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【連載版】お払い箱になった三流悪役令嬢はなぜか厄介な激重執着キャラに付きまとわれている  作者: スズイチ
―第二章―

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三流悪役令嬢の災難 3



『何すんだよ!! 殺す気か!? この、バカ! アホ! クズッ!!』


 怒り狂う精霊に、リュウさんはにこりと微笑みかける。

 

「随分と口の悪い精霊だね〜」

『あ? 誰だよ、あんた? 寝てたのに、物騒なもんで起こしやがって! 同じ目に遭わせてやろうか!?』

「あはは! 遠慮しておくよ」

『まったく、何なんだよ……クソが……』


 ぶつぶつ言いながら指輪の中に戻ろうとする精霊に、リュウさんがふっと息を吹きかけると、小さな声で何かを唱える。


「――……――……っ」

『!?』


 慌てた様子の精霊を、リュウさんが捕らえた。 


「はい。捕まえた」

『――放せ! ふざんけんな!!』

「え!? ど、どうやって……」


 私が掴まえようとした時は、すり抜けられてしまったのに。

 

「一時的に、実体化させたんだよ。ほら早くこの呪いの指輪のこと、洗いざらい吐いちゃいな〜」

『はあ? 誰が吐くかよ!』

「痛い目に遭いたいの?」


 先ほどの針をチラつかせるリュウさんに、精霊は、ぎゅっと唇を噛む。

 

『……別に。何も知らないよ』


 リュウさんの持っていた針をクライス様がすっと取り上げると、精霊の眼前に突き出す。


「いいから、さっさと吐きなよ。死にたいの?」

『怖……っ! え、なに、こいつ! 怖い、怖いっ! 絶対本気じゃん!! 分かったから、知ってることは全部話すから!』

「最初から、そう言えばいいのに。――ねぇ、アルメリア?」

「そ、そうですわね……」


 針を下げられて、ほっとする精霊。


『でも、本当にオレにも何も分からないんだよ。オレ自身、この指輪に閉じ込められちゃってるだけだし』

「閉じ込められてる?」


 私の問いに精霊は頷く。

 確かに、この前もそうだったけど精霊の足元は指輪の中に入ったままであった。


『そう。たまたま森でこの指輪を見付けて、金になりそうだし売っ払おうと思って手に取ったら、そのまま吸い込まれちゃったんだ。もう何十年も前の話だよ』


 精霊は話を続ける。


『その時に、この指輪の記憶が流れて来て……元々は善性の強い指輪だったっぽいんだけど、人の悪意をいっぱい吸い込んじゃったせいで、呪いの指輪になったらしい』

「……そう、なの」

『条件も最初はもっと違ってたんだ、あんたに話した……んっぐ……んんんー! んむむっ!』

「ちょっ、どうなさいましたの!?」

『――ぷはっ!! は……? な、なに……?』


 その様子に、つい先日の自分を思い出す。


「え……まさか、あなたも喋れないんですの?」

『はあ!?』

「で、ですが、私には、運……んぐぐっ……んんー……! ぷはっ!」


 私と精霊は肩で息をする。


「な、なぜ、あなたまで……」

「――恐らくだけど、指輪を嵌めた人間には話すことができるのかもね」

「そ、そうなのですか……?」


 なにそれ? 私には、条件をクリアしなければならないから話せたってこと? でも、それだと精霊がいなかった場合はどうなっていたわけ……? 指輪が直接教えてくれていたの? さっき、精霊が指輪の記憶が流れきたって言ってたけど、そんな感じで見えたり教えてくれたりしたのだろうか。私には、何も見えなかったけど……。

 

「――じゃあ、それはいいよ。その条件以外にどうにかできる方法はないわけ?」


 クライス様が、精霊に冷たい目を向ける。


『多分、無理だと思う……あんたらと同じように、どうにかしようってまじない師や解呪師……他にも、民俗学者や呪具に詳しい人なんかが指輪のこと調べてたけど、何も分かんないまま全員死んで行ったから……』

「……ではやはり、あの条件をクリアしないと、死んでしまうのですね」

「けど何で、そんなヤバくて希少価値の高い指輪を、誰も破壊……もしくは保管しようとしなかったの? おかしくない〜?」

『こいつは、一定の場所にはいないんだ。それに指輪を嵌めたヤツが死んだら、毎回どっか別の遠い場所に飛んで行く』

「……ふぅん。じゃあ条件をクリアできた場合だと、どうなるの?」

『――さあ? それは、オレも見たことないから分かんないや』


 み、見たことないんだ……。


「じゃあ結局、アルメリアが自分で何とかしなきゃダメなワケ?」

『まあ……そうだね。コイツが何とかしなきゃだね』


 全員が、黙り込む。


「はあ……」

「……うーん。これだと、ボクにはお手上げだねぇ……せっかく呼んでくれたのに、ゴメンね?」


 クライス様が大きな溜め息を吐き、リュウさんには謝られてしまう。


「い、いえ、とんでもありません。リュウさんのお陰で分かったことも、たくさんあります。ありがとうございます」

「アルメリアちゃん、優しい〜! 好きになってもいい? 結婚する?」

「……い、いえ。あの……」


 軽いノリに困惑していると、クライス様が先ほど奪った針をリュウさんの首元に突きつける。


「冗談は、そのくらいにしておいていてくれる? アルメリアが困ってるでしょ?」

「怖っ! いや、ほんと怖いから……クライスさぁ、アルメリアちゃんが関わるとキャラ変わるのなに?」


 クライス様は針を下げると、私の方に振り向く。 


「アルメリア、その条件ってそんなに難しいの?」

「え? ……ええ。まあ、そうですわね」

「俺に、何か出来ることはある?」

「ど、どうでしょうか……」


 運命の相手を探すなんてこと、さすがのクライス様でも難しいでしょうし……しかも、私の運命の相手なんて、どうやって探せばいいのか……。


「君の負担になるようなもの?」

「負担といえば、まあ……負担ではありますが……」


 〝運命の相手を見付けて結ばれる〟なんて、負担以外の何でもない。

 

「君の身体がどうにかなってしまうとか、精神的に負荷がかかってしまうとか……」

「……どちらかと言えば、後者でしょうか……」

「……精神的か……」


 クライス様が顎に手を当てて、難しい表情になる。


「……一週間以内だったっけ? もう残り五日くらいだよね……俺の方でも何か出来ることを探してみるよ。だから、諦めないで」


 真っ直ぐに見つめられながら言われて、思わず頬が赤くなる。


「と、当然ですわ! 最後の瞬間まで、このアルメリア・スピネルは諦めるなんてことはいたしません! おーほほほ!」


 私が高笑いすると、クライス様が微笑む。


「うん。信じてる」


 タイムリットは、あと五日……。

 不安でいっぱいだが、それを見せないように私は笑うのだった。


 

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