!素戔嗚殿!」フツヌシ殿も、自身の背に幾十もの剣群を携え、戦の準備は既に整っている様だ
「うむ。確かに、この戦争は勝ち戦だが………此方も痛手を十分に受けるのは目に見えておる………そして、あの若武者こそが、洩矢軍最大の戦力と我は見るが」対するスサノオ殿も、手に携えた天羽々斬剣を杖の様に地に突刺し戦場を見定める
「私は八咫烏の眼を通して戦場の行く末を見定めます。スサノオ、フツヌシ殿、神奈子殿、如何かご無事で………」アマテラス殿は基本的には戦う事はせずに、八咫烏の眼を通して陣地にて戦争の様子を見守るのが主だ。それに私はアマテラス殿が戦った所を一度も見た事が無い………
「そうじゃ?サグメは何処に居る?逃げては居らぬか?」フツヌシ殿が、今回の戦争の原因であるアメノサグメが逃亡して入ないか疑問を投げかける
「彼女でしたら御自身の布陣に居るのを眼を通して確認しています。まぁ、彼女も神の端くれ………多少の威厳がある分、私達の様な高位の神と居たら負けては居られなかったのでしょう?それ故に逃げる事等出来る筈も無いし、逃げた処で罰せられるのは明らか。なら逃げずに居た方が、まだ生き残れる確率が有ると判断したのでしょうね?」流石は、アマテラス殿だ。十分に的に入った答えだ
「っと、では、そろそろ此方も進軍するとしよう。彼方も進軍して来た様だしな?」
「そうじゃなぁ?スサノオ殿、抜け駆けで悪いが先にあの若武者と殺りおぅて来るわい」
「ぬぅ……仕方ない、我は本陣の守備を務めるとしよう」スサノオ殿は渋るような顔をするも、先鋒をフツヌシ殿に譲り、本陣の守備を引き受けた
「私は直接、洩矢神の所へ乗り込むゆえ戦場は任せるぞ?御二方?」
「おお!任されたわい!」
さて、戦の開始だ!待っていろ洩矢 諏訪子……その祟りとやら、私の御柱で打ち砕いてやる!!
霧影Side
「さて、啖呵切ったのは良いとして………俺は戦場を抜けて敵の本陣に向かうとするよ」流石に神兵やミジャクジ達じゃ、諏訪子の居る本陣兼神社への道を防衛し塞き止めるのが精一杯だろうな?何たってあのフツヌシやスサノオが居るんだからな………
「わかった………でも無理しないでね?無理だと思ったら直ぐに撤退して」
「ああ、わかってる。神兵とミジャクジ達が進軍し易い様に敵を蹴散らす」敵側の神兵程度なら苦戦はしないだろうから大丈夫として、問題はスサノオとフツヌシだ………どちらが来るか?或いは二人で攻めて来るのか?其れだけで戦況は大きく変わるから油断できない
「じゃあ、行ってくる!」俺は、刀を握り締めながら神社の階段を駆け下り戦場へと向かった………
諏訪子Side
「さて、啖呵切ったのは良いとして………俺は戦場を抜けて敵の本陣に向かうとするよ」
「わかった………でも無理しないでね?無理だと思ったら直ぐに撤退して」単身で敵の本陣に乗り込もうと言う霧影に、私は心配で堪らなかった………
「ああ、わかってる。神兵とミジャクジ達が進軍し易い様に敵を蹴散らす」確かに、敵側の神兵程度なら霧影の敵じゃないのは分かる………でも神が相手では話が違う。下級神程度だったら余裕だろうけど、上級神………しかも最上位の神が相手だった場合は手加減でもされてない限り勝つのは難しいだろう
「じゃあ、行ってくる!」そう言い残し、彼は神社の階段を駆け下りて戦場へ向かった。如何か、無事に帰って来て………例え負けても良い、生きて帰って来てくれるなら私は其れだけで満足なんだから………
霧影Side
「はぁぁぁ!!」俺は味方とは別に一人で戦場を駆け抜ける。手にした刀と雷幻刀を振い大和の神兵達を次々薙ぎ払っていく
「邪魔をするな!退け!!」雷幻刀の雷を刀に纏わせ、雷の刃で大勢の神兵を吹き飛ばす。確かに諏訪子の言った通り、俺の力は異常に上がっていた。ほんの少し力を使っただけで此処までの威力とは………此れならもう少し威力をセーブしても良さそうだな?
そんな事を考えながら、敵の拠点の一つに差し掛かった直後、嫌な感覚が頭に過ったので頭上を見たら空から何かが降ってくる………って、アレは剣か!?しかもあれ程大量に降って来たら怪我どころか、即死だ!!?
走るのを止め、寸での所で後ろに飛び移ると剣群が次々と地面に突き刺さり針山地獄のならぬ剣群地獄で死ぬ所だった………
「今のを避けるか!!矢張りワシが見込んだ通りの強者よ!」すると、聞き覚えのある声が響き渡る………
「フツヌシっ………」俺はスサノオも居ないか辺りを見回すが、姿どころか気配もない………訳では無いがもっと奥に居るだろうな?
「警戒せんでもスサノオ殿は此処には居らんわい。ワシが先鋒を譲って貰っただけよ!さぁ、死合うぞぉ!!」両手に先ほどの剣を持ち、背に先程の剣群を浮かせ此方に構えてくる。対する俺もフツヌシに向かって構えを取る
「ぬっはぁ!!」フツヌシは巨体を生かした、勢いのある剣撃と背の剣群を交互に繰り出してくる
「せいっ!!」対して、その攻撃を打刀と雷幻刀で弾き返す。攻めよりも、まずは防御に集中し攻撃の隙を窺うが、如何せん威力が凄まじく、時々手が痺れそうになる………
「如何したぁ如何したぁ!!防ぐだけでは、ワシに勝てんぞぉ!!」せめてその剣の弾幕さえ何とか出来れば良いんだがなぁ………
「ふっぜい!!」霊力を注ぎ、雷を纏わせた衝撃波で背の剣群諸共フツヌシを軽く吹き飛ばした
「ぬおっ!?」体制を崩したフツヌシに霊力を注ぎ込んだ雷幻刀の力を生かし打刀にも同様の雷を纏わせながら斬りかかる
「うおおっ!!戦術殻‐雷‐『白雷蒼衝塵・双月』!!」雷を纏った二振りの刃から繰り出される連続斬りの後に、×の字を描いた直後、フツヌシの頭上から蒼白い雷を浴びせた………土煙で前が良く見えないが、此れなら幾らか傷を負っているはずだ。斬りかかっている最中に背の後ろに浮いている剣で、幾らか攻撃を防いでいる感触は有ったが期待はできるはず………
「ぬぅ………中々やるのぅ?矢張り半妖にして置くには惜しいのぅ!だが此処で屠らねば為らぬとは、何と悲しき事よ!!!」背の剣群は五~六本程砕けただけで、まだ20数本位残っている。一応、僅かな斬り傷と火傷の裂傷はあるも、その程度のダメージしか与えられていないのだ………
そして、フツヌシから異常な程の力を感じる。相当の神力を溜め込んでいるのが分かる………ヤバイ!どんな攻撃かは知らないが、アレを受けたら一溜りも無い!?俺は回避と防御に徹底する構えをとった
「行くぞ!!『千坤断鎚陣』!!」宙に浮かせている剣を全て、大地に突き刺した。すると周囲が地震の様に揺れると同時に、地面に次々と罅が入り其処から形は様々だが、数多の剣が弾幕の様に飛び出してくる。其れらの剣は空に昇ると、今度は雨の様に降り注いできたのだ………
「ぐぅっうぅ………」此れを喰らって無事な訳がない。致命傷は避けたものの、全身斬り傷だらけだ………まだ1つ目の拠点で此処まで傷負うとは思わなかった。まさか、こんな最前線に剣神・フツヌシが居るなんて思わないだろ?普通?鎧も帷子も所々ボロボロだが、此れは別に問題無い。時間が経てば勝手に修復されるからだ
「ほぉ!アレを喰らってまだ立っておるとは、流石、ワシとスサノオ殿が見込んだだけはあるわい!!」
「誇れ小僧!!じゃから、此れで最期だ!苦しまずに逝くがよい!!」地面に突き刺さった大量の剣を自身の下に集め、俺目掛けて射ち放ってきた。だが、こんな所で死ねるか!俺にはまだ、アレがある!?
あの弾幕は、雷幻刀と打刀じゃ捌き切れない。俺は雷幻刀を戻し、もう一つの力を使う為に即行で霊力と妖力を籠手に注ぐ。掌から溢れ出した紅蓮の焔を鞭の様に振い、弾幕を全て弾き返した。フツヌシは此れに驚き「何じゃと!?」と声を上げた
フツヌシSide
「何じゃと!?」それは突然じゃった………ワシの大技で、致命傷は無いもののそう簡単に素早く動ける様な傷では無かった。なのに、目の前の小僧はワシの剣群を全て弾き返しおった………奴の掌から溢れ出るあの炎は次第に形を成していく。
「何じゃ………その大剣は?ワシが知る限りでは、その様な剣は見た事がないぞ?」あの巨大な剣を先程の様な、撓りのある動きができる剣など聞いた事が無い!ワシはとんでもない存在に戦いを挑んでしまったのではないのか?半妖で在りながら大妖怪の如き力を内に秘めながら、力に溺れず信念を貫く様な金色の瞳の先に何が在るのか………
だが、最早引けん。ワシは神である前に、一人の武人としてあの者に勝ちたい!例え勝ち戦であろうと、ワシ個人としても負けられんのじゃ!!
霧影Side
何やら焦りの色が見えたフツヌシだったが、再度構えを取り攻撃を再開してきた。俺は鞭のように撓る焔の大剣………焔穿剣を振るう。軌道が読み辛い剣先は迫り来る剣群を次々弾き飛ばす
「俺は進む!友の為、そして進むべき道を歩むために。だからフツヌシ、俺は貴方を倒す!!」霊力と妖力を焔穿剣に注ぎ込み、溢れ出る灼熱の焔を纏わせると同時に其れを振う。まるで龍の如く、迫り来る剣を次々溶かす
「何と!?ワシの剣が!!?」
「うおおお!!戦術殻‐焔‐『龍臥滅焔塵』!!!」龍の如き灼熱の焔は剣群諸共フツヌシを飲み込み、拠点の壁を貫通した………
通り過ぎた場所は黒煙が立ち昇る………すると人影が見えるようだ
「ぜぇぜぇ………み、見事よ………此処までの力とは、矢張り見込んだ通りよのぅ?完敗じゃわい。」全ての剣を防御に回し何とか生き延びたフツヌシだが、満身喪失の表情を浮かべ地面に膝をついた………
俺は、大和の本陣に向かおうとしたら「待てぃ!!」と呼止められてしまった
「何故ワシを殺さん?敗戦の将の首を取れば其れだけ味方の士気が高まると言うのに、何故其れをせん!?」
「無益な殺生は控えてる。特に貴方みたいな神は特にね?それに討取る神は既に決めているさ」
「やはり、此度の戦の元凶であるサグメか?」
「ああ、アイツが生き延びれば、また同じ様な事を繰り返すに違いない」事の発端は、あのサグメの傲慢な態度に依るものだった。其れさえ無ければこの様な戦は起きなかったかも知れない………まぁ、この世界は俺の知ってる世界とは若干異なってるから絶対とは言い切れないけどなぁ?
「むぅ………しかしのぅ?ならば首の代わりにワシを退けさせた事を名乗り上げればよい?その程度であっても士気は相当高まるじゃろうて」
「そうか?ならお言葉に甘えて………」俺は息を吸い込み、腹の底から声を上げる
「敵将・フツヌシ!!この鬼武者が勝利したり!!!?」此方の神兵やミジャクジ達が俺の勝利宣言に、甲高い声を上げた
「じゃあ、貴方も早く退避してくれよ?俺は良くても周りが見逃さないだろうからな?」
「分かっておるわい。雑兵なんぞに討ち取られてたくはないからのぅ?」フツヌシはそう言い残し、戦場から退避した………
「あと厄介なのは、スサノオか?サグメも何処かの拠点に隠れて居るかも知れないから、虱潰し(しらみつぶし)に探さないとな………」俺は直ぐに、次の拠点に向かうことにした
一方、その頃の大和本陣付近の拠点には、一人の武神が佇んでいた
「スサノオ殿………フツヌシ殿が退いたようです………」バサバサっと我の下に降りてきた八咫烏が報告に来たようだ
「そうか………では、引き続きサグメの監視と姉者の目として戦場の観測を頼む」そう言い終わると、八咫烏は頷き空高く飛び去った
「フツヌシ殿を退かせる程の力量が有るとはな………我の目に狂いは無かったようだ。早く来るがよい鬼武者とやらよ!貴様が我の好敵手になる事を祈るぞ!!クックック、アッハハハハハ!!!」
強者との戦いを望むスサノオは、甲高い笑い声を上げながら戦場を見定めていた………
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