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【連載版】お払い箱になった三流悪役令嬢はなぜか厄介な激重執着キャラに付きまとわれている  作者: スズイチ
―第二章―

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19/22

三流悪役令嬢の災難 7


 ――残り二日。


 登校すると、周りの生徒たちが遠巻きにこちらを見てヒソヒソしている。


「昨日、ご覧になりまして?」

「クライス様が、アルメリアさんを抱きかかえて女子寮に……」

「倒れたそうですけれど、あのクライス様に抱えられるなんて……」

「羨ましいです!」

「妬ましいです!」

「私も抱きかかえられたいですわ」

「いっそ、目の前で倒れてみましょうか?」


 分かってはいたけど、視線が痛い……。あと、クライス様って目の前で女子生徒が倒れたら助けてくれたりするのかな? まあ私のことも助けてくれたし、見捨てることはないかぁ。


 視線に耐えながら教室に入ると、オルパさんに声を掛けられる。


「おはようございます、アルメリアさん。話題騒然ですわね!」

「……おはようございます」

「昨日お倒れになったんですって? クライス様に女子寮まで運んでもらったのだとか。しかも、お姫さま抱っこで! クライス様にそんなことをさせるだなんて、さすがはアルメリアさんですわ〜!」


 おや。オルパさんの様子がいつもと違う。机に暴言事件から、ずーっと馴れ馴れしくポジティブに接して来ていたのに。今日の彼女は何だか棘がある。これは――。


「もしかして、妬いていらっしゃいます?」

「は、はあ? まさか、そんなことあるわけっ……!」

「妙に親しげな態度だったのは、私といればクライス様とお近付きになれるから……なんて、お考えだったのかしら?」


 私の言葉にオルパさんの顔が赤くなる。

 ありゃあ……図星かぁ……。


「だったら、何だっていうんですの!?」

「……別に。お陰で急に態度を変えてきた理由が分かってスッキリしましたわ。というか、どちらにしろ私はあなたのことを避けまくってましたし意味がなかったのでは? よく、ここまで続けられましたわね」

「う、うるさいですわね!! こっちは、クライス様に本気なんですのよ! 少しでも何かの切っ掛けになるようなことがあるのなら、それに縋り付くのは当然でしょう!? あなたのような、ぽっと出の残念な人には分からないでしょうけどね!!」


 ……なるほど。この人も必死なんだ。必死でクライス様のことが好きなんだ。そっか……。


「分かります」

「……え?」

「分かりますよ、あなたの気持ち。まあ、机の暴言は最低ですが。……あなたの真っ直ぐさは嫌いじゃありません」

「……アルメリアさん」

「さあ、もう授業が始まるので静かにしてください」

「……っ、分かってますわよ!」


 ――何となく、晴れやかな気持ちで今日の授業を終えることが出来た。


 ◇


 放課後、クライス様を探して中庭の辺りをうろうろしていると、後ろから名前を呼ばれて振り返る。


「アルメリア様」

「――オリバーくん?」

「昨日のことですが……」

「ああ。あれでしたら、もう……」

「もしかして、俺のことが好きなんですか?」

「は?」


 いや、まあ確かに告白しようとしてたけど……余計な勘違いさせてしまったなぁ。やっぱりこの作戦は失敗して良かったのだと胸を撫で下ろす。


「すみません。あれは……」

「だとしても迷惑です」

「ん?」

「俺にはセレステ嬢という心に決めた人がいますし、アルメリア様となんて考えられません」

「あ、あの、オリバーくん……」

「確かに、あなたは顔とスタイルは群を抜いているかもしれませんが、それだけではないですか」

「……あのー……」

「セレステ嬢に勝るところなんて、その無駄に大きな胸くらいなのでは?」


 は? 今、最低最悪なセクハラ被害を受けなかった?


「とにかく、あなたとなんて無理ですから。それだけです」


 言うだけ言って帰ろうとするオリバーくん。

 いや、なに? さすがに失礼すぎるでしょ? アレンくんとオリバーくんの二人とは、一年以上も一緒に三流悪役をやっていたという仲間意識があったせいで、どうにも強く出れなかったけど頭きた。どうせ、あと二日で死ぬかもしれないんだ。私も言いたいこと言っておこう。


「お待ちなさい」

「……まだ何か?」

「あなたに告白? 馬鹿げたことを言うのも大概になさい。私が言おうとしていたのは『私、あなたのことを、ずっと感じが悪いと思っていました』ですわ!」

「はあ?」

「正確には、あなたとアレンくんです!」


 私は、オリバーくんを指差しながら続ける。


「あなた方が、セレステさんのところに行ったのは仕方ありません。彼女は魅力的ですし、二人が惹かれていたことも知っています。だからといって、ことあるごとに人のことを残念だとか買って貰ったワンピースを似合わないだとか失礼なことをおっしゃるのは、どうなのかしら?」

「そ、それは……事実ですし……」

「事実だからと言って、口にしても良いのですか? もういい年なのですから、言っていいことと悪いことの判別くらいは付くでしょう?」

「……っ……」


 私は黙り込むオリバーくんを見て、小さく息を吐く。 

 

「私だって、あなた方に思うところはあります。三馬鹿をやっていた頃、対決内容を毎回考えていたのは私ですし、アドバイスを求めてもお二人は忙しいからとすぐに何処かへと行ってしまって……。それに、当時から陰で私のことを顔とスタイルだけのガッカリ美女と言っていたことも全部知っていましてよ!」

「……っ、そ、それは……」


 気不味きまずそうに、視線を彷徨さまよわせるオリバーくん。


「セレステさんは優しい子です。可愛いくて穏やかな素敵なお嬢さんです。そんな子が、悪態をつき陰口を言うような人を選ぶと思いますか?」

「……あっ……」

「彼女のことがお好きなら、少しはご自分たちの態度を改めなさい!」

「ぐっ……」


 彼が言葉に詰まるのを見て、肩の力を抜いて僅かに視線を下げる。


「私からは、以上です。――では、失礼しま……」

「……アルメリアさん」

「……え?」


 せ、セレステちゃん!? 何でこんな所に!?


「アルメリアさん、私のことそんな風に見てくれていたんですね。てっきり、嫌われているのだとばかり……。ありがとうございます」

「べっ、別に、そんなんじゃありませんわ!」


 いつから聞いてたの、この子!?

 

「私、あなたのことを誤解していたかもしれません。――よろしければ、今度ご一緒に新しく出来たカフェに行きませんか? 私、アルメリアさんとちゃんとお話してみたいです」


 一緒にカフェ!? 女の子と二人でお出掛けなんて初めてかも……。


「ま、まあ、どうしてもと言うのでしたら……」

「わぁ。ありがとうございます!」

「……あの、セレステ嬢。僕たちも一緒に……」


 セレステちゃんは、会話に入って来たオリバーくんにムッとした表情を見せる。


「ダメです。女の子だけでのお茶会なので、私とアルメリアさんの二人で行きます。あと、女性の身体のことを言及するのは最低なことですよ。ちゃんと、覚えておいてください。ねぇ、アルメリアさん」

「……え、ええ。そうですわね」


 あのセクハラ発言も聞いてたんだ……。

 

「カフェ、いつにしますか? また一緒に予定を立てましょう? 楽しみにしていますね」


 そう言って去って行くセレステちゃん。そんな彼女をオリバーくんが追いかけて行く。


「……セレステちゃんと、お茶会かぁ」


 死んじゃったら、カフェに行けないよね……。 

 そんなことを考えながら、私はクライス様を探すために走り出すのだった。


 


 

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