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第二章


 草原を果てしなく歩いていると、僕らは交易が盛んな街に着いた。彼らから聞くと、この街は世界の交流地点だという。つまり全国の食物や服飾、はたまた多くの種族が集まる街らしい。その街の名前は交易の街カバト。

「広……」

 入ってすぐの僕の感想がその一言だった。街というより国と言ったほうが正しい気分だ。唖然とする僕を三人はニヤニヤと笑ってくる。

「何?」

「驚いてるな~、て思ってさ」

「こんなに大きな町見たことないから。てか、ここって街なわけ? 国……にしては小さいのかな……」

「ここは元々小さな交易の町だったの。そこにたくさんの種族が交流するようになって……今はこんなに大きくなったのよ」

「ふう~ん」

「様々な種族の商人が集まって、たくあんの種族が集まって……カバドはそんな街なの」

「しかも! カバドは向こう側にもあるんだぜ!」

 ネオの台詞に、僕は聞き返す。

「どういう意味?」

「河を挟んだ向こう側の街もカバドの一部ってことだ」

 質問を返してくれたのは普段口数の少ないキラだった。その事と、カバドのこと両方に驚いた。

「日本で言う県並みの広さだな……」

「おー! 兄ちゃん、珍しい服着てんなぁ!」

「肩から下げているのは何だい? 良かったら売っておくれよ」

 喋っていた途中ですれ違った商人らしき動物に話しかけられた。どう反応していいか分からず、僕は困惑しながらも苦笑で返した。

「ごめん、おっちゃん! おばちゃん! こいつの大切なもんなんだ! 売れないってさ」

「そうか! そいつぁ残念だ!」

「大切なもんじゃあ仕方ないね。じゃ今度は店の物を買っておくれよ」

「また後で! 観光中なんだ、俺たち!」

 大声のやり取りを聞きながら、僕はネオを不思議そうに見ていた。笑顔で喋ると彼と商人たちを交互に見比べる。どちらも楽しそうな表情だった。知人なのかと思ったが、名前を呼ばないところを見ると他人同士らしい。

 一通りの会話が終わったのか、ネオは元気に手を振って別れの言葉を口にする。キラもリラも小さく手を振った。僕も慌てて手を振る。

「んじゃ、先に行こうぜ」

 そう言うだけでネオは止めていた歩を進めた。その後姿をまじまじと見つめる。明るく元気に対応出来るのは幼さ故だろうか。

 大差ない歳の差と思っていた自分が一気に歳を食った気分だ。

 上機嫌で進むネオに、僕は堪らずに口を開く。

「あのとき……フォローしてくれたの?」

 しかし、予想していたのとは違う反応が返ってきた。三人は驚いたように僕を覗き込んでくる。

「え? 何? いったい……もしかして、変なこと聞いた?」

 更に喋った僕に、三人は驚いていた表情をフッと変えた。三人とも何が嬉しいのか、ニッと笑っている。

「いや、やっとお前から話しかけてきたな、て思っただけだよ。それに、あの人たちも元気付けようとして話しかけてきたんだぜ、きっと」

「え?」

「子供に商売の話しはしてこないものね」

「あぁ。物珍しかったのは本当だろうけど」

 笑い合っている三人が分からず、僕は怪訝な顔を向ける。

「そんな難しい顔ばっかすんなって!」

「うわっ!」

 ネオにバシッと肩を叩かれた。本人はちょっとのつもりなのか、笑っている。彼の力が強いだけなのか、それとも僕の体が弱すぎるのか。どちらにしても叩かれた肩はヒリヒリと痛かった。

「次行こうぜ♪ 俺たちも、まだ全部見たことねーんだ」

「う、うん」

 もう一度叩かれないようにネオと少し距離を取る。首を傾げる彼に、僕は苦笑で誤魔化した。

 けれど、実はもうヘトヘト。これ以上関わるのは遠慮したい。楽しいし、何よりこれほど長い間一緒にいたことは本当に何年かぶりだった。だから、少しだけ名残惜しい。でも、少しだけなんだ。

「ごめん、僕……」

 俯いてなるべく三人と目を合わせないようにする。

 喉が痛い。声が震え、泣き声のように聞えるかもいれない。それでも、僕には無理なんだ。人に執着することも、自分でも整理出来ない感情に襲われるのも怖い。

「助けてありがと! 一緒に遊べて楽しかった! でも……さよなら!」

 今まで聞いたことのない大きな声に、三人とも驚いた顔をしていた。唖然と僕を見ている隙に、僕は逃げるように走り出す。

「え!? ちょっ……リュウヤ!」

 声をかけてくれるネオを振り切り、僕は三人から全力で走り去った。


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