番外編「リオの癖」
読んでくださりありがとうございます。
リオの設定として考えていた話です。
本編の雰囲気に合わず、ボツにしようと思っていましたが、せっかくなので小話として出すことにしました。
「……ねぇ、いつも思っていたのだけど、それはなに?」
私の問いかけに不思議そうに首を傾げるリオ。
「なにがだ?」
「……なにがって、私が怒ったり悲しんだりする度に、額に口付けるじゃない。」
リオは、私が悲しいことがあって落ち込んだり、からかわれてむくれたりすると、頭を撫でながら額にキスをするのだ。
夫婦となり、リオとの甘い触れ合いもあるが、それとはまた違った擽ったさがある。
少し口を尖らせて言うと、「ああ」と納得するように呟く。
「昔、母親がそうしてくれたんだ。何かあると、おまじないだと言って。……癖なのかしれないな。」
リオの母親は既に亡くなっているそうで、結婚の挨拶の代わりにお墓参りに行ったことを思い出す。
懐かしいとリオは笑う。
「……素敵ね。」
リオもリオの母親も。
すごく温かい幸せな家族に思えた。
素直なリオは、可愛らしい。
幼い頃に母親にしてもらったことを他人に返す優しさも、口下手で素直な表現しかできない不器用さも。男性らしい見た目からは想像もつかない、そういった純粋なところが彼のいいところだ。
そんないつものリオを思い出し、クスクスと笑う。
すると顔を上げ、私をじっと見たリオは緩く微笑んだ。
「ミラは、素直になれないところが可愛い。意地っ張りで照れ屋で、いつまでも慣れない様子がいい。」
そう言いながら、リオはゆっくりと私へ近づいてくる。私の考えていることなど、分かっているかのような発言にビクリと肩が揺れ固まる。
「最初は狼のような気高さがあると思った。けど、こうやって俺の言葉に固まるところも、照れ隠しに睨むところも子猫みたいだ。」
私のすぐそばに立ったリオは、睨んでいる私を見下ろしクスクスと笑う。話しながら私の髪を梳くように撫でる彼に、行動を当てられ悔しくなる。
「……なんで分かるのよ。」
小さく呟いた声に、フッと挑発するような笑みが返ってくる。
「ミラは分かりやすい。」
そう言われ、リオの前では気が緩んでいるのかと、思わぬ気付きに口を噤んだ。
そんな私を見たリオは、静かに額に口付けた。
「それに、俺がミラをよく見ているからだ。」
「……ふーん、そう。」
穏やかに笑ったリオは、顔を顰めた私の言葉が照れ隠しだと、とっくに気付いている。それでも、私の額にキスを落とすのは彼なりの愛情表現なのだろう。
そんな彼の想いを、私は呆れた表情を作りながら受け入れていた。




