第28話 次回に向けた作戦会議
ゴン太の尾は一本だったはずだ。
つまり先刻の輝きは、ゴン太が進化した際に生まれた光。魔物界における序列の上昇、下位の同種に対する支持能力を得る……と、とある学者は提唱しているらしい。
「少し大きくなったか?」
「コン!!」
目の前にしてようやく気が付いたが、尾が二本になっただけではなく、体躯も若干だが大きくなっている。
「よし、帰るぞ」
「えっ」
凜々花の前でしゃがみ込み、背中を差し出す。
大人になって、おんぶされるのが恥ずかしいのか? だが足を捻っている以上、おんぶでないと帰還できないだろ。
「恥ずかしいのかもしれないが、こうしないと帰れないだろ」
「は、はい」
凜々花を背中に乗せながら立ち上がる。
何かを背負っている重量感は感じられるが、一人の成人女性を背負っているとは思えないほど軽いな。
俺は凜々花を背負った状態で、ゴン太とたぬ吉と共に宝箱の前に立つ。宝箱の見た目は前回と変わらず、質素な木製の宝箱だ。
「よし、開けるぞ」
「はい」
「コン」
「ポン」
俺が代表して開ける。
刹那、宝箱が輝きを放つ。それはゴン太が進化した際に発した光には遠く及ばないが、瞼を閉じさせるには十分な光量だ。
数秒間目を瞑り続け、光が止んだであろう頃に目を開ける。
「……まあ三階層ダンジョンだし、こんなもんだよな」
「ですね」
「コン」
「ポン」
宝箱の中に入っていたのは、緑色の液体が入った栓のされた試験管。
それはいわゆる【ポーション】であり、飲用するだけで傷が治る魔法の薬だ。しかしダンジョン探索が盛んになると、どんどん上位のポーションが見つかり、今回手に入れた【下級ポーション】の値段は千円にしかならない。
「前回は借金があったから売っちまったが、今回からは持っておくか」
「はい」
【下級ポーション】で凜々花の捻挫が治るのかというと、かなり危ういラインなため、今回は使わずに素直に病院へと連れて行くことにした。
ゴブリンキングの魔石を回収してから、ボス部屋中央にある魔法陣へと乗る。
全員が乗ると、魔法陣へと魔力が流れ始め、眩い輝きを放った。
「まずは病院に行って、その後ギルドに行くぞ」
「はい」
俺らは車に乗り、あのイカレ医者のいる病院へと向かう。
その道中、次回以降のダンジョン探索についての話し合いを行っていた。
「ゴン太が進化したから、【ジャスケダンジョン】の一階層程度であれば、怪我なく進める可能性が出てきたが、凜々花はどうしたい?」
「……私は、やっぱり安全に行きたいです」
「そうだよな……今回のゴブリンキング戦で改めて実感したが、油断すれば直ぐに死ぬ、それがダンジョンなんだよな」
三階層と十階層では難易度が違いすぎるから、五階層とか八階層とかのダンジョンを探すべきなんだろうが、関東圏のダンジョンは総じて大きくて、難易度が高いんだよなぁ。
【富士山ダンジョン】とか【魔境群馬ダンジョン群】とか、初心者が冒険者を始めるには、難易度が高すぎるんだよ。
「どこかに良いダンジョンはないか……」
「あの」
「ちょうどいいダンジョンを知っているのか?」
俺が調べた限り、目ぼしいダンジョンは見つけられなかった。
もしかしてギルド長経由で知ったのか?
「少し離れたところなんですが、愛知県にある【岡崎城ダンジョン】は五階層ダンジョンです」
「岡崎か……」
そのダンジョンは俺も知っている。
だが日帰りで行くには遠すぎて、選択肢の中から除外していた。
「……もう病院に着いたし、ダンジョンのことは後で考えるか」
「……はい」
俺は凜々花に肩を貸し、病院の中へと入る。
受付を済ませたのち、案内された部屋には、いつものイカレ医者がいた。
「今度はどうしました?」
「凜々花が足を捻ったみたいでな」
「なるほど、確認しますね」
そしていつものように、診察時にはイカレが鳴りを潜める。
診察だけを見ていれば、普通にいい医者と言っても過言ではないんだが、世間話時の言動が終わっているから、こいつのことをイカレ医者と呼び続けるつもりだ。
「捻挫みたいですから、湿布を出しておきますね。それにしても高頻度で来ますね」
「……冒険者だからな」
「ダンジョンに行くのを嫌がっていた頃が懐かしいですね」
イカレ部門が始まった。
「貴方たちのお陰で、だいぶ稼がせてもらっていますから、これからも御贔屓に頼みますね」
「それは商売人の言葉であって、医者が言うべきではないだろ」
「医者であろうと、聖人君主でいては生きていけませんから。お金はあるだけ良いんですよ」
「……もう来ないことを祈っているよ」
「では私は、貴方たちがまた来ることを祈っておきましょう」
イカレてやがる。
冒険者は死亡率が高いです。病院での治療の甲斐なく死んでしまうのではなく、病院に間に合わずダンジョン内で死ぬことが多い職業です。
今述べたことに、特に意味はありません。
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