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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第36話 卒業

 ゴン太の“狐火”が冒険者へと放たれる。

 俺たち以上の経験値を持っている冒険者たちは、迫る火の玉を警戒に避けていた。


「……まあ当たらないよな」


 左手で剣を拾いながら、凜々花たちの下へと後退する。

 右の肩に矢が刺さって、著しく右腕の力が入らないから、左手で剣を持つしかなかった。利き手ではない左手で引き摺りつつ、凜々花たちの下へと辿り着けた。


「凜々花、やるつもりで行かないと、こっちがやられる。もし接近された時は、躊躇いなく剣を振り抜けよ」


「……はい」


 相手は六人。

 それも六人の先輩冒険者たち。凜々花を守りながら戦い抜くのは、不可能だと考えるのが普通だろう。


「たぬ吉、“湧沸(ゆうふつ)”だ!!」


「ポン!!」


 熱湯が射出された。

 特に指示は出していないが、たぬ吉の判断で弓を持った男へと進んで行く。


「なんだこりゃ!!」


 男は見た目以上の軽やかさで逃げる。

 ステータスを持った人間を、見た目のみで判断するのは無理だな。今逃げている男だって、だいぶ脂肪を抱えているにも拘らず、陸上をしている学生程度には速い。


「そのまま狙い続けてくれ!」


「ポン!」


「ゴン太は凜々花に接近する奴の牽制を頼む!」


「コン!」


 俺は慣れない左手で剣を握り、剣先を地面に引き摺りながら走る。

 魔法を使ってくる奴がいれば、容易く迎撃されてしまうだろう。だがあいつらに魔法使いはいない。もし居たとすれば、奇襲を仕掛けてきた時に威力の低い矢は使わないはずだ。


「一人で来やがった」


「追い詰められて狂っちまったのか?」


 男たちは笑っている。

 俺が格下だからか、一人だからか、それとも両方なのか。敵を前にして笑っていられる感性が、俺からすれば理解できないが、その油断は俺たちにとってプラスになる。


「はぁぁ!!!」


 勢い任せに剣を振り抜いた。

 必要なのは遠心力に耐えられるだけの握力。社畜時代では吹っ飛んでいたであろう力が掛かるが、冒険者として成長した握力が、剣を離さなかった。


「おっと」


 しかし男たちは軽く避けた。

 だが分かり切ったことだ。走りながら剣を振り抜こうとしたら、どうやっても予備動作が見られてしまう。ある程度の戦闘経験がある人であれば、軌道を予想して簡単に避けられる。


 だからこれがメイン火力のつもりは更々ない。


「ゴン太!!!」


「コーン!!」


 ゴン太が使ったのは狐火ではなく、誘引効果のある幻の炎を作り出す“陽炎”。それが三つも浮かんでいる。男たちの視線が“陽炎”に集められた。

 しかし衝撃を与えれば、“陽炎”の効果は切れてしまうはずだ。だから俺がしなければならないことは……一撃で仕留めること。本物の人間の首を刎ね、残り続ける頭部に気を取られず、全員を仕留めていく。


「ふぅ……時間は限られるか」


 左手を振り抜いた。

 掌を襲う生々しい感覚、骨を切断する際の抵抗感、噴き出した血液の生暖かさ、その全てに不快感を覚える。そして人を殺したという事実が頭にこびり付いた。


「はぁはぁ」


 呼吸が乱れる。

 過呼吸のような症状に見舞われ、次の攻撃に移れない。身体が震え、柄を軽く握っているのが精一杯だ。


「悟さん!」


 凜々花が駆け寄ってこようとするが、駄目だ。こいつらは幻に目を奪われているだけであって、いつ身体に自由が戻ってもおかしくない。


「――」


 しかし声が出せない。

 酸素を取り込むことすらもままならない以上、声が出せないのは当然か。だが凜々花を危険に晒さないためには、ここで声を出さなければならない。


「――」


「――!!」


 凜々花が隣を通り過ぎた。

 発生した空気の流れが頬を撫でる。震える身体に鞭を打ち、凜々花が走り抜けた方に目をやった。


「――どうして」


 凜々花が真っ赤に染まっていた。

 胸元に突き刺さった剣から、血液が垂れている。


「凜々花が……どうして」


 男の顔から生気が消えていく。

 剣を突き刺した凜々花の表情は、覚悟が決まった人のものだ。


「悟さん一人に、その重さを背負わせるわけにはいかないです」


 そのまま凜々花は剣を引き抜き、リーダー格の男の首をへと剣を振り抜いた。最も頑丈な男も、無防備な首へと剣を振り抜かれれば、あっけなく死ぬようだ。


「……凜々花」


 血を浴び、真っ赤に染まる凜々花の姿からは、何処か美しさを感じ取れた。俺も狂ってしまったのかもしれないな。


「一人は残しておこう」


 俺はたぬ吉の“湧沸”に狙われた男を確認し、そう言葉にした。

 弓を持った男は、湧沸によって頭部を貫かれ、強制的に人生にピリオドが打たれていた。


「俺がやる」


 惨状の中、未だ“陽炎”に見惚れている男の首へと剣を振り抜いた。

 残りの男から情報を得るため、念のため持ってきていたロープで縛りつけようとした。


「“天裁(てんさい)”」


 何処からともなく聞こえて来た聞き覚えのあるソプラノボイス。刹那、男たちの死体と生きている男が燃え上がった。

 その炎は骨すらも焼却し、そこには灰しか残っていなかった。


「――」


 唖然とすることしかできず、目の前で起きた出来事はゴン太が創り出した幻なのでないかと、疑ってしまうほどには混乱していた。


「無事だったか?」


「明智……さん」


 天から舞い降りたのは、純白の翼と神々しい輝きを放つ頭上の輪っかを伴って羽ばたく明智だ。


「……初めてだったのか?」


「……はい、初めてでした」


「そっちの娘もそうか?」


「……はい」


 明智からの問いかけに、改めて実感し、身体を震わせながら返事をする。凜々花も同じのようで、俺以上に身体を震わせながら返事をしていた。


「そうか……そこまで身体を震わせて……では私が慰めてやろう」


 刹那、俺たちの身体が浮遊する。

 俺も凜々花も、ゴン太もたぬ吉も宙へと浮かぶ。


 その後のことは語らない。



関係ありませんが天使は両性具有だと聞きますよね。


関係ありませんが天使は両性具有だと聞きますよね。


関係ありませんが天使は両性具有だと聞きますよね。。


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