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おっさんテイマー~趣味のキャンプ飯を間違ってダンジョンでやったら魔物に懐かれました〜  作者: Umi
第1章 焔が輝く狐火

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第12話 本格的

 俺はなんとか風呂に入ることなく、イカレ女凜々花の家から生還することができた。

 自宅での睡眠を楽しみ、再び【アニメックスダンジョン】へと来た。


「今日は二階層まで行ってみたいな」


「そうですね」


「コン!」


 【アニメックスダンジョン】は比較的初心者向けのダンジョンで、最奥が三階層の浅いダンジョンだ。俺らみたいな初心者でも、慣れれば踏破できるような簡単なダンジョンだとも、ギルドの職員は言っていた。


 俺らみたいに戦闘スキルを持たずにダンジョンへ挑んで、かなりの苦戦を強いられているというのは、外れ値で考慮していない話だろうな。


「この階層はゴブリンとコボルトしか生息していないらしいから、消耗を考えながら進めば、いつかは二階層へと行けるはずだ」


「はい」


「消耗をできる限り減らすためには、凜々花の【気配察知】が必要不可欠だから、最後まで頼むぞ」


「はい!」


 凜々花の【気配察知】があれば、できるだけ戦闘回数を減らせるはずだ。凜々花の消耗についても、【気配察知】で削られる体力はごく僅かと言っていたから、気にする必要はない。

 

 メインアタッカーとしての仕事はできなくても、そもそもの戦闘を減らせるという力があれば、十分すぎる働きだろう。


「二個先の曲がり角から魔物です」


「分かった。一個手前の曲がり角を曲がろう」


 基本的に一度でも踏破されたことのあるダンジョンには地図が存在しているが、ギルドが法外な値段で売りつけてくるため、借金漬けの俺に購入する余裕などない。

 

 だからこそ魔物との接敵だけを考えて進むことができるから、消耗が最大の課題である俺たちにとっては地図がなくて正解なのかもしれない。罠が出てこないダンジョンでのみ、通じる考えだけどな。


「前方から魔物です!」


「……直線か。一度下がって別の道を探すか」


「――後ろからも魔物です!!」


「……前方は俺が行くから、後方の魔物はゴン太、頼めるか?」


「コン!!」


「よし、ゴブリンでもコボルトでも来い!」


 見えた姿は全身に毛が生えた二足歩行の獣、つまりコボルトだ。

 ちらっと後方を確認して見たら、近付いて来ていたのはゴブリンだったから、ゴン太だけでも勝てるだろう。


 俺はコボルトだけに集中して戦えばいい……よし、俺にトラウマなんてない。


「頑張ろう」


 と自分に言い聞かせながら、剣を握る。

 走り始めたコボルトは、どんどんと加速していき、その勢いのままナイフを振り下ろしてきた。

 咄嗟に剣を前に突き出し、ナイフによる攻撃を弾くことができたが、まだまだコボルトの猛攻は始まったばかりだ。


「くっ」


 剣に比べてナイフは軽い。

 当然コボルトの動きは、俺と比べるとかなり軽快だ。そんな状況で、重たい剣で反撃に移ろうとすれば、手痛い攻撃を受けるのは確実。

 つまり俺にできることは、ゴン太がゴブリンを倒すまでの間、コボルトの猛攻を捌き続けることだ。


「はぁはぁ……」


 魔物にも体力という概念はあるのだろうが、おっさんの俺が勝てるわけない。まだ五分にも満たない時間しか戦っていないんだろうが、俺の呼吸は荒くなり、動きにもキレがなくなってきている。


 最初からキレなんかないから、実際の変化は少ないんだが、それでもこのまま戦い続けるのであれば、限界は近い。


「――」


 足がもつれた。

 背中が地面に近付く感覚だ。

 このまま倒れれば頭を打つ可能性が高く、そのまま死ぬ可能性だってある。頭を打たなかったとしても、コボルトの追撃を防ぐのは不可能で、ナイフで刺されることは確実なはずだ。


 死の淵では走馬灯を見るとよく聞くが、俺は何を見るんだろうか……やっぱりキャンプのことかな? 社畜時代の絶望の30連勤だけは思い出したくないけど……印象強いからな……てかいつ痛みは来るんだ?


 そう思って目を開く。


「えっ?」


 脳は目の前に広がる光景を理解しなかった。

 俺が苦戦していたコボルトの胸に突き刺さる剣、そして後頭部に感じる柔らかな温もり。取り敢えず分かったことと言えば、助かったということだけだ。


「ありがとう、凜々花」


「……悟さんのお陰で、成長できた気がします」


 何故俺のお陰なのか、どういった理由で成長できたのか、全く理解できないんだが、成長できたのなら良かった。

 そんな感想を抱きつつ、俺は一度眠らせてもらう。疲労のせいか、ものすごい睡魔に襲われているからな。


「コン!」


 駆け寄って来てくれるゴン太が、眠る前に見た最後の光景だった。



悟はよく眠りますね

どうしてでしょうか


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