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「それでさ、あれからどうなったの?」
今日は息子たちがお疲れ様会をしてくれるというのでちょっといいレストランの個室に集まっている。
「知りたい」「知りたい」「私たちも知りたい」
ということで、ハインツの結婚式にまつわる話をすることになった。
マルクの「ちょっと待った」でハインツたちが退場し、マリアが捕獲された後の事だ。
マリアは騎士団の取調室に連れていかれていた。
当然だがドレスからは着替えさせられてシンプルなワンピース姿でふてくされて座っている。
騎士団と魔法省の数名が部屋に入ってきた。
「あ、団長様~、もうどうしてマリアがここに連れてこられたんですか~?
マリアもう悲しくて辛くて」
そういって下を向いてシクシクと泣き始めた。
「おぉ~、ぶれずに泣きまね始めた~」
集団の後ろからアリシアがひょっこりと顔を出しながらそういって笑った。
「は?何よ!あ、あんたさっきの!!」
「そうです私が魔法省のアリシアさんでっす」
前に出てきたアリシアはエッヘンんと腰に手をあててどや顔をしている。
同僚のマーガレットがフルフルと首を振って呆れている。
「何でここにいんのよ!」
「もちろんお仕事でっす」
「きぃ~」
「ちょっとアリシア、あんまりからかわないの」
「聞かれたから答えただけなんだけど」
「話が進まないでしょ」
「は~い」
「ごほん、さてさてマリアさん、どうしてここにいなきゃいけないのか?についてですね。
あなたには違法魔法薬の使用の疑いがあります。
そのために取り調べと魔法検査を行います」
マーガレットの説明にマリアはぽかんとしている。
「違法・・魔法・・薬?って何?」
「わが国で禁止されている魔法のお薬ってことだよ~」
「わかってるわよ!っていうかマリアそんなもの使ってないわよ!」
「使用の疑い、と言いましたよね。
騎士立会いの下、今からマリアさんの全身に魔法の痕跡があるかどうかの検査を始めます」
「確認」「確認」「確認」
「騎士団長の権限により、この場で被疑者への魔法の使用を許可する」
「ヤダ~団長様~、マリアそんな怖い事できない~」
そういってマリアは団長に飛びつこうとしたが、「ぎゃ、いたっ!!」と言って座り込んだ。
「なに?今の」
「あ~多分静電気ですね~、乾燥ひどいから」
「今日は大雨じゃない!おばさん!あんた今何かしたでしょ!」
「あらひど~い、アリシアここにいただけなのに疑われて悲しい~」
「きぃ~~なんかむかつく~~」
「はいはい、それでは立会人の許可も出ましたので魔法省の皆さん、お願いします」
ぞろぞろとローブを着たアリシアの同僚たちがマリアに向けて手をかざした。
マリアの周囲に光り輝く膜のようなものが取り囲んだ。
「え?え?え?」
その膜の中でマリアの頭の上から黒いシャワーのようなものが降り注いだ。
「あじゃばばばあば」
驚きすぎたマリアが叫んでいる。
「おお、人語も話せなくなってしまった」
「人語って・・・アリシアあんた魔獣じゃないんだから・・・」
黒いシャワーが全身に降りかかると、マリアの頭からところどころに濃い紫が浮かび上がっている。
「おぉ、なんかキモイ牛みたい」
「アリシア!口に出てるって」
「あ、ついうっかり」
「思ったことがすぐ出ちゃうんだから、それにしても黒だったわね」
「紫だけど?」
「違うわ!魔法薬使ってたってことよ」
「あ~そっち」
魔法省の同僚たちも騎士たちは「相変わらず」と笑ってしまっている。
「さて、鑑定しますか」
そこへ伝言鳥が騎士の一人に飛んできた。
「報告です、団長、発見されました」
「うむ、そのまま捜索を続けるように」
「伝令致します」
「マーガレット主任、魔法薬が発見されたと報告があった」
「団長、ありがとうございます。
あ、魔法薬は騎士団の方々はお手を触れないように、一緒についていった魔法省の職員が処置するようにしてください」
「承知した、頼む」
「はっ」
騎士の一人が伝言鳥をとばした。
「違法魔法薬だなんて、どこで・・・」
「ハインツもその影響を受けていたってことか?」
「え?でもそんな・・・」
「ハインツは大丈夫だ、王家からちゃんと魔法無効化のチャームが付いているからな」
「え?それって俺にもついてる?」
「もちろん」
「まさか私たちにも?」
「王家からのチャームは王家が信頼する人物にのみ渡されるんだ」
「「「「「どれ????」」」」」
「内緒」
王子はにやり
「そりゃわかっちゃったらダメじゃん、魔法省でもトップシークレットだよ」
アリシアの補足にどれだろうかと考えるダンたちだったのだ。
当然だが裏切りや犯罪など信頼に足らないと分かった時点で無効化が無効になるという。
「知らないおっさん(※偶然の出来事参照)は無効化中ってか」
「そゆこと、で、続きなんだけどね」
「違法魔法薬はどこで手に入れた?」
「マリアそんなもの知らない!」
「知らないわけないだろう、そんなに反応が出ているというのに」
「知らないって言ったらし~ら~な~ぃいいいいい」
そんな問答が繰り返された。
結論としてマリアは知らないうちに某国のスパイから違法魔法薬を渡されていたことが判明した。
「どうしてわかったの?自白はしてないんでしょ?」
「ああ、秘儀:記憶の開示 をね」
「「「「えぇ!!あの恥ずかしい??」」」」
秘儀:記憶の開示 とは個人の記憶を幼少期に遡って閲覧することである。
複数名の人間に自分の生い立ち、考えていたこと、やってきたことすべてが見られるうえに、
本人にも鏡を見ながら記憶をなぞるという恥ずかしさなのである。
もちろん立ち会う人員は守秘義務があるのだが、閲覧後はどうしても記憶保持者を哀れんだように見てしまうため、
記憶を見られた本人は羞恥のあまりしばらくは布団にくるまって「あ~!!!」と叫ぶという後遺症が見られるという。
それによって判明したのは、某国のスパイが騎士団のかく乱を狙ってマリアに渡している事実だった。
「なぜマリアに?」
「う~ん、なんていうかな、あの子って男好きじゃん」
「かあちゃん!言い方!」
「あ、ごめん、てか母上っ「それ今いいから」」
むう
「え~っと男にちやほやされたい「却下」」
「う~ん、自分が一番かわいいからみんなが自分を好きに違いないっておもいこんでいる?」
「それでいこう」
「いいのか?それって結構変な勘違い女だぞ?」
「まあ母ちゃんにしては合格な言い回しだからいいんだよ」
「ってまあ、みんな可愛いマリアの事が好きだからマリア困っちゃう、とか思っててね・・・・」
数名がプルプルしている。
他数名はテーブルに顔を突っ伏している。
残りはグラスを持つ手がプルプルしている。
「で、ハインツ君よりももっとハイグレードな人をゲットできると思い込んでてね、
それで某国のスパイが違法魔法薬渡して、もっと魅力的になれますよ、
何なら王族だって狙えますよ、ってささやかれたんだって」
「・・・・へ、へぇ」
「で、違法魔法薬を某国のスパイもびっくりするくらいかけまくったらしいわ」
「・・・・・」
「結婚式?てか合同演習の時、あたしの王子様キターーーー、やっぱりあたしって罪な女って思ってたらしい」
全員の腹筋は崩壊した。




