第10話 新たな魔物
俺はゴブリンに勝利して、長時間の休憩を行っていたが、お金を稼ぐためにも止まっている訳にはいかず、再びダンジョンの奥地を目指して歩みを再開した。
「ゴン太、お願い!」
「コーン!」
ゴン太が創り出した火の玉は、俺が苦戦したゴブリンは消し炭に変える。俺の苦労は何だったんだろうかと思ってしまうような光景だが、スキル【テイム】を持っている以上、ゴン太の力も俺の力だと思うことで、自分を納得させる。
「凜々花、魔物の接近はないか?」
「はい、今のところ近付いて来ている魔物は居ません」
「そうか、曲がり角が増え始めているから、慎重に進もう」
凜々花の【気配察知】があるとはいえ、完全に奇襲を防げるとは思えないし、そもそも一度騙されている以上、信頼しきることもできないから、自衛のためにもダンジョンは慎重に進むと決めた。
まあもっと奥地に進まなければ、奇襲を仕掛けてくるような魔物は湧かないらしいから、杞憂で終わると思うけどな。
「次の曲がり角の先から、何か来ます!」
凜々花からの警告に、警戒心が一層強まる。
そして数秒の刻を待ち、曲がり角から姿を現した。
「コボルトか……ゴン太、頼めるか?」
「コン!」
犬のような外見をした二足歩行の魔物、コボルト。
俊敏性、攻撃のバリエーションに関してはゴブリン以上のものを持っているが、膂力だけを見るとゴブリン以下の魔物だ。
ゴブリンとの競り合いに勝てた以上、正面からのぶつかり合いでも勝利できるだろう。しかし初遭遇の魔物であり、その手に持った武器は錆びたナイフで危険度が高めなため、安牌としてゴン太に頼んだ。
「コーン」
ゴン太の鳴き声と共に浮かぶ火の玉は三つ。
それだけで倒せるのかどうかは、初遭遇な相手であるため分からないが、まだ余裕はあるから気にしなくてもいいはずだ。
「なっ!」
ダメージが足りる足りないとかの問題ではなかった。
そもそも俊敏性の高いコボルトに命中せず、岩でできた地面を焦がすことしかできず、コボルトの接近を許してしまう。
「ゴン太、下がれ!!」
火の玉を使用するために前へと出ていたゴン太が標的となるのは、当然のことで、掛け声空しく、既にゴン太へナイフが迫っていた。
「――ッ!」
ナイフが腕に突き刺さる。意識を飛ばされるような攻撃と違い、腕に走る痛みが永遠かと思う時間続く。
ゴン太と俺の間には距離があったため、防御を間に合わせるには剣を捨てるしか手段はなかった。だが後悔はない。
「凜々花!」
攻撃できるのは凜々花しかおらず、腹の底から叫ぶ。
武器を捨て、攻撃を受け止めている俺は勿論、火力を持つゴン太は俺が近すぎて火の玉を撃てない。凜々花だけが勝利へと繋げることができる唯一の人間だ。
「――」
やっぱり動けないか。
これまでも戦闘に参加していなかったことから、何となく分かってはいたが、こういう命の危機に瀕した時くらいは動いてほしいものだ。
だができないことを強く求められたとしても、できないことは俺が一番分かっている。取れる手段の中から、一番成果の出るルートを選ばなければ。
痛みから思考も纏まらなくなってきている。早めに抜け出さないと、敗北ルートに入り込んでしまう。
「グギャァァ!!」
「――ッ!!」
コボルトはナイフを押し込んできた。
あまりの痛みに目の前がチカチカする。
だがその痛みは俺にとってメリットを生んだ。痛みから逃れるために反射的に出た行動、コボルトに対する蹴りが成功し、無理矢理距離を取ることができた。
「ゴン太!!」
「コーン!!」
蹴りの衝撃から立ち直れていないコボルトへと、ゴン太の火の玉が直撃した。
コボルトの毛皮を焼き尽くし、身体も黒焦げに変えた火の玉。その一撃によって、コボルトは体力を削り切られたようで、魔石へと変わった。
「はぁはぁ……今日は帰ろう」
「コン!」
「……」
帰路。凜々花は気まずいのか、何も喋ることはなかった。
まあ【気配察知】は使っていたようなので、文句を口にすることはない。
ダンジョンを後にした俺たちは、ナイフに刺された怪我を診てもらうために、あのクソ医者が居る病院を訪れていた。
「また怪我したのか」
「はい、すみません」
自分の判断ミスで怪我を負っているから、特に文句を思うこともできない。
「まあ仕事が来るのはありがたいけどね」
「……」
患者を仕事って言うな、イカレてんのか。
はぁ、治してもらっている以上、口には出さないけど、ここに来るとクソ医者に対する悪感情だけが積もっていく気がする。
はぁ、早くキャンプ行きたい。
まだまだキャンプはいけません
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