第34話 【岡崎城ダンジョン・二階層】
目が覚めた。
朝の支度を終え、ダンジョン探索の準備を済ませた俺たちは【岡崎城ダンジョン】へと来ていた。
「よし、今日は二階層を目指していくぞ」
「はい」
「コン!」
「ポン!」
一階層へと足を踏み入れる。
広がるのは森林。見慣れていながらも、覚えることはできないであろう自然の脅威だ。
「行こう」
森へと足を踏み入れた。
前回の探索では感じなかった草木の匂い。ここの難易度を理解して、ある程度は余裕を持っていられるからこそ感じられる匂いなのだろう。そしてそれは自然由来の物と全く変わらない。
「……ふぅ」
自然の香りは身体を楽にする。
ダンジョンに居るのではなく、キャンプに来ているのだと頭が錯覚し、程よい緊張感のみが身体に残っている。
この【岡崎城ダンジョン】は、俺に合ったダンジョンってことか。
「来ます!」
凜々花の声で身体に緊張が戻る。
しかし身体が震えるわけではなく、魔物を相手取るために身体に力が籠るだけだ。
「よし行くぞ!!」
「コン!」
「ポン!」
俺らが走り出すのに合わせて、侍スケルトンも走って向かってくる。
剣と刀が火花を散らして競り合う。しかしこちらは一人ではない。ゴン太とたぬ吉の援護が、俺一人に手一杯となっている侍スケルトンを襲った。
◇◇◇◇◇
「はぁはぁ、ようやく二階層の階段か」
「かなり侍スケルトンと接敵しましたね」
二階層の階段を探すまで一時間ほど掛かった。
これは前回の探索と同程度の探索時間だったが、魔物との接敵量が遥かに多い。理由は分かっている。階段に近付くにつれて、拒むように侍スケルトンの数が増えていたからだ。
「……ここに居ても魔物は寄ってくるだろうし、二階層に降りるぞ」
「はい」
「コン!」
「ポン!」
階段を降りていく。
進むにつれて自然の香りは消えて行く。だがある一定のところを過ぎると、再び自然の香りが漂ってきた。
「二階層も森林か」
「……夜ですね」
「ああ、難易度は跳ね上がるだろうな。普通の冒険者であればな」
階段を降りた先に広がるのは森林。
しかし一階層では階全体を照らしていた疑似太陽がない。一面真っ暗闇。唯一輝いているものといえば、地面を微かに照らす特殊な苔だけだ。
「俺たちには【気配察知】を持っている凜々花が居るからな」
魔物を認識できない状況であろうと、凜々花の【気配察知】があれば奇襲を受けることはない。相手が隠密性能を持っていた場合はその限りではないが、五階層ダンジョンに出てくるような魔物では持っていないだろう。
「いつも以上に研ぎ澄ませておいてくれ」
「はい!」
真っ暗な森林へと足を踏み入れる。
苔が生えているからといって、踏み込みが甘くなったり、滑りやすくなっていたりするわけではないみたいだ。
一階層を進んだ時よりも慎重に進んで行く。いくら【気配察知】があるとはいえ、視認性が悪いのに変わりはないからな。
「――来ます!! それも二体!!!」
「いきなり二体か」
俺とゴン太、たぬ吉はそれぞれが背中合わせになる。その中に凜々花を置いて。
まだ距離があるのか、侍スケルトンの姿は視認できない。
「ゴン太、“狐火”だ!」
「コーン!!」
真っ赤な火の玉が浮かぶ。
狐火の輝きに照らされた森林。闇に隠れていた侍スケルトンも照らし出された。立っていた場所は、俺とたぬ吉の前方だ。
「たぬ吉、“湧沸”をあっちに撃て!」
「ポン!!」
急須から熱湯が放出される。
たぬ吉の正面に立っている侍スケルトンへと飛んでいく熱湯。宙をうねりながら進む熱湯は、侍スケルトンの迎撃を避けながら、頭部へと着弾した。
それを確認した後、俺も正面の侍スケルトンへと攻撃を仕掛ける。
「――」
駆ける。
急停止と共に、剣を振り抜く。俺の力だけでは出せない斬撃、それは侍スケルトンの膂力では防御し切れない威力だ。
防御のために構えられた刀ごと押し込み、スケルトンの頭蓋骨を粉砕した。
「ふぅ……一階層のよりも若干大きいか?」
拾い上げた魔石は、よく観察しなければ分からないほどに若干だが、大きくなっている。
「……一階層でやるよりも、二階層の方が収入が高くなりそうだな」
「そうですね」
ゴン太とたぬ吉を護衛としながら、凜々花が駆け寄ってくる。
本当に凜々花のお陰だな。会社を辞め(させられ)たのも、冒険者になったのも、稼げるようになったのも、全部凜々花と出会ったからだ。
「……進もうか、凜々花」
「はい!」
その後も夜の森林で、侍スケルトンたちと戦い続け、気付けば三階層へと繋がる階段の前へと辿り着いていた。
「……どうする? あんまり体力を消耗していないし、進んでもいいと思っているんだが」
「私としては、ゴン太くんとたぬ吉くん次第ですね」
「それもそうだな。ゴン太、たぬ吉、まだ戦えるか?」
「コン!!」
「ポン!!」
二人からは元気な肯定の鳴き声が返って来た。
俺たち四人は三階層へと降りる。階段を進み、香るのは変わらず自然の匂い。
階段を降りた先に広がっているのは、疑似太陽が輝いていながら、高い樹木が光を遮り、実質的には夜と変わらない昼間の森林だ。
「また暗いのか」
「……行きましょう」
次回、物語が動きます
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