第24話 現状の力
俺たちは【アニメックスダンジョン】を進む。
数分後に接敵したのはゴブリンだ。初めて出会った時は驚異的に感じたゴブリンも、キングを倒した今となっては、弱々しい子供が強がっているようにしか見えない。
「よしゴン太、“狐火”だ」
「コーン!」
俺が“狐火”と言うと、ゴン太は優しく燃える火の玉を浮かべる。
浮かんだ狐火は、ゴブリンの方へと一直線に進んでいく。初めて使った時より速く、そして大きい火の玉がゴブリンの着弾した。
「グギャァ!!」
狐火は、ゴブリンのことを炭へと変えた。そして一瞬にして魔石へと変わる。
「ゴブリン程度なら余裕で倒せるな」
「コン!」
嬉しそうに首を縦に振っている。
ゴン太も成長を実感して、喜びを感じているのか、俺も分かるぞ。
俺も社畜時代は、自分の成長だけが喜びを感じられる対象だった。趣味のキャンプだって、心を癒すためにやっていただけで、そこまで喜びを感じられるものではなかったからな。
「次はたぬ吉が頼むぞ」
「ポン!」
たぬ吉の相手を探すために一階層を歩き回るが、物欲センサーが働いているようで、中々ゴブリンと接敵しない。
本当に物欲センサーが働いているのか、それとも同業者がゴブリンを殺戮しているのか、どちらにしてもこのままでは時間を無駄にしてしまうな。
「……二階層に行くか」
「そうですね」
「コン!」
「ポン!」
全員の了承が取れたから、二階層へと向かうことにした。
しかし二階層へと向かうと決めた十数秒後、俺たちは待ちわびたゴブリンとの接敵を果たす。
やっぱり物欲センサーが働いていたんだな。まあ接敵できたのは、嬉しい誤算だ。
「たぬ吉、“湧沸”だ!」
「ポン!」
たぬ吉が背負っている急須で水がわく。
注ぎ口から生き物のようにうねり出て来た熱湯。それがゴブリンの首を狙って一気に宙を進んで行く。
ゴブリンは必死に走って逃げようとしている。
俺らはそんなゴブリンの様子をただ見ているだけだが、傍から見たらイジメの主犯格みたいな立ち位置になっているんだろうな。
「グギャァ!?」
着弾した。たぬ吉が想定していた首にではなく、腕にだが。
しかし腕だろうと、熱湯が身体を貫いた痛みはゴブリン程度が我慢できるものではない。
ゴブリンは地面に転がりながら、痛みから逃れようとしている。だが一度付けられた傷を再生させる術を持たないゴブリンは、一生その痛みと連れ添わないといけない。
まあこのゴブリンに残された一生なんて一瞬で終わるけどな。
そんな詩的なことを考えつつ、魔石へと変わるゴブリンの様子を見届けた。
「よし次は俺たちの力と、“幸福茶”を飲んだ時のバフを検証していくか」
「わ、私もですか?」
「当たり前だろ。これから探索を続けていくうえで、最低限の自衛は必須だぞ」
「そ、そうですよね」
俺と凜々花だと、二階層の魔物相手に勝利できる可能性は低いだろうから、再び一階層でゴブリンを探す。
運よく一分程度で接敵することができた。
「一階層なのに珍しいな」
「二体ってことは、私たちが一緒に戦うんですか?」
「ああ。見たところ偶々バッティングしたようだし、相手のチームワークはガタガタ、俺たちだけでも勝算は大いにあるだろ」
凜々花はだいぶ弱気だが、今までの戦闘から考えると、一階層のゴブリン程度なら、簡単に倒せるはずだ。
「凜々花、行くぞ」
「……はい」
俺と凜々花は隣り合って走る。
ゴブリンも棍棒を構え、俺たちの攻撃に備える体勢を取っている。
剣を振り下ろしている最中に思ったが、こういったシンプルな攻撃にも技名を付けた方がいいんだろうか。俺に戦闘系のスキルはなく、ただシンプルな膂力に任せた攻撃に過ぎない。
だが技名を付ければ、動きが身体に染み付きやすいんじゃないのか。いや、今考えることではないな。今は目の前の魔物を倒すことだけを考えるのが大切だ。
「凜々花、大丈夫か?」
「な、なんとか!」
俺は何度か剣を振り下ろし、ゴブリン相手に攻勢に出れているが、凜々花の方は防戦一方だ。
もう少しで目の前のゴブリンを倒せそうだから、手助けに行くことはできるんだが、それだと凜々花の成長には繋がらないんだよな……しかしこんなところで怪我をされては困る。
「ふぅ……」
目の前のゴブリンが持っている棍棒を弾き、首筋へと剣を振り抜いた。ゴブリンが魔石へと変わって絶命したことを確認した後、凜々花の下へと身体を向けた。
「なんだ、倒せたのか」
「はぁはぁ……なんとか……」
凜々花は一戦だけで息が上がるのか……まあこれからの訓練次第でどうとでもなるよな。
本人はあまり自覚していませんが、悟はかなり成長しています
ブックマークと★★★★★をお願いします




