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【連載版】お払い箱になった三流悪役令嬢はなぜか厄介な激重執着キャラに付きまとわれている  作者: スズイチ
―第二章―

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三流悪役令嬢の災難 6



「……は?」

「昨日、お見かけしました。クライス様が、セレステさんとバラ園で楽しそうにお話していたところを……」


 私の言葉に、クライス様が目を丸くする。


「……ねぇ……それって、嫉妬?」


 予想外のことを言われて、慌てて声を張り上げる。

 

「は、はあ!? し、嫉妬なわけ……っ! べ、別にクライス様とセレステちゃんが仲良くしていても、私には何の関係もございませんし!? お好きなだけ、イチャイチャしていればいいではありませんか! 私は気にしませんし、悲しくなったり傷付いたりもしませんわ!」


 思わず早口で、まくし立ててしまう。しかも、何か余計なことを言ってしまった気が……。


「……あ、違っ! ほ、ほんとうに私は平気なんですから! お二人がどうなろうと、ぼっちには慣れてますし余裕ですので……」

 

「……ごめん、ちょっと待って」


 その言葉に口を閉じると、クライス様の様子を窺う。すると、顔が真っ赤に染まっていた。


 ――なんで?


「ごめん。ちょっと、ほんと……あんまり見ないで……」

「……あ、あの……私、何か余計なことを言ってしまいましたか……?」

「……そうじゃなくて……君が、あまりにも可愛いこと言うから……嬉しくて……」


 顔を真っ赤にして、少し慌てた様子のクライス様に脳内が爆発する。


 はあ? なにそれ、ウソでしょ……? こんな厄介執着キャラがこんなことで……? ゲームでは、こんなところ見せなかったよね? こんな照れ方するキャラなの? 可愛すぎるでしょうがっ……!!


「……っ……」

「……っ」


 しばらく無言が続いたあと、クライス様が息を吐きながら私を離してくれる。


「……ごめん」

「い、いえ……」

「それと、セレステ嬢とは偶然あの場所で会っただけで何もないよ」

「そ、そうだったのですね……」

「安心した?」


 ぐっと言葉に詰まると、頬が熱くなるのを感じる。


「べ、別に……嫉妬してたわけでは……」


 私がごにょごにょ言っていると、また指を絡められる。


「そっか。……俺は嫉妬したよ?」


 そう言って美しく微笑むクライス様。


「なっ、なにを言って……」


 離れた距離がぐっと近付くと、私の目を真っ直ぐ見ながら彼がもう一度言う。


「あいつに、嫉妬した」

「……ぁ、う、ぐっ……」


 ――ダメだ、もう無理。毒針に刺される前に死ぬ。

 そう思った次の瞬間、意識が途切れた。


 ◇


 ばちん、と目を開けると見知った天井が目に入る。


「……あ、れ? 私、どうして……?」


 いつ寮に戻って来たっけ? そんなことを考えながら起き上がる。


「確かクライス様と話してて……」

『あんた、ぶっ倒れたんだよ』

「精霊くん!? わ、私、倒れたのですか!?」 

『そ。きれーにぶっ倒れてたよ。あの男も、さすがに驚いててウケたわ』


 あははと楽しそうに笑う精霊。

 昨夜は一睡もしておらず、クライス様とのやり取りで限界が来てしまったせいだろうか……まさか、倒れるなんてと額を押さえる。


「そ、それで、私はどうやってこの部屋まで……」

『あん? あの男が、あんたを抱えてここまで持って来てたよ』

「く、クライス様が……」


 あの目立つ方が、私を抱えて女子寮に……いろんな意味で頭を抱えてしまう。


『あんたさぁ〜あのヤバい男のこと好きなの?』

「はっ、はあ!? な、なにを、そんな……そんな……に……態度に出ていたでしょうか……?」

『まあ、普通は気付くだろうな』

「そ、そうですが……ど、どうしましょう……ご本人にバレていたら……」


 私の言葉に、精霊が眉を顰める。


『ああん? いいじゃん、別に。つーか、あいつが好きならさっさと告ったら? そんで結ばれたらワンチャン呪い解けんじゃね?』

「……それは、ありえません」

『はあ? なんで?』

「……それは……」


 彼が攻略キャラだから、なんてことを言えるわけもなく私は口を閉じてしまう。


『まあ別に何でもいいけど。でもまあ早くしないと、このまま死んじゃうんじゃねーの? もう三日も残ってねーだろ』

「……そう、ですね……」


 そうだ。早くしないと、もう時間がない。

 考えていた手当たり次第に告白作戦は失敗してしまったし……とはいえ、仮にこの作戦が上手く行ったとして生き延びた後のことを考えると、失敗して良かったのかもしれないが……。


『まあ、あんたが死のうが生きようがオレには関係ないけど。じゃあ、もう寝るわ』

「……あ、はい……お休みなさい、精霊く……そういえば、あなたのお名前は?」

「はあ? そんな上等なもんないよ」

「それは不便ですわね。何か良い名前はないかしら……」


 精霊をまじまじと見て思いつく。


「……綺麗なレモン色の髪をしていらっしゃいますし、サルファーというのはどうでしょう?」


 私の言葉に、精霊が恥ずかしそうに大きな声を出す。

 

「ちょっ、き、気軽に名前なんて寄越すなよ! ま、まあ、使ってやらなくもないけど?」

「良かった! では、あなたのことを今日からサルファーくんとお呼びしますわね」

「すっ、好きにすればいいだろ! じゃあ、今度こそオレは寝るからな!」

「ええ。お休みなさい」


 指輪の中に入って行くサルファーくんに小さく笑みを零すと、明日のことを考える。


「……明日で残り二日……間に合うのかなぁ……?」


 ややこしい呪いに溜め息を吐く。


「誰が何のために、こんな指輪を……いや、元々は善性の強い指輪だったっけ? 人の悪意を吸って今のような状態になっちゃったんだよね……あなたも苦労したのね」


 私は指輪をゆっくりとなぞる。


「とはいえ、迷惑なことには変わりないけど。……明日こそ、どうにかしないと……でも、今日はちゃんと寝ておかないとだよね……」


 またクライス様に、迷惑をかけるわけにはいかない。

 明日、お礼を伝えて……それから……。

 考えているうちに、私は深い眠りへと落ちていったのだった。

 


 

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