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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi


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第5話 初ダンジョン

 俺の現状を話そう。

 冒険者の女性改め凜々花さん、苗字はまだ知らない。にダンジョンへと無理矢理連れていかれ、ゴン太と共にドナドナしている。

 まあダンジョン生まれのモンスターであるゴン太がドナドナしているかどうかは分からないが、同じ気持ちの人が居ると心強いし、きっと同じ気持ちなはずだ。


「どうした悟! 元気がないじゃないか!!」


「いや、無理矢理連れて来られて、元気な方がおかしいです」


「無理矢理だなんて心外な……確かにちょーっと引っ張って来たかもしれないが、拒否しなかったじゃないか」


「あの状況で拒否なんてできないですよ」


 だいぶ自分本位な人だなぁ……。と現実逃避をしつつ、来てしまったからには、生き延びる方法を考えなければ。

 凜々花さんの実力がどの程度なのか分からないが、新人の俺と同じFランクらしいから、そこまで圧倒的な戦力とは計算し難いだろう。

 俺の戦力はゴン太だけだが、魔物であるということしか知らない。


「死んだぁ」


「どうした?」


「何でもないです」


 一切の戦力が分からないまま、ダンジョンを進むなんて自殺行為だよなぁ。


 ここは洞窟型ダンジョンと呼ばれる、言葉通り洞窟のように湿って暗い岩窟を進んで行くダンジョンだ。

 そこそこの時間歩いてきたのに、魔物との遭遇は無し。つまり難易度が高いダンジョンではない……と思うから、凜々花さんは自信を持って進んでいるのだろう……と思いたいなぁ。


「来たぞ、悟!」


「は、はい!」


 凜々花さんの言葉に慌てて周囲を見渡す。

 それは10メートル程先に居た。


 くすんだ緑の肌、小学生低学年程度の背、そこからは違和感を覚える筋肉、そして殺意溢れる棍棒を携えた魔物。

 

「ゴブリン……」


「そうだ。『ダンジョンと言えば』と聞かれたら想像するであろう二大巨頭の内の一体、ゴブリンだ!」


 ちなみにもう一体はスライムだ。

 そんなことはどうでも良いんだが、凜々花さんはゴブリンを倒せるのか? 流石に半年もやっているのであれば、ゴブリン程度は倒せるはずだと信じたいが、彼女のこれまでの言動を見ると、心配になるんだよな。


「よし、悟行け!」


「へ?」


 あまりに唐突な無茶ぶりに、言葉が出なかった。

 言われた言葉を何度噛み砕こうが、おかゆにして優しく呑み込もうが、理解することを頭が拒否している。


「何事も経験が大事だからな!」


「いてっ」


 急に背中を押され、前のめりに転んでしまう。

 何か嫌な予感がし、顔を上げると――


 そこで意識が途切れたようだ。

 再び目を開けると、かすむ視界にゴン太と周囲に浮かぶ火の玉が映る。

 きっとこれは夢だ。そもそもゴン太をテイムしたことすら、夢だったのだろう。きっと次に目を開けた時、俺の瞳に映るのは、テントの天井だ。そうに違いない。

 そう思いながら、再び目を閉じる。


                ◇◇◇◇◇


「知らない天井だ」


 言ってみたかったとかではなく、本当に知らない天井が眼前に広がっている。詳しく言えば、記憶のどこかにはあるであろうシンプルで真っ白な天井なのだが、思い出せない内は知らない天井でいいだろう。


「あっ」


「ん?」


 扉を開けた女性と目が会う。なんて記憶喪失のような思考が浮いてきたが、現実逃避は止めよう。

 扉を開けた女性は凜々花さん、苗字は相変わらず知らない。俺が往年の名ゼリフを言うハメになった直接的な原因である冒険者だ。


「せ、先生!!」


 逃げるように出て行ってしまった。

 ものすごく驚いているように見えたが、どれほどの時間眠っていたのだろう。


「ほ、本当に目覚めたとは……」


 白衣を着た医者と思わしき男が入って来た。

 凜々花さんも遅れて入ってきたが、どこか気まずそうにしながら、顔を俯かせている。


「あの、何があったか教えて欲しいのですが」


「そ、そうだな。君の身に起きたことを話そう……」


 なるほど医者の先生から聞いたことを纏めると、ゴブリンに棍棒で殴られる→脳に重大な損傷を負う→凜々花さんに連れられて病院に運ばれる→手術→一週間が経過する→目覚める。

 なるほど……えっ、一週間も眠っていたのか?


「君が目覚めたのは、ダンジョン発生以前であれば、目覚めたことが奇跡と形容するのが当たり前の重症だったが、今となっては日常と呼んでいいのかもしれない……私は医者としての自信を無くしたよ」


「えっ?」


「君が目覚める要因となったのは、手術のお陰ではなく、狐の妖術のお陰なんだよ」


「狐の妖術……そうだ! ゴン太は何処に!?」


 記憶から抜け落ちていた。

 俺には従魔のゴン太が居たんだ!


「ゴン太くんなら、あそこに居るよ」


 医者が指さした方に目をやると、丸椅子の上で丸まって眠っているゴン太の姿があった。


「良かった……」


 出会って一日……いや眠っている間に一週間経ったらしいが、俺にとっては一日未満の時間しか過ごしていない。だけど見つけただけで、ここまでの安堵感があるなんて……もう別れることはできなさそうだ。

 安堵感の中、ゴン太が目を開くのに気付く。


「コン!!」


「ぐへっ」


 こちらを見て、目を見開いたゴン太が突撃して来る。

 せっかく目が覚めたのに、再び暗闇へと意識を放り投げそうになったが、ゴン太への愛情が留めてくれた。

 ゴン太との感動の再会を楽しんでいたが、それを邪魔する音が個室に響く。


「あっ、仕事」


 慌てて携帯を取り、確認する。

 そこには大量の不在着信に、上司からの脅迫メール、そして今送られてきた驚愕のメール。


「懲戒解雇……」


 携帯のバイブ音が、俺の人生を変える福音となる。


 と信じたいなぁ。



ドブラック企業に裁判の前例を求めたところで無駄です。



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