第十五章
当てもなく三人を捜して走り回った僕は、結局何の情報も手に入れられなかった。仕方なく家に戻り、静まり返っている中に入る。
「ネオ? キラ?」
リラが居なくても、二人は居るだろう。そう思っていたのだが、どうやら外れたみたいだ。僕が出て行った後、誰も帰ってきていないようで、家の中はガランとしていて肌寒さを感じるほどだった。
「まだ、帰って来てないのか?」
嫌な予感が胸中に広がる。まるで胸の上に重たい石を乗せているように苦しい。
けれど、何かにしがみつくように、乾かしていた自分の椅子に座った。そこからホールが一望できた。広いホールにはテーブルと椅子があり、その向こうにはキッチンが見える。さきほどまで団欒としていた光景が頭に浮んだ。しかし、浮んだのは束の間。すぐさま幻は消え、他人の家ではないかと思うほどの静けさが広がった。煩いほど元気なネオ、おっとりとした性格のリラ、二人の突っ込み役のキラ。三人とも、いくら待っても戻ってこない。
「……」
いつしか外までも真っ暗になっていた。僕はただ無言で、三人の帰りを待った。自分の椅子に座り、テーブルに顔を押し付けている。しかし、眠気は襲ってこない。ましてやベッドに入ろうとも思わなかった。静けさのせいか、いつもより寒いと感じてしまう。色を失い、音を失った家は酷く物悲しい。その中を何も思わず見渡した。もう、三人の影は見えない。
「……ネオ、リラ、キラ……」
小さく呟いた声すら大きく感じる。けれど、返してくれる声はない。
そこにドアがバンッと荒々しく開かれた。驚いて向かってみると、そこにはボロボロの姿になっているキラがいた。
「キラ!」
慌てて駆け寄ると、キラの体がゆっくりと地面に吸い込まれていく。倒れる寸前で、キラを受け止めることが出来た。そして、ソッと地面に座らせる。
「キラ! 何があった!?」
ぐったりしているキラに声をかける。閉じていた瞼がうっすらと開いた。陰った瞳が僕を映す。
「キラ……」
「……ネ、オたちは?」
掠れた声が耳に届き、僕は無言で首を振った。それに、キラは目を伏せた。
「一体何があった?」
声をかけると、閉じられた瞳が再び開かれた。
「同族に……襲われた……」
「同族? キラの?」
「あぁ」
「どうしてキラを襲う必要があったんだ?」
「……」
黙りこんだキラに、僕は怪訝な顔を向けた。しかし、枯れは力なく笑っただけで、何も話さない。重たい沈黙が流れた。
「……キラ、とにかく今日は休もう?」
「そう、だな」
まるで逃げるように、僕たちは自室へと閉じこもった。