最終章
ピピッとうるさく鳴る目覚まし時計を叩き、僕は重たい体を布団から引き剥がした。いまだ寝そうになる顔を数回叩き、学生服に手を通した。
「もう、一ヶ月になるのか……」
ふと、自分の姿を見て呟いた。それほど外見に著しい変化は見られない。強いて言うなら早起きして、学生服を着ていることぐらいだ。
「……少しは成長したのかな?」
開いていた掌をギュッと握る。
彼らと別れたのは、もう一ヶ月近くも前のことだ。
約一ヶ月前。僕は変な世界に居た。TV画面に映し出されたのは不思議な問いかけ。
“この世を捨てる気はあるか?”
あの頃の僕は捨てても良いと思っていた。世の中なんてつまらない。こんな世界に行き続けるより、捨てた方がいいと思っていた。そして連れて行かれたのは、こことは別の世界。そこでネオ、キラ、リラと出会い、彼らの過去を知った。彼らの過去は様々だったけど、共通していたのは、その辛い過去に苦しめられていた、ということ。三人とも、僕の言葉に助けられたって言ってたけど、それは僕もだった。彼らの言葉が、行動が、それまで見えてなかった自分に気付かせてくれた。何より、自分が引きずっていた思いからも解放してくれた。
罪悪感が消えたわけじゃない。
消せるはずがない。
それは、僕が犯してしまった罪。背負っていくべきもの。だから、僕はこの世界に還って来れたんだ。
着替えが終り、僕は息を吐いた。久々の登校のせいか、やたら緊張する。
「大丈夫……もう大丈夫だから。ネオ、リラ、キラ。もう会えないだろうけど……三人は僕と共に居てくれてると思っててもいいんだよね? 僕たちは……家族なんだから」
胸に手を置いて語りかけても、彼らの返事はない。けれど、思いを浮かべた三人の顔は、笑って頷いてくれた。
「うん、行ってきます!」
用意していた鞄を背負い、僕は世界へと飛び出した。ここから始まるのは僕の新しい物語。三人とは別れたけど、また新たな出会いが、きっと見つかる。
「待ってよ~、二人とも!」
「ほら置いて行くぞ?」
「学校まで競争だかんな!」
僕の隣を、小学生三人が横切っていく。その姿が、ふと彼らと重なった。動かしていた足が無意識に止まり、自然と目がその子たちに向く。
『三人とも待ってよ~!』
『ほら、リラ。置いて行くぞ?』
『向こうの木まで競争だかんな!』
彼らとの競争したのはほんの数回のはずなのに、昨日のことのように思い出せる。先頭を走るネオとキラ。その後に僕がいて、最後はリラ。
『ほら頑張って、リラ!』
三人の中に自分の声が混じる。息も絶え絶えになりながら、僕たちは走っていた。そして、最後には四人で寝転がって笑い合っていたっけ。
「……」
不意に微笑が漏れた。彼らから目を離し、僕は学校へと足を向かわせる。様々な音が耳に入ってくる。それは、決して統一されたものではないけれど、不快には思えない音。久しぶりの世界は、眩しくて素敵だと思える、そんな世界だった。
THE END_
ようやく終了しました。
とは言っても、こういった終わり方でいいのか、微妙なものがありますが、まぁ、とりあえず終了できたので良かったです。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!
実はすでに次の小説があります。そちらはまだ書き途中なのですが。
こちらより更新速度は遅くなるかと思います。
出来るならば、そちらでもまた読んでくだされば幸いです!
それでは、またの機会で出会えることを願っています(^^)
最後となりましたが、ここまで付き合ってくださり、本当にありがとうございました。