第六章
三人に連れられ、僕は彼らの隠れ家に来ていた。彼らの隠れ家は、カバドの最南端の河の側にあった。三人が暮らすには少し大きめなように思えるが、中は快適だ。
一階建ての木造建築。玄関からすぐさまホールが見え、そこには小さなテーブルと三つの椅子がある。そして、机から北東の方角にキッチンがあった。奥に入れば四つのドアがあり、右がネオ、右寄りの真ん中がリラ、左寄りの真ん中はキラが使っているらしい。
「ここは?」
残った一部屋を指しながら、僕は三人に効いた。
「そこは客間としてあるんだが……」
「?」
口を閉じたキラに目を向ける。すると三人がニヤニヤと笑っていた。
「今日から、そこがリュウヤの部屋だぜ」
「いいの?」
ビックリして聞き返す僕に、三人は頷いた。胸の中で鼓動が早鐘のように速いリズムで刻んでいく。それを抑えるように、僕はゆっくりとドアを開けた。
「うわぁ……」
部屋の中は質素だったが、思わず感嘆の声が漏れた。端に置かれたベッドに、対になるような位置に机が置かれてある。机の隣には小さなゴミ箱があり、さながら人間の部屋みたいだ。これでテレビとゲーム、パソコンがあったら、言うことがない。そこまで求めれるとは思っていないけど。
「凄い……」
それでも、自室よりは綺麗だ。まるで自室と対照的な部屋。
「気に入った?」
部屋に入ってから何の反応もなかったからか、リラが顔を覗かせてきた。ネオ、キラもその後ろにいる。
「うん。でも、本当にいいの?」
「いいって。だって、リュウヤは友達なんだから」
『友達』という単語に慣れてしまったのか、僕は照れながらも笑い返すことが出来た。
「……ありがとう」
不意に口をつついて出た台詞。驚いて自分の口に手を当てた。小さいながらも、やっと口から出た感謝の言葉。胸の奥が、ポッと温かくなっていく気がする。僕は段々嬉しくなり、三人に向かって頭を下げた。
「ありがとう、ネオ、リラ、キラ」
三人はキョトンとした顔をしていたが、そのうち照れくさそうに笑った。『ありがとう』という感謝の言葉を胸に噛みし、僕は三人を腕一杯に抱きしめる。
「リュ、リュウヤ?」
これには三人とも慌てふためいたように驚いた。自分でも何をしているのか。頭の隅で己に突っ込んでいるが、腕の力を緩めなかった。
「本当にありがとう……」
三人のぬくもりを感じながら、僕はふと向こう側の世界を思い出した。両親の腕に抱かれていた幼い僕。友達と一緒に笑い合っていた僕。決して辛い記憶だけではなかった僕の思い出。バグのときには感じなかった温もりのある記憶が次々と溢れた。
僕は決して孤独だけの人生じゃなかったんだ。