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第二十一章

 ドロドロとした感触に気持悪さを覚えながら、僕は建物へと近づいた。中は、まるで水のようだった。綺麗な水のように視界はいい。黒い物体の中に突っ込んだはずだったのに、中のほうが明るいだなんて。

 だが、肌触りは最悪だ。まるで泥水に浸かっている気分だった。そして、意外なことに息苦しくない。呼吸がちゃんと出来る。

 あらゆることに驚いた。建物の中に入っても感覚は変わらなかったが、、そこには記憶が存在していた。今、僕は牢屋の前まで来ている。もちろん中にリラの姿がある。彼女は重たそうな枷を掛けられ、体育座りで顔を伏せていた。しかし、僕とリラの間には、小さなリラがいるのだ。今より、ずっと幼い、見た目的に言えば五、六歳という年頃に見える。そして、虚ろな瞳が僕を捉えていた。

「……君は?」

『リラ』

 名前を聞いても、少女はずっと同じ答えだった。

「どうしたの?」

『……』

 質問を変えれば、何も答えてくれなくなる。途方に暮れた僕は、彼女と目線を合わせた。

「リラ、何か言いたいことがあるんじゃないの? 言ってみてよ」

『……』

「僕たちは君を助けに来たんだ。だから、言っていいんだ。だって、僕たちは友達だろ?」

『とも、だち?』

「うん」

 ようやく反応してくれ、ホッと胸を撫で下ろす。だけど、次の反応のほうが、僕はビックリした。リラは大きな瞳から、ボロボロと涙を流していたのだ。そして、彼女は悲痛な声を上げて話してくれた。

『お父さんも、お母さんも……みんな……みんな、私を嫌っているの! いつも姉さまと比べて、身長だって低いって……わたしはわたしなのに! 魔法だってそうよ! わたしの魔法が、危険だって言って! みんな、私を嫌っていじめるの!』

 泣きながら話す彼女を抱きしめ、背中を優しく撫でる。しかし、泣き止む気配がない。僕の服を握ると、彼女は更に声を上げて泣いた。

 彼女をあやしている最中、僕はリラの記憶を見ていた。脳内で繰り広げられる記憶。まるで、夢を見ているようだった。


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