6
ある日、マリアがアポなしで騎士団にやってきた。
「マリア、どうしてもハイ君に会って結婚式の相談がしたくて~」
ハインツの婚約者が来てると呼ばれていくと、マリアがうれしそうに抱き着いてきた。
やんわりとマリアを引きはがし騎士団に来た理由を聞くとそんなことをにこにこと話す。
(勘弁してくれ・・・)
「あのさ、ここは俺の職場で用事もないのに急に来られても困るんだよ」
「え~でもぉ、マリアに会えてうれしいでしょ?」
何とも斜め上の返答が返ってくる。
「今日の夜なんとか時間を作るから今日はこのまま帰ってくれないか?
魔道車を呼ぶから」
そういうとマリアはぷーっとほほを膨らませたが、
「バツとして レストラン・オ・タカーイ を予約してくれなきゃ許さないんだから」
「わかったよ」
「うふ、だったら許してあげる。
マリアの家に迎えの魔道車来るようにしてね」
ハインツは内心はーっとため息をつきながらマリアを出口まで送って行った。
「ハインツ」
声をかけてきたのはマルクだ。
「あ、と、あれ?」
認識阻害をかけていない素のままのマルクだ。
「黙ってあわせて」
そう小声で言われたので、ハインツは訳も分からずマルクに合わせることにした。
「マルク殿下は本日騎士団に打ち合わせがありまして」
後ろの騎士がそう教えてくれた。
「ハイ君だあれ?」
「あ、え~と、あの」
「この方は第2王子マルク殿下だ」
正体をしゃべっていいかどうか迷うハインツだったが、背後の騎士がすかさず紹介してくれた。
「お、王子様?ハイ君王子様と知り合いなの?すごいすごい」
マリアはそういってとてもうれしそうにはしゃぎだした。
「おい、マリア」
「ハインツの彼女?可愛い子だね」
「あ、ありがとうございま「可愛いだなんてそんな~マリア恥ずかしぃ~」」
誉められたのでお礼を言おうとしたハインツにかぶせるようにマリアがほほに手を当てて照れている。
「王子様~、マリアって呼んでください」
そういって何とマルクの手を握ろうとした。
さすがに王族の腕にしがみつくことはできなかったようだ。
「あはは、面白い子だね」
マルクはさらっと握られそうになった手をそっと隠した。
「ハインツちょっといいかな?騎士団の警備計画の事で」
「あ、ああ、でもマリアを出口まで送って行かなきゃいけなくて」
「そうか、あ、悪いけどこの女性を出口まで頼む」
マルクはそういって通りすがりの女性騎士にマリアを託した。
「え?あ?マリアまだマルク様とお話しした「さあさあまあまあ」
女性騎士は残ろうとするマリアの肩をつかんで連れ去って行った。
「マルク様~またお話しましょうね~~~」
「すまん」
「あはは、まあいいさ、今日みたいな感じの事が何回かあると思ってて」
「どういう意味だ?」
「作戦中ってこと」
ハインツの頭の中は?マークが並んだが、もともと素直でまっすぐな脳筋のため、
「皆を信じるよ」
マルクの言葉をすんなりと受け入れた。
それからのマリアはマルクに会いたいがために頻繁に騎士団にやってきた。
「ハイ君に差し入れ」
「ハイ君に似合うと思ってお花摘んできた」
「ハイ君の顔を見たくなった」
「結婚式の相談に来た」
いろんな理由をつけて。
そのたびに何故かマルクが遭遇するというすごい確率。
とはいえ、マルクがさりげなくマリアを追い返してしまうのでほとんど話したりすることはない。
それでもマリアはマルクに会うことを楽しみに騎士団に来るのだった。




