第37話 嫌悪派たち
眩しい。
電気を付けっぱなしで寝てしまったようだ。そして身体中が痛い。ダンジョン探索での筋肉痛ってところもあるが、一番痛いのは関係のないケツだ。
「凜々花、大丈夫そうか?」
「……は、はい大丈夫です」
既に起きていた凜々花に声を掛けた。
その声は疲労から弱々しいが、特に精神的に参っているわけではなさそうだ。
「それにしても、昨日は凄かったな」
「そうですね……明智さんは凄かったです」
昨日の夜を思い出す。
初めての殺人を経て、そのことをギルドに伝えに行こうと思ったんだが、明智が死体を焼却したことで証拠がなくなったため、ギルドに伝えることはなかった。
そして明智と共に部屋へと帰って来て……まあ凄い一夜を過ごした。あの人は凄い。ただそう形容することしかできないほどに、経験したことのない気持ちよさを経験できた。
「……そろそろ帰ろうか」
「そうですね。ダンジョンを踏破することはできなかったですけど、とてもいい経験を積むことができましたから、遠征としては十分だと思います」
「だいぶお金も稼げたしな」
今回の遠征は黒字にできた。
それもだいぶ余裕を持った黒字だ。武器だったり装備を変えられるだけの黒字にはなっていないが、当分の生活費を賄えるだけのお金にはなった。
まあ関東に戻っても、ダンジョンに行く日常には変わりないから、いつかは武器を変えられるだろう。
「ゴン太、たぬ吉、帰るぞ」
「コン」
「ポン」
部屋の隅で寝ていたゴン太とたぬ吉を抱え、俺たちはホテルを後にした。自宅に帰ったらキャンプをしよう。今度は凜々花とたぬ吉とも一緒に行けたらいいな。
凜々花とたぬ吉も一緒に行くキャンプを想像しながら、関東へと帰る新幹線に乗り込む。【ダンジョン嫌悪派】に襲われたこと、そして殺したこと、この二つが頭にこびりついて離れないが、明智がしてくれた《《マッサージ》》のお陰で、もう気にすることはないだろう。
「向こうへ帰ったら、キャンプに行かないか?」
「えっ――もちろん行きます!」
「よかった。もちろんゴン太もたぬ吉もな」
「コン!」
「ポン!」
きっとこれから先、平和な日常が待っているだろう。
キャンプができる日常が返ってくるはずだ。
――関東某所 ???side
関東のとある場所にある地下室。
そこにステータス持ちたちが集まり、噂話に花を咲かせていた。
「愛知県支部の構成員が死んだらしいぞ」
「そんなの日常茶飯事だろ」
「実は公安の仕業じゃなくて、ただの冒険者にやられたらしい」
「バカな冒険者だなぁ。俺らに喧嘩を売ったら、日本で生きていけないってのによぉ」
ステータス持ちたちが話しているのは、同組織の構成員が一冒険者に殺されたという話であり、殺されたことに対してではなく、殺した冒険者をバカにするような話だった。
「それにしても、今回の招集はどういった目的なんだ?」
「それが一切告知されていないらしい。幹部格の方も知らされてないらしくて、知っているのは【十聖】だけらしい」
「……でかい山ってことか」
【十聖】。
この組織の最高幹部である十人のことを指し、武力においても影響力においてもも圧倒的なものを持つ。
「静粛に」
男が壇上に立っていた。
その男は、声を発するまで、誰の頭にも認識されていなかった。しかし声を発した瞬間、広大な地下室に静寂を齎す。
「計画のリハーサルには、千葉県にある【ジャスケダンジョン】が選ばれた。そこでだ、ギルド未所属の君らには、関東各地で暴動を起こしてもらう」
捨て駒。
構成員たちは、その言葉が頭によぎるが、誰も反論を口にすることはない。壇上に立つのは【十聖】が一人、【呂布】。
後漢時代最強の武将と名高い呂布の名を冠する男は、【十聖】の中でも上位の武力を持つ。そんな男に反論を述べられるのは、彼を知らない者か余程な馬鹿くらいだ。
「では君らが生きて帰ってくることを願っている。“【ダンジョン嫌悪派】は日本のために”」
「「「“【ダンジョン嫌悪派】は日本のために”」」」
“【ダンジョン嫌悪派】は日本のために”という言葉が、地下室一杯に響き渡る。それが彼らの理念であり、動く理由。悪に手を染めてまでも犯罪を行う行動理念だ。少なくとも一般構成員たちは、そう思っている。
――【第2章 湧き上がる茶柱】 完
明智が悟と凜々花に行ったのはマッサージです。
彼女のスキルを併用したマッサージは、一時的な痛みを齎すが、最終的には一切の疲労を残さないです。
変なことを想像した人へ。
悟がケツを痛がったのは、明智が重点的にマッサージを行ったからです。何故重点的に行ったのかは、読者の皆様の想像にお任せします。
これにて第2章完結となります。
前回とは違い、休載は挟みません。
【第3章 和を奏でる三本線】もお楽しみください
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