第44話 【ジャスケダンジョン・一階層】
翌日、【ジャスケダンジョン】へと来ていた。
前回は複数のウルフ相手に手間取り、想像以上の疲労で撤退を余儀なくされたが、今回は違う。新たな仲間のタマ、新たなスキルの【シンクロ】、新たな武器の【長谷部】がある。
「凜々花、頼むぞ」
「はい」
凜々花も前衛となったが、変わらず索敵は彼女頼りだ。
消耗を考えると、どちらかを俺が担うべきなんだろうが、前衛性能も索敵性能も凜々花の方が遥かに上。俺の存在意義が分からなくなるが、ゴン太たちを連れてきているだけで、役目は果たしている……と思いたいな。
「来ます!」
凜々花の声に、気が引き締まる。
木々の間から、ぬらりと姿を見せたのはウルフ。それもいきなり三体のウルフが、同時に現れた。
「いきなり三体か……一体は俺とタマ、一体は凜々花とたぬ吉、一体はゴン太で行くぞ」
「はい!」
「コン!」
「ポン!」
「ニャン!」
今の凜々花であれば、一人でもウルフを倒せそうな気がするが、実戦はほぼ初みたいなものだから、念には念を込めてたぬ吉と行かせる。そして問題はゴン太だが、“狐火”や“陽炎”があれば倒せるはずだ。
だから俺が気にすべきことは、目の前のウルフを怪我無く、疲労少なく倒すことだけだ。
「タマ、音の斬撃を頼む」
「ナーン!」
タマが三味線をかき鳴らした。
心地の良い音色は、ウルフにとっては死を告げる音色となり得る。しかし俺たちにとっては福音でしかない。
斬撃が地面を駆ける。草葉が切断されることによって、見えないはずの斬撃を視認できるようになってしまったため、ウルフは余裕を持って避けていた。
だがタマの斬撃は、一度では終わらない。音楽が音の連続性でできているように、斬撃もまた連続性を持っている。
「キャン!?」
ウルフは驚いたような素振りを見せ、慌てて走り続ける。
流石のウルフ。何度も続く斬撃を完全に避けているようだ。だが自分が誘導されているとは思っていないようだな。
俺は剣を抜き、何もない場所へと走る。だがそこは何もなかった場所へと変わる。剣を振り上げた俺の前を、無防備な胴体を晒したウルフが通りかかった。
「終わりだな」
剣を振り下ろす。
ウルフはそこまで頑丈ではないため、容易く切り伏せることができた。殆どタマの功績と言っても過言ではないが、指揮を執ったのは俺だし、誇ってもいいだろう。
「やったな、タマ」
「ナーン」
地面に転がるタマのお腹を撫でつつ、凜々花、たぬ吉やゴン太の戦闘を観察する。
まずは凜々花たち。あっちは蹂躙と表現するのが最適だと思うほどに、一方的な戦いをしていた。
今までの彼女から想像できない俊敏さでウルフを翻弄し、後衛のたぬ吉がチクチクと“湧沸”でダメージを与えている。ウルフの身体には無数の傷跡が残り、あと数発でも喰らえば倒れてしまうだろう。そんな一方的な展開を繰り広げていた。
対するゴン太もまた蹂躙と呼ぶに値する戦い方だ。“陽炎”でウルフ認識から己を除外させ、その状態で“狐火”を複数個展開し、ジワジワと追い詰めている。
相手からの攻撃を完封しつつ、直ぐに倒そうとはせずに、確実に勝利するためにダメージを蓄積させていく。まさに圧倒的強者の戦い方だ。
「やっぱりウチではゴン太が一番強いな」
「ナーン」
俺はタマのお腹を撫でつつ、二組の蹂躙模様を見ていた。
そして数分後、俺たちの勝利で蹂躙は終わる。
「だいぶ余裕持って勝利できたな」
「はい、そこまで疲労が溜まった訳でもないですし、一階層に限って言えば、余裕持って戦っています」
「取り敢えず二階層への階段を探しつつ、一階層の探索を頑張っていくか」
「はい!」
俺たちは草葉を掻き分け、広がる森林を進んで行く。
何度かウルフとの戦闘を行いつつ、多少の疲労を抱えた状態で、二階層への階段へと辿り着いた。
「ふぅ、二階層の階段まで来ることができたな」
「どうしますか?」
凜々花の言葉は、二階層へ進むのかどうかの確認だろう。
しかしどうしたものか。ここまでの感覚的に、二階層でも苦戦することはないと思うが、疲労を抱えている状態で初めての場所へと挑むのは、若干の危うさを感じてしまうか……。
「今回は撤退して、明日二階層へと挑もう」
「分かりました」
撤退を決めた俺たちは二階層へと繋がる階段を後にした。
帰路もウルフと接敵したが、楽々突破して、何か起こることはなく、無事入口に帰って来ることができた。
「はぁはぁ、やっぱり疲労が溜まるな」
「……近くに温泉があるみたいですから、寄って帰りますか?」
「そうだな。明日に疲労を残さないためにも、寄って帰るか」
温泉で疲労が堆積した身体をほぐし、温まった身体で帰宅した。
次回からも【ジャスケダンジョン】での話です。
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