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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第20話 強味

 勇ましく時間を稼ぐとは言ったものの、ウルフ相手にどうやって時間を稼ぐか……。

 ――そんなことを考える時間もくれないか。


「くっ――!」


 一気に距離を詰められ、剣に噛みつかれてしまった。動物としての膂力もそうだが、金属製の剣が軋むほどの咬合力、その獰猛性が故の凄まじい殺気、その全てが俺に恐怖を与えている。


「はぁはぁ」


 これはウルフのパンティングなのか、俺の呼吸が荒くなっているのか、それすらも分からないほど、恐怖に呑まれていた。


 眼前のウルフは目が血走り、正気だとは思えない。それが俺に残された勝ち筋……いや、時間を稼げる可能性がある筋道だ。


「うぉぉぉぉ!!!」


 余力を残すことなんて考えず、剣を押し込む。

 当然、体格差で上から下へと押し込む形になるため、俺の方が若干押し気味でいた。


 しかし相手が魔物である以上、持久戦となれば敗北するのは必至なため、まだまだ油断はできない。


「ゴン太たちは――」


 均衡を保つ状態に入ってしまったため、外から均衡を崩せる存在であるゴン太たちの方へと視線をやった。


 瞳に映ったのは、三対一という有利な状況でウルフを追い詰めているゴン太たちの姿だ。

 しかし直ぐに勝利できるかというと、そうではない状況だろう。

 つまりもう少しウルフとこの均衡を保たなければならない。汗と緩み始めた握力で剣を握っているこの状況でだ。


「はぁはぁ、今立っているのが死の淵だとすれば、社畜時代は死の海に片足突っ込んでいたのかもな」


 だが社畜時代の地獄を考えると、まだ死を感じる域には来ていない。

 あの時は極めて普通の日常であるかのように、死を感じていた。生と死は隣り合わせで、生きている内は生側に偏っているはずなのだが、あの頃は死側に偏っていた。

 

 だが今はまだ生側に偏っている。極めて死側に近付いているが、それでもまだ生側に変わりない。


 つまり俺は死なないだろう。


「うおぉぉぉぉ!!!」


 死なないと分かったら、気が楽になった。

 なんか力が湧いて来ているような気もする。きっと気のせいなんだろうが、本当に均衡を破って押し込めている。これがプラシーボ効果って奴か。


「うおぉぉぉぉ!!」


「キャンッ!?」


 ウルフが悲鳴を上げた。

 俺の剣がウルフの口を切り裂き、そのまま身体を切断したから断末魔と表現するのが正しいんだろうが、断末魔にしては弱々し過ぎる鳴き声だ。


「はぁはぁ」


 アドレナリンが出ていたから立てていたが、ウルフとの戦闘が終わった瞬間に全身から力が抜けて立てなくなった。


「悟さん!?」


「コン!!」


「ポン!!」


 凜々花たちも勝利したようで、こっちに駆け寄ってくる。

 心配そうな表情をしているから、なんとか無事を伝えてあげたいが、言葉を発することすらも疲労でできない。


「よかったぁ、大丈夫なんですね」


「……」


 ああ疲れただけだ。

 そう伝えることすらもできないなんて、たった一戦でどれだけの疲労を積み重ねたんだ? 歳のせいだってことは分かっているが、考えたくはない。


「休憩したら、一度帰りましょう」


「……」


 未だに言葉は出ないので、首を縦に振って肯定の意を示す。

 それにしてもたった二戦で撤退か。やっぱり三階層ダンジョンと十階層ダンジョンとでは難易度に雲泥の差があるな。


 次からはどうしたものか。難易度の低いダンジョンでコツコツお金と経験、経験値を積み重ねるか、それともここでの死線を抜けて大きなリターンを求めるか……。


 いや、今考えることではないな。今は帰還できるだけの体力を取り戻すことが最優先だ。考えることに割く体力ですら惜しい。


「ゴン太くん?」


「こん」


「……?」


 なぜかゴン太が必要以上に近付いて来た。

 いや、近付いて来たというよりも、顔の上に乗っかって来た。モフモフの心地よい気持ちと顔面に圧し掛かるゴン太の重量の苦痛が同時に襲い掛かってきている。

 若干だが、プラスの気持ちが勝っているから、どかさなくてもいいか。


「この淡い光……」


 眩しい。

 電灯などの人工的な光とも、太陽などのエネルギーの爆発によって生まれる光とも違う、ただ優しい光がゴン太から発せられていた。

 その光が身体を包み込んでくれている。眼前にゴン太が居るため、視認することはできないが、身体で感じるこの温かみが教えてくれる。


「……ありがとな、ゴン太」


「コン!!」


「ポン!!」


「悟さん!!」


 駆け寄って来た二人と既に頭の上に乗っかっているゴン太に揉みくちゃにされる。


 体力を回復させたいんだから楽な状態を保たせてくれ。

 当然、俺の声が届くはずもなく揉みくちゃにされ続けた。


「よし、帰るか」


 きっとゴン太の力なんだろうが、揉みくちゃから解放された俺はとても元気だった。

 そのお陰で、初心者が中級者向けに挑んだ結果、挫折して撤退を余儀なくされた人とは思えぬ元気さを出せた。


「まあ全然進んでいないから、直ぐに帰れるけどな」


「そうですね」


「コン!」


「ポン!」


 まだ二戦しかしていないわけだから、出入口はすぐ傍にある。



悟は少しずつ成長しています。


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