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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第14話 調子に乗る

 俺は、俺たちは調子に乗っていたのだろう。

 二階層のゴブリン相手に、そこまで体力を消耗せずに勝ててしまっていたから、ずんずんとダンジョンの奥を目指して進んでしまった。

 結果、無限にも思えるナイフ持ちゴブリンとの連戦を強いられ、最終的には潰走しなければ死んでしまう状況に陥っている。


 どうして人というのは学ばないのだろうか


 そんな哲学的なことを考えながら、一階層に繋がる階段を目指して走り続けている。

 激怒しているわけでもないのに、太陽が沈むよりも速く走っている。まあこのダンジョンに太陽はないから、速いも遅いもないんだが。そんな心持ちで走っているという意味だ。


「悟さん、足速くなっていません!?」


「ん?」


 確かにそうだ。

 以前魔物から逃げていた時、俺が最後尾を走り続けていたはずだ。なのに今はどうだ? 最後尾どころかゴン太すらも抜かして戦闘を走っている。

 分かっていないだけで、俺は激怒しているのか? それともおっさんになっても成長しているのか?


 成長はあり得ないから、激怒しているんだな。何になのかは、俺でも分からないが。


「階段が見えて来たぞ!!」


「――さん!!」


 後ろから凜々花の声が聞こえて来るが、距離が離れているのか詳しくは聞こえない。ただピンチってわけではなさそうだから、無視して階段へと急ぐ。


「やっと……辿り着いた?」


 何か違和感がある。

 それが何なのか詳しくは分からないが、何故だか違和感を抱いている。歯にあるできかけの虫歯や目の中に入ったごみなど、認識しなければ直ぐには気付けない違和感。


「悟さん、ここは!!」


 凜々花の言葉を聞いて、違和感を完全に認識する。

 ここは一階層へと繋がる階段じゃない。俺たちにとっては地獄にしか感じないであろう場所、【アニメックスダンジョン】の最終層であり、ダンジョンボスが存在する三階層に繋がる階段だ。


「チッ、道を間違えたのか」


 一心不乱に走った弊害だ。


「はぁはぁ、どうしますか」


「コン?」


 前に進めばさらに強力な魔物との接敵、しかし一階層を目指そうにも大量のナイフ持ちゴブリンたちは道を塞いでいる。


「……進もう、三階層へ」


「――ダンジョンボス討伐の転移ですか」


「ああ、どうせ帰れないなら、進んでワンチャンに賭けた方が分があるだろう」


 ダンジョンには最深部、最奥にダンジョンボスがいる。例外はあるが、どのダンジョンにもボスが居るのがルール。そしてボスを倒すとダンジョン入口へと転移できる転移床が生成されるのも、これもまたダンジョンのルールだ。


「確かに【アニメックスダンジョン】のボスは弱い方ですけど、私たちの実力では――」


「そうだ。俺と凜々花の火力では勝ちきれないのは確実だ。だからここから先、ボス部屋に入るまではゴン太を温存していく」


「悟さんがメイン火力を担うということですか」


「ああ、そうでもしないと体力が持たないからな」


「コン!!」


 ゴン太は首を振ってくるが、事実は変えられないからな。

 これまでの戦いを見てきて、一階層分を戦い抜くだけの持久力を持ち合わせていないのは分かっている。最大火力になるゴン太が、ボス戦でバテられても困るため、俺が戦うしかない。


「大丈夫だ。俺も成長しているらしいからな」


 こうでも誤魔化さないと、ゴン太が無理にでも戦いに行く可能性があるから、実感していない成長を言葉にした。


「くーん」


「大丈夫だから」


 心配そうに、弱々しい鳴き声をあげるゴン太を撫でてあげる。

 このモフモフは、俺の心を安らがせてくれる。


「じゃあ行こうか」


「コン!」


「……はい」


 ゴン太の元気な返事と、凜々花の弱々しい返事が対照的だな。

 まあ凜々花がこの場所は死地になる可能性が高いと思うのは仕方ないことか。


「凜々花、先頭は歩かなくていいから、【気配察知】は使い続けてくれ」


「はい」


 【気配察知】がなければ、一階層すらも突破できなかった可能性が高いほどに重要なスキルだ。

 きっと三階層でも通用するはずだが、念のため先頭は歩かせない。


「来ます!」


「分かった」


 三階層へ挑んでから十数分、ようやく初の接敵を迎えた。

 十数メートル先の曲がり角から姿を現した魔物は、見慣れた緑の小さい魔物。


「やっぱりゴブリンか」


 いつもの如くゴブリン。

 しかし手に持った武器は棍棒でも、ナイフでもない。その小さな身体には見合わない大きさの剣だ。


「凜々花とゴン太は下がっておいて」


 完全初見の魔物相手に、自分一人で立ち向かうなんて人生何があるか分からないな。


「うおぉぉぉ!!!」


 キャンプをするためにも、こんなところで死んでたまるか。



今、彼の人生の大半を占めるのがキャンプです。


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