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第二十五章

 目的の建物を見つけ、難なく中に入れた。リラが閉じ込められている牢屋まで来ると、彼女は心配そうな顔を向けてくる。

「リュウヤ、キラ……大丈夫?」

「うん。長と話したよ。リラ、一つだけ質問に答えてくれる?」

「うん」

「……また一緒に暮らしたい?」

「うん……出来るなら、私は皆と一緒に、また暮らしたい。今度は家出じゃなくて、この一族から一人立ちするって意味で」

「……」

 認めてもらいたい。そんな彼女の気持が、肌を突き抜けて心臓にまで届いてくる。彼女は一歩前進したのだ。言いたいことを吐き出し、自分の過去に打ち克った。それは、本当に嬉しいことだ。なのに、エルフ族の長は理解してくれなかった。出来る事なら、和解させたい。けど、それには恐らく長い時間と実物を見ていく外ないのだろう。言い伝えに縛られず、ありのままを受け入れる。それを出来るようになるまでの時間がない。僕たちには、それに付き合う暇がないのだ。

「そうだった! リュウヤ、キラ、見てて?」

「え?」

 考え込む癖がついてしまったのか、いつの間にか俯いていた顔を上げる。目の前にいるリラは両手を少し広げた。その間から、ポウッと優しい色の玉が姿を現した。それに僕たちは目を見開くが、警備兵のエルフ族は、もっと大きく見開いている。

「見て! 私、火の玉しかならなかった明かりを灯す魔法が、やっと使えるようになったの! 真空の刃だったフライの魔法も……ほら!」

 自分の体を浮かせて楽しそうに話すリラに、僕たちは暫く呆然と見つめていた。今までリラは自分の魔法を使うところを見せたことはない。そして、エルフ族側は、変わってしまった魔法が元に戻ったのが不思議で堪らないみたいだ。リラと同じ魔法を使っては確かめている。

「あれ? もしかして……魔法が戻ったらお咎め無しなんじゃあ……」

「だな。あのおっさん、魔法が変わったことをやたら気にしてたからな。元に戻ったなら、万事解決だろ」

 キラが同意してくれ、僕は胸が一杯になってきた。

 それから、僕の態度にいまだ呆けていた長を無理矢理リラの前まで連れて行った。彼女の魔法が元に戻ったことを不思議がっていた長だったが、僕はそれを上手くあしらった。都合のいいときだけ説明を求められるのは癪だったからだ。

 でも、僕もリラから魔法を見せられたときは驚いた。けど、何も不思議なことではないことに、後から気付いた。自己防衛本能で、リラの魔法が変わったのだ、と考えていたのだ。リラが自分の過去から引きずっていた葛藤、それを乗り越え、前進出来た。それは自分の殻に閉じ籠もり、必死に守り続けてきた自分を昇華出来たということ。自分自身を縛り、苦しめていた彼女は、自分を責めてきていた一族を受け入れることで過去の柵を断ち切ったのだ。

「これで、リラは開放されますよね? 魔法は、あなたたちが望む普通の魔法となったのですから」

「……う、うむ……」

「それから、リラは僕たちと一緒に行きます。彼女自身がそれを望んでいるのですから」

「長、私からもお願いします。私はこの里から出たことで、大切な友人が出来ました。その友人たちと、まだ一緒に生きていきたいです。今度は、家出ではなく、一人立ちということで許可を頂きたいのです」

「しかし、お前はまだ十二。年齢的にも三年早過ぎる」

「でも……ネオやキラ、リュウヤに出会いました。彼らと共に居たから、一族から離れても、こうして生きてこれたのです。ですから、今一度、お願いいたします」

 渋っていた長は、リラのお辞儀に目を見張った。その姿は、まさに一人の女性だ。女の子ではない。顔を上げたリラは、どことなく成長したような、逞しい顔つきをしている。

「……良かろう」

 暫しリラを見つめていた長は、呟くように言った。それを聞き、僕たちは目を見合わせる。

「ただし、一つ条件がある」

「条件、ですか?」

「成人の儀までに精進し、またここに戻ってくるのだ。そのとき、お前次第ではこの先での暮らしを検討していく。無論、両親とも相談して」

「長……ありがとうございます!」

 再びお辞儀をしたリラは、今度は年相応に見えた。ニッコリと笑った顔は十二歳そのものだった。

 リラの手から重たい枷が外れ、牢屋から開放されて、ようやく助け出すことが出来た。牢屋から出たリラは、少し眩しそうに外の世界を見つめていた。しかし、まだネオの救出が残っている。今こうしている間にも、彼の命が無事であるかどうかは分からない。けれど、助けに行かなければ。四人が揃わないと意味がないんだ。誰も欠けてはいけない。誰一人、欠けさせたくない。

「行こう、二人とも」

 見送るエルフ族に手を振り、僕たちは彼らの里を後にした。


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