恋を知った日
初めての読みきり作品です!
えっと、花吐き病が出てきます。暗い表現が含まれます。
結構短い作品ですが頑張って書きました。
二日で書いたので低クオですがそれでもよろしければお読みください!
いつも通りの日常。いつもの帰り道。それなのに今日は少しだけ嫌な予感がした。
でも心に蓋をしてそのまま歩いた。
大通りの交差点。今日はいつもより車が多い。
青信号で君は駆け出した。中心辺りで振り返ってこっちに笑顔で手を振った。君に返事をしようと口を開いた瞬間、大きな音がして君は視界から消えた。
十数メートル離れたところが真っ赤に染まって、辺りは悲鳴に包まれた。
その後はほとんど覚えてない。ただ次の日に学校に行っても君の姿はなかった。
心のなかで何度もなんであの道から帰ったんだろう。あの時別の道から帰っていたら、と叫び続けた。
きっと明日も明後日もそう叫び続けるだろう。
それから数日。今日は君に最後の別れを言う。
見慣れない黒い服を身にまとった人たちの間に私も立った。
君が虹の麓に行ってしまったという実感が湧かなくて終始、涙は出なかった。
そんな心で生き続けたある日の朝。枕元に小さな花が落ちていた。鮮やかな赤紫色で息を飲む程に美しく思えた。
学校に着いて君の席があった場所を見つめる。枕元にあった花を勝手に君からのプレゼントだと受け取って感謝した。
翌日。爽やかでほんのり甘い香りがして目が覚めた。枕元を見てみると昨日より多くの花が落ちていた。花は昨日と同じで小さな赤紫の花。
今日はその花で押し花を作った。出来上がるまでどのくらいだろう。そんなことを考えながら眠りについた。
毎日、毎日花は落ちていて日に日に量が増えていった。それと共に数日前から咳が増えていった。咳をする度に花の香りが広がった。
そんな最中で梅雨が来た。毎日のように雨が降った。相変わらず咳は出るし花は落ちている。でも今日の咳は少し違って口の中に異物が現れた。手に取ってみるといつも枕元にあるあの花だった。
恐怖より先に好奇心が勝ってその花を調べた。名前は『リナリア』。花言葉は『この恋に気付いて』。
その後にようやくこの現象も調べた。ヒットしたのは非常に珍しい病気である『花吐き病』だ。
どうやら片想いをしている人が患う病らしい。
でも、片想いをしている感覚はない。花は確かに通学路に咲いていて触った。というとこはその花のどれかが感染源なのだろう。
一人で悩んでいると母親が入ってきた。その光景を目にした時驚いた顔をして一言呟いた。
「まさか...貴方もその病に罹ったの?」
その意味を理解するのに暫くかかった。ようやく理解して言葉を紡ぐ。
「あ、貴方もって?お母さんも罹ったの?」
「...ええ、私も貴方と同い年くらいの時に。でも私は治ったのよ。両想いに成れたから」
そう。この病は両想いになると完治する。それ以外に治す方法が確立されていない。
「...私ってさ誰に片想いしてるのかな」
「知らないわよ...自覚してなかったの?」
「うん、今まで好きになったこと無かったし」
「それもそうね...まあ、きっといつか自覚できるわ。でも早くに気が付かないと、ね」
そういうと母親は部屋を出ていった。
それからと言うもの毎日のようにたくさんの人を思い浮かべた。隣に住んでるお兄さん、学校の先輩、クラスの人気者...でもその誰でもなかった。
他に誰がいたかと考えていると先日亡くなった君が頭に浮かんだ。君を思い浮かべると胸が高鳴り顔が火照った。その時確信した。私は君のことが好きだ。
部屋を出て階段を降りて母親に伝えた。
「お母さん!私の好きな人が見つかった!」
「本当に?良かったじゃない。誰が好きなの?」
「私は...篠宮くんが好き...でも」
そこまで話して前が見えなくなった。目を擦ると濡れていた。
「...見つかって良かった...とは言えないわね。それはもう報われない。あとは命が尽きるのを待つだけ」
「うん、ッ...分かってる...でも、もう終わりなんだね」
その心に気付いて言葉が詰まって時折嗚咽を漏らしながらも黙って泣いた。
ひとしきり泣いて部屋に籠った。この名前の無い感情をどこに捨てれば良いのか分からなかった。
数日間、部屋から出る勇気がなかった。部屋から出た時にはまた母親と泣いた。
数週間。学校に行く気力もなくてやっと行けたのは次の月だった。その頃には咳の量も増えて花も増えて隠しきれなかった。私の机の上にはたくさんのリナリアが落ちている。
始めこそ綺麗だと言っていた友達も私を避けるようになった。でもオカルト好きの友達は寄り添ってくれた。ただ気になっただけかも知れないけれど。
咳が増えるにつれて体に力が入らなくなった。ここ最近は数分に一回数輪のリナリアを吐き出していた。どこかの文献に書いてあったが体の一部が花に変わっているらしい。
また暫く間が空いて今度は歩くのも辛くなった。その頃には学校には行かなくなって花吐き病に理解のある病院に入院が決まった。友達は週に一回。母親は毎日お見舞いに来てくれた。とはいってもみんな駄弁っているだけだった。
でも、それが私は妙に嬉しくてそれでいて悲しくて隠れて涙を流した。日を追うごとに症状は重くなってほとんど寝たきりになった。
なんとなく分かった。私はもうじき虹の麓に行くのだと。病室の窓から見える木は青々と生い茂って蝉が五月蝿く鳴いていた。
最後に何かしたいと思って手紙を書くことにした。ベタかもしれないけどそれが今出来る精一杯だ。からだを起こして微かに震える手で精一杯自分のなかの声を書き記した。
叶うのならもう少し生きていたかった。友達と青春したかった。...彼の隣で一緒に笑っていたかった。
手紙を書いてから数ヵ月が経った。季節は冬。もうじき長かった一年が終わる。
あのとき五月蝿く鳴いていた蝉はきっともう虹の麓についているだろう。
教室ではいつも通り授業が進んでいる。
彼も...私もいない教室で---
如何だったでしょうか?
わたし的には大満足です!
最後は皆様にお任せします。




