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 その日、ハインツは騎士団の詰所に書類を届けに行っていた。

騎士団は若い女性に人気で、月に数回開放日を設けている。

書類を届け終わって訓練に戻ろうと廊下を歩いていると、いるはずのない一般人がうろうろしているのが見えた。

(関係者以外侵入禁止って出し忘れたのかな?)

そう思いながら侵入者に声をかけた。

「ここは一般人は入れないエリアですよ」

「あ、え?あぁごめんなさ~い、マリアったらどんくさくて迷っちゃったんですぅ~、ごめんなさ~い、」

そういってウルウルと涙をため、ハインツを見上げた。

「はは、たまに間違える人いるから、そんなに謝らなくていいよ。

すぐに見学ゾーンに戻ったら大丈夫だから」

そう言うと、彼女はガシッとハインツの手を握り

「マリアをそこまで連れて行ってくださいぃ、マリア、知らないところに来て怖くて怖くて」

そういってウルウルな目でハインツに頼んできた。

ハインツは快く外に連れて行った。

「ありがとうございます、とっても親切なんですね」

「あはは、これでも騎士の端くれですからね。

困っている人を助けるのは当たり前ですよ」

ハインツがそういうと彼女は

「え~!騎士様だったんですか~全然気が付かなかったですぅ」

そういってものすごく驚いたそうだ。

それがきっかけでお付き合いを始めたというのが馴れ初めだという。


「話の腰を折ってごめんだけど、ハインツ君裸で歩いてたの?」

「「「ぶふぉ!!」」」

私が思わず質問をすると息子たちは飲んでいたものを噴出した。

「やだ、汚いわね」

軽い洗浄魔法できれいにした。

「なんでそう思った」

同じく洗浄魔法を使いながら息子が聞いてきた。

「だって、騎士団の建物内で制服着ていたらわかるじゃない。

それがわからなかったってことは裸だったとしか思えないでしょ?」

「いや、思わないって」

「アリーおばさん、相変わらず~」

「ハインツならやるかも・・・ぷぷぷ」

「おばさん、ハインツの彼女ちょっと変わっててね」

「変わってるってどんな風に?」


「初めましてマリアです」

ある日ハインツが彼女を紹介したいといって連れてきた。

少しおしゃれな個室の居酒屋で、エリーはそういって挨拶をした。

女性はマリア以外にも数名いた。

「あのハインツの彼女」

「可愛い~」

「私たち学園の時からの友人なの、これからよろしくね」

「ハインツ!こんなかわいい子とどこで知り合ったの?」

女性陣はハインツの初彼女に大喜びで話しかけたのだが、

「怖い~」

マリアはそういってハインツの後ろに隠れてしまった。

「あ、ごめんね、ちょっとぐいぐい行きすぎちゃったかな?」

「もう少しテンション落とすね、マリアちゃんごめんねぇ」

女性たちはあわてて謝ったのだが、マリアはそこから女性たちとは離れた席に座りたいと言って、女性たちとは距離のある場所に座ったらしい。

今日は来ていないが、女性たちは私もよく知っている娘たちばかりだ。

もちろん身上調査はばっちり、しかも王子達に対して恋愛感情はまったくもっていない。

むしろ令嬢としてはちょっと変わった趣味を持っていたり、将来の文官や騎士を目指していたりすることから、私とも親しくしている。

魔法省を目指す令嬢たちは私の雷撃魔法が大好きだという。

さっぱりとしたとても良い娘だ。

まあ、初めてのハインツの彼女に興奮してしまったのも想像できる。


そんな感じで始まったハインツと彼女の歓迎会、なんとか息子たちが盛り上げて場は持ち直したらしいのだが、

「わぁ、皆さんすごいですねぇ、え?ダン君は魔法大学院ですか?将来幹部候補ですね!素敵。

あ、ダダン君も騎士ですか?ハイ君と所属が違う?それてどっちが出世しやすいんですか?

え?ケー君もう領地経営されているんですか?それはどこにあるんですか?称号はもう譲られたんですか?」

などと男性陣の近況?にかなり興味津々で根掘り葉掘りきいてまわったらしい。

「マリア、みんな困ってるから」

ハインツがそう注意すると、

「ごめんなさい、ハイ君の友達だからいろいろしりたくなっちゃって・・・。

マリア夢中になると止まらなくてぇごめんね、ハイ君」

「マリア、泣かないで。大丈夫だから」

そういってシクシクと泣き始め、ハインツが慰めるという展開をダンたちは引きながら見ていたという。


「あれ?マルク君は?聞かれなかったの?」

「聞かれたよ、王宮の図書館勤務だって言ったら ふ~ん で終わったよ」

「おぉう、あからさま・・・、まあ職業王子だなんて言えないからねぇ」

「地味ですね、だって」

「認識阻害の時ってどんだけ別人になってるの?」

「今度見せますね」


時間がたち、ハインツが仕事の連絡で席を立つとマリアはすっと席を移動してダンの隣に座った。

「ダン君何のんでるんですかぁ?」

「ビールだけど」

「え~マリア、ビールって苦くてのめない~」

「あ、そうなんだ」

(近い近い近い!)

「あ、ケー君ののんでるのきれいな色~、それなあに」

「わ~さすがダダン君、ハイ君と同じ騎士様~すごい筋肉~」

などと男性陣の隣に移ってはべたべたと腕を触ったり話しかけたりしていたらしい。

(俺の時もそうだったけど

そう思ったダンが

「マリアさん、ちょっと距離が近いね、俺ちょっとそういうの苦手なんだ」

「「「俺たちも」」」

そういうと

「ごめんなさ~い、マリア昔から興味のあることに夢中になっちゃう癖で~。そんなに怒らないで~」

そういってまたシクシク泣き出したらしい。

(なぜにあんたが泣く?)

ちょっと引き気味になった男性陣を見かねて

「マリアちゃん、夢中になっちゃう気持ちわかるわ」

「私も聞きすぎちゃうことあるのよ、わかる~」

「まあダンはちょっとそういうの苦手だから許してあげて」

そう間に入ってくれた。

更に私たちもマリアちゃんと仲良くしたいからと言って席替えをしてくれた。

「マリアちゃん何のんでるの?」

「カシスオレンジ・・・」

「ああ、ここのカクテル美味しいんだよね」

「マリアお酒とか苦手で~」

「え?でもカシスオレンジってお酒じゃない?」

「えぇ~そうなんですかぁ?オレンジっていうからてっきりジュースだと思ってました」

「あはは~、苦手なら後でハインツに飲んでもらう?」

「あ、そうだ、なんか隅っこで座ってるマルさん?でしたっけ?これあげますぅ。

マリアからのプレゼントでっす。

あんまり女の子から燃えることないからうれしいでしょう?」

そういってなんと王子にのみかけを渡そうとしたらしい。

当然マルクは認識阻害の眼鏡をかけており、王子であることは全員がマリアに秘密にしている。

調査では特に問題はないが、結婚後に知らせることになっている。

これはハインツに限らず友人の全員が同じ条件で契約魔法で契約済みだ。

「あ、私、ちょうどグラス空いたからちょうだい!」

そういって騎士を目指す女性がマリアからグラスをひょいっと取り上げると一気にのみほした。

マリアは一瞬明らかに不機嫌そうな顔をしたのだが、ハインツが戻ってくるとにっこりと笑顔に戻った。

「あ、ハイ君~お帰り~マリア寂しかった~」

「ごめんごめん、あ、でももう皆と仲良くなったんだ。

みんないいやつだからな」

そこからはハインツに甘えるマリアとデレデレしたハインツを若干白けた目で見ながら会はなんとか進んでいった。

最後はマリアが「マリア皆と友達になりたいから」という理由で連絡先を交換したという。




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