第十九章
ようやく見えた深い森を目の前にし、僕とキラは足を止めた。この森の中に里がある。リラとの距離は目と鼻の先だった。しかし、既に夜中ということもあって、森は薄気味悪さを増している。中に入れば、足元すら見えない。
「リュウヤ、ロープはあるか?」
「うん、あるよ」
肩から提げている袋を下ろし、少し長いロープを取り出す。それを受け取ろうと振り向いたキラの目を見て、僕はドキリとした。闇夜に浮ぶ金色の瞳。その様はまさに猫だった。
「俺は夜目が利く。そのロープで俺たちを結んで森を抜けるぞ。足場が悪いときは俺が教える。難しいだろうが、出来るか?」
それに応えるように、僕はロープを渡した。暗闇で、キラの顔は見えない。けれど、何だか笑った感じがした。彼は無言で僕の体にロープを結んだ。
「リュウヤ、平気か?」
「多分、大丈夫」
「……なんだったら手でも繋ぐか?」
「いや、それは足場が悪いときに頼むよ。多少慣れてきたら見えてくるはずだから。キラは目しか見えないけど、手元のロープは見える。多少歩幅を合わせてくれたら、大丈夫だと思う」
繋がれたロープを手に持って言う。見えると言っても、はっきりではない。うっすらとしか見えなかった。
「行くぞ、リュウヤ」
「あぁ」
キラが進み始めた。腹に巻いたロープが引っ張られ、僕も歩き出す。そして、僕たちは暗闇へと踏み込んだ。