第23話 二人の技
「よし、【アニメックスダンジョン】で検証してみよう」
「……はい」
凜々花の元気がなさそうだな。
たった一徹しただけだっていうのに、ここまで元気がなくなるのか……次からは休憩時間を設けるべきだな。今日は来てしまったから、取りあえず試すだけ試そう。
「二人がやっていたみたいに、必殺技を作るか」
「必殺技ですか?」
「ああ。俺たちが見て分かったことと言えば、二人とも技名を付けていたという点だけだろ?」
「確かにそうですね」
必殺技を作ることで、連携を取る際にどんな攻撃を使うのか分かりやすくなるし、攻撃のイメージが付きやすくなる。今までは必殺技なんてカッコつけているだけだと思っていたが、動画を見て考えが変わった。
やっぱり先輩のを目で見るだけでも、分かることは多いな。社畜時代に経験したことも捨てたもんじゃないか。
「俺と凜々花に戦闘系のスキルはないから、主にゴン太とたぬ吉の攻撃に技名を付けることになると思うが、二人は大丈夫か?」
「コン!」
「ポン!」
ゴン太もたぬ吉も首を縦に振って肯定の意を示してくる。
こちらからゴン太たちの言葉は分からないが、これまでの反応的にこっちの言葉の意味は分かっていそうだから、攻撃に技名を付ければ、こっちの指示が通りやすくなると思う。
「じゃあまずはゴン太だな」
「コン!!」
「一先ず、ゴン太がどんな攻撃を使えるか見せて貰ってもいいか?」
「コーン!」
ゴン太は火の玉を浮かべた。
これはいつも使っている攻撃手段だから、簡単で短い技名を付けるのが最適だよな……。
「よし、それは“狐火”と名付けよう!」
「コーン!!」
ゴン太は嬉しそうにしている。
それにしても、まじまじと見て思ったが、初めて“狐火”を使った時よりも大きくなっていないか?
魔物との対戦を経て、成長しているってことか。もしそうであれば、俺の【テイム】スキルも成長する可能性があるかもな。
「よし、他の攻撃はあるか?」
「コーン!!」
始めて見る火の玉だ。
今までの――“狐火”と名付けた火の玉は、優しい温かみのある赤く燃えている火の玉だった。今回発生させたのは一切の優しさも温かみも感じられない、蒼く燃える火の玉だ。
「すごいな。こんな火の玉も作れるのか……」
優しさも温かみも感じられないはずなのに、目の前に浮かぶ蒼炎から目が離せない。なんだろう、手を伸ばしたくなる。
手が蒼炎の火の玉に触れる。
頭ではやってはいけないと理解しているが、身体が言うことを聞かずに腕を伸ばしてしまった。
熱を頭が理解するのを待つが、いくら待てど感じるはずの熱を感じられない。
「えっ?」
ようやく身体が言うこと聞くようになった。
反射的に手を引っ込めて、どのくらい焼かれたのかを確認してみたが、一切焼けているように見えなかった。
「幻影か?」
「コン!!」
そうか。この蒼炎は幻覚の炎なのか。
それも相手の誘引する能力を持った幻覚の炎……中々適した技名が浮かばないな……。
「“陽炎”とか良いんじゃないですか?」
「確かにいいな。ゴン太も“陽炎”でいいか?」
「コン!!」
ゴン太も首を縦に大きく振って、肯定の意を示していた。
俺が決めた“狐火”よりも嬉しそうに見えるが、きっと気のせいだろう。
「他にもあるのか?」
「こん」
ゴン太は首を横に振る。
今は二個しかないが、どれだけ増えるのか分からないし、読書でもして語彙を増やすか。
決して凜々花に負けたからとかではない。絶対にない。
「よし、次はたぬ吉だ」
「ポン!!」
たぬ吉は以前のように背中の急須の中に水を湧かせ、それをお湯にするために沸かす。二つの意味でわいた水を蛇のように操っている。
「うーん、難しいな……“蛇水”とか?」
「“湧沸”とか?」
「ポン!!」
たぬ吉は勢いよく首を縦に振っているが、俺と凜々花の発言が被っていたから、どっちに対して肯定しているのか分からないな。
まあきっと、俺の方だと思うけどな……大丈夫だよな。
「どっちが良いんだ?」
「……ぽん」
たぬ吉は気まずそうに、凜々花の方を指さしていた。
うん、何となく分かっていたよ。
「……じゃあ“湧沸”で決定だな」
「ポン!!」
……たぬ吉が嬉しそうだし、別にいいか。
「他に何かあるか?」
「ポン!!」
再び急須で水がわく。
そして何処から取り出したのか分からないカップを、俺と凜々花に渡し、背中でわいたものを注いできた。
……この匂いはお茶か?
「お茶を注いでくれるのか?」
「ポン!!」
「なるほど……」
内心ビビりつつ、飲まないわけにはいかないため、少しだけ口に含む。その瞬間、俺は目を見開いて凜々花と目を合わせる。
「美味いな」
「はい。とっても美味しいです」
お茶の旨味と程よい苦み。高いお茶はこんな感じなんだろうと想像した時に浮かぶ味だ。
それになんだか身体が軽くなった気もする。
「凜々花――」
「はい、身体が軽くなった気がします」
「バフ効果のあるお茶か……なんて名前が良いんだ?」
「“幸福茶”とかで良いんじゃないですか?」
「それでいいか」
「ポン!!」
適当に決まってしまったが、たぬ吉も満足そうだし、そのまま“幸福茶”でいいか。
「他はあるか?」
「ぽん」
たぬ吉も首を横に振ったことだし、ダンジョン探索を始めるか。
「よし、連携を磨くためにダンジョンを進むぞ」
「はい!」
「コン!」
「ポン!」
ゴン太には悟を回復させた力もありますが、「他の攻撃はあるか?」と聞かれたため、答えませんでした。
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