第41話 驚異的な回復
終わった。
それは人生に終止符が打たれたという訳ではなく、ゴブリンエンペラーとの戦いが終わったということだ。
全身が焼け焦げていたにも拘わらず、超スピードで再生へと向かっていた肉体が、目の前で崩れ落ちて魔石へと変わっていく。
「はぁはぁ」
ゴブリンエンペラーに終止符を打ったのは、唯一動くことができた凜々花だ。
彼女はボロボロになったゴブリンエンペラーの首へと剣を突き立て、俺たちのことを救った。戦うことすらできなかった出会ったばかりの凜々花はもういない。今の彼女は立派な冒険者と言ってもいいだろう。
「凜々花、ありがと――」
返事を聞くよりも先に、目の前が暗転した。
消えゆく意識の中、頭の中には異常が起こったことが引っ掛かっていた。
◇◇◇◇◇
知っている――とても見知った天井だ。
ここはクソ医者が務める病院であり、常連と言っても過言ではない場所だ。そしていつも目覚めて直ぐに、誰かが入ってくる。
「おっ、目覚めたのか」
ほらな。
タイミングが良すぎて、監視カメラでも付けられているのかと疑ってしまう。
「今回はどんな感じだった?」
「君も慣れてきてるみたいだね。今回はだいぶ酷かったよ。初めて来た時の比にならないほどね」
「やっぱり回復できたのは、ゴン太の力が大きかったのか?」
「確かにゴン太くんの力が回復の要因って所に間違いはない。だけど君自身の変化ってのも完治できた理由だよ」
俺自身の変化だと?
冒険者になってから、急速に成長していることは理解している。しかし重度の怪我を完治させられる成長なんてものはないはずだ。
「君も知っているはずだよ。この世界にダンジョンが生まれ、人々が超常的な力を持つようになった要因を」
「……スキルか」
「そう。調べてないから、詳しくは分からないけれど、君はテイム以外の新しいスキルを手に入れたみたいだよ」
「そうか……」
回復力を上げるスキルか……どんな系統なのかにもよるだろうけど、随分と便利なスキルを手に入れられたな。
「まあ回復したと言っても、ダンジョンに入れるほど治った訳でもないから、最低一週間くらいは入院かな」
「一週間か……」
お金に余裕が出てきたところで入院。
また自転車操業の探索になるわけか。まあ一回の探索で手に入れられるお金も増えて来たし、そこまで悲観的になる必要はないだろう。
「ちなみに君の子たちは、凜々花さんが預かってくれているよ」
「凜々花は大丈夫だったのか?」
念のためだ。
ダンジョンで意識が暗転した時は、特に怪我らしい怪我は負っていなかったはずだが、気絶していた以上、何が起きたのか知る必要がある。
「彼女は目立ったダメージは負っていなかったよ。一応連絡をしておいたから、あとのことは直接聞きなさい」
「ああ、ありがと……う」
ん?
クソ医者が扉を開けてから、一度も退室していない。当然携帯を出しても居ない。それなのに凜々花へ連絡をできた……本当に監視カメラがあるんじゃないのか?
「あっ、この部屋に監視カメラは仕掛けられていないから、安心して再会してもらって良いよ。この部屋で君らがナニをしていようと、私たちは知らないからさ」
「――」
心を読まれた。
いや、そんなはずはないだろう。偶々タイミングが良かっただけのはずだ。
クソ医者に対する疑惑に悶々としながら、凜々花がやってくるのを待つ。そして数十分後、ゴン太たちを連れて病室へとやって来た。
「起きたんですね」
「コン!」
「ポン!」
「ニャン!」
凜々花はゆっくりと、ゴン太たちは勢いよく突っ込んできた。しかし痛みは走らない。成長によって身体が頑丈になったのか、回復によって痛みを感じないところまで治ったのか、どちらにしても痛くならないのはありがたい。
「心配かけたな」
「いえ、ゴン太くんの力があったので、そこまで心配はしていませんでした」
「そ、そうか」
それはそれで……まあ心配かけなかったってだけでいいか。
それにしても凜々花の雰囲気が変わったような気がする。どこがとか詳しいことは分からないが、纏っている雰囲気が違うと思う。
「なあ凜々花」
「どうしました?」
「なんか変わったか?」
「分かりますか! ついに戦闘用のスキルが手に入ったんです!!」
「……異常ボスを倒したもんな」
ダンジョン異常のボスは、討伐するとスキルを手に入れることができる。得られるスキルの強さはランダムで、千差万別。元が五十階層の異常ボスでもクソスキルは出るし、三階層のボスから強スキルが出ることもある。
どんなスキルを手に入れたのかは分からないが、喜ぶってことは強いスキルだったのだろう。
「完治したら、ギルドに行ってスキルを調べに行きましょう」
「そうだな。完治したら行かないとな」
新たに手に入れたスキルを凜々花が知っていて、悟が知らない理由は、スキルを手に入れるタイミングが、ボスを倒して宝箱が出現する瞬間なので、その時気絶していた悟は知ることができなかったです。
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