SF現場猫〜宇宙空間における労災事例とその対策②〜
※一部流血、怪我、死亡要素などあり。苦手な方はブラウザバック推奨。
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「こちら偉大なる作曲家(The Graet Author)星系第三惑星軌道ジョンレノンステーション管制塔。所属と要件を。オーバー」
「こちらノルデン運輸所属NTC-21035、データチップと小型郵便物の配達と集荷だ。ステーションへのドッキングと燃料補給、発着ロビーまでのシャトルを要求する」
「了解した。23番のSパッドでシャトルは5分後だ。コースを送信する。エアロックゾーンを抜けてからは誘導員に引き継ぐ。今は混雑しているから周囲の船に気をつけろ」
「こちら23番パッド誘導員。NTC-21035を視認した。相対速度よし、進路そのま「緊急事態発生、緊急事態発生、ドッキング誘導中止、全船直ちに停船せよ。繰り返す。ドッキング誘導中止、全船直ちに停船せよ!」
「管制塔から所属不明機に告ぐ、直ちに停船して所属を示せ。さもなくば攻撃する。繰り返す、直ちに停戦して所属を示っ…なっ!病院船だと!?病院船応答し「管制塔より全船に「病院船応答し「病院船の進路からた「病院船応「退避しろ!「管制塔!管制塔!混信してガっ…「退避!退避ッー!
「まずい病院船がこっt……
ーーーステーション全域に低酸素警告!ステーション全域に低酸素警告!直ちに酸素シェルターに避難しろ。繰り返す、直ちに酸素シェルターに避難しろ!
ーーーー宇宙連邦労働監督局ーーーー
労災事故事例 3521年6月9日追加分
居眠り運転による多重玉突き事故
<状況>
この災害は、業務終了後の被災者が操縦する大型病院船を運転して、本部のあるステーションに入港する途中に発生したものである。
被災者の所属する事業所はステーション間の救急搬送と応急処置をしており、普段本部には大型病院船2隻と中型高速揚陸艇1隻、艦載小型救命艇7隻、即応人員25人が交代勤務していた。
災害発生当日、被災者は近くの星系の小惑星帯鉱山の大規模爆発事故の救助が終わった午後11時頃、ライトクルーズでステーションに向かう途中、オートパイロットを起動しスイングバイ減速を行っている途中に居眠りした。その間無意識にスロットルレバーを押し込んだままステーションと軌道同期し、オートパイロット停止と同時に最大加速した後、複数の宇宙船舶と衝突。そのままステーションに相対速度400m/sで激突した。このとき、病院船を操縦していた被災者は、複数の激突の衝撃で全身複雑骨折と内臓破裂を起こし死亡した。
被災者は前日午後10時から即応待機しており、当日午前6時頃に同僚3人とともに小惑星帯鉱山爆発事故の救急要請に応じて同僚とともに大型病院船に中型揚陸艇2隻で出動した。そのため前日から鉱山作業者全員の安否と搬送が確認される午後11時頃までの約25時間の間、被災者は仮眠などを取っていなかった。
当救助隊では8時間3交代制、被災者は午後10時から午前6時のシフトであり、交代直前の出動となってしまった。さらに、爆発事故の救助は困難を極め、増援と交代して仮眠を取ることもできなかった。
<原因>
この災害の原因には次のようなことが考えられる。
1.操縦者が操縦中に前屈みになり、操縦を誤ったこと。
被災者は無意識にスロットルレバーにもたれかかり、操縦を誤った。
2.オートドッキングを稼働させていなかったこと。
被災者は管制塔と意思疎通が図れておらず、オートドッキングのデータを受信できなかった。
3.コックピットでシートベルトをしていなかったこと。
被災者はシートベルトをしていなかったため、投げ出された衝撃で死亡した
4.操縦者が長時間労働を行っていたこと。
当救助隊では1日3シフト制で交代勤務であるが、爆発事故は大規模であり、交代や仮眠を取れないほど切迫した状態であった。さらに連続した極度の緊張状態であったため、操縦を誤った一因として否定できない。
<対策>
同種災害の防止のためには次のような対策が必要である。
1.操縦者に対して適切な交通安全教育を実施すること
操縦業務に従事する作業者に対し、交通安全教育を実施し、運転中の喫煙やわき見操縦の防止を図る。
2.宇宙船舶に搭乗するものには、シートベルトを着用させること
船舶に搭乗するものには、シートに関わらず必ずシートベルトを着用することを徹底する。
3.作業者の長時間労働を防止すること
作業者の残業時間が長時間とならないように、必要な人員の配置、就業場所の変更、作業の転換、深夜業の回数の減少等の措置を講じる。特に宇宙船舶以外の作業を行い、作業を終了した作業者を操縦業務に就かせる場合、宇宙船舶操縦以外の作業を軽減するように配慮する。
業種 保険・衛生業
事業場規模 16〜29人
機械設備・有害物質の種類(起因物) 宇宙船舶
災害の種類(事故の型) 交通事故 (ステーション)
発生要因(物) 交通の危険
発生要因(人) 無意識行動
発生要因(管理) その他
被害者数 死亡者:1名
「ったく、修理費は弁償と今回の配達分でなんとか払えそうだが修理ドックが埋まってて3か月後だとぉ?はぁ……。回航の手間は掛かるがいつものおやっさんのとこに頼むか……。」
航空管制って難しいですね