1話 「出会い」
俺の名前は高井修。35歳。
仕事帰りの途中、いつも通り俺は日課の幼女ウォッチングをしていた。
ん?それは、犯罪行為ではないかって?
ふぅ……俺をそこらの3流SK(ストーカーの略)と同じにされては困る。
他のSK共と違って俺は、相手に迷惑は絶対にかけないよう心がけている。
それに俺は、「幼女が大好きだから」などという邪な考えでこんな事をしているわけではない。
俺はただ、幼女に手を出すような愚か者がいないかどうかを見張っているだけ。
そう、これは幼女を守る為に仕方なくやっていることなのだ。断じて自分の行いを正当化しているわけではない。断じて違う。
というわけで、今日も張り切って幼女を見守るとしよう。
「(おっ!早速幼女を発見!)」
電柱の裏からバレないように顔を出すと、そこにはぱっと見小学校低学年の白髪美幼女の姿があった。
「(ん?なにやら様子がおかしい)」
その子の様子を見ると、今にも倒れそうなくらいふらふらとした歩き方をしていた。
「(何か事情があるのか……これは、幼女絶対守るマンとして放っては置けないな)」
「そこの君、大丈夫か?」
「…………」
少女は、おぼろげながら顔を上げる。
「……食べ物……飲み物……」
「食べ物と飲み物が欲しいんだな?わかった。すぐ買って来るから、少し待っててくれ」
コンビニに行こうとすると、幼女が俺のズボンの裾を掴んだ。
「……助、けて……」
「……わかった。何かあったのか?」
こうして俺は、何か訳ありな幼女の話を聞いた。
幼女の話をまとめると、つい先日この子は両親を無くし、住むあてが無くずっと一人でさまよっていたという。
「なるほど……まだこんなに小さいのに、色々と大変だっただろう。一人でよく頑張ったな(泣)」
「(とは言えど、この子を俺の家に連れてくと、誘拐犯として普通に逮捕されてしまう。まあ、逮捕されそうなことなんて今まで何度もしてきたのだが)」
「うーん……おじさんと一緒に、警察に相談しに行くか?それとも、とりあえず今日はおじさんの家にでも泊まっていくか?」
「……じゃあおじさん家……」
「マジか!?いや、自分で言うのもあれだが、おじさんは怪しい人かもしれないぞ。それでもいいのか?」
「もう……どうでもいい……全部……どうでもいいから……」
「……そうか……」
よく見ると、少女は死んだ目をしていた。当然だ。こんな小さい子が、そのような不幸な出来事にあえば、こうなるのも無理はない。
「じゃあ、一緒に帰るか」
「………ん……」
――でもなぜだろう。この子とほとんど同じ境遇にあった少女を、何故だか俺は知っている気がした。
「ここが、俺の家だ。一人暮らしの家だからけっこう狭いが、まあそこは許してくれ」
「……お邪魔します……」
「あ、そう言えば名前をまだ聞いてなかったな。俺は高井修。君は?」
「……白羽奈留……」
「奈留か、これからよろしくな」
「ん……」
こうして、35歳のストーカー童貞と白髪美幼女の同居生活が始まった。
数日後
奈留の洋服を買いに、二人で歩いていた時のこと。
「……ん?あれは……」
前方に、見るからにストーカーらしき行為をしている者を発見した。
「ほう……俺の同胞か。どれどれ、どの程度のSKか、この俺が見定めてやろう」
「ふむふむ……何!?あの洗練された美しい立ち方に、キチンと整えられた呼吸、そして今すぐ獲物を舐め回さんとするあの気持ち悪い目!やつは……本物だ」
「……さっきから何の話?」
「気にするな奈留。ただあの男に心から感心していただけだ。しかし妙だな……あの風貌、どこかで聞いたことが……」
「まさか!?貴様はあの伝説のSK、鈴木か!?」
「ん?ほう……俺の名を知っているとは、貴様、只者ではないSKと見た。名を聞こうか」
「俺の名は高井修だ。貴様が本当にあの鈴木なら、一度は聞いたことがあるはずだが?」
「ほう……貴様があの「幼女の守護神」と恐れられた伝説のSK、高井か。これはこれは、この場で出会えたことを光栄に思うぞ」
「俺の方こそ、まさかあの「熟女の覇王」にお目にかかれるとは、喜ばしいかぎりだ」
「……本当に、さっきから何の話をしているの?」
「なあに、ただ俺と同じストーカー仲間に出会っただけだよ」
「ストーカー……じゃあおじさん達は2人とも犯罪者なの?」
「とんでもない!俺たちは、そこら辺の有害SK達とは違う。誇り高きSK、つまり正義の味方だ。そう、俺は幼女だけの正義の味方にな……」
奈留が、俺の服の袖を強く引っ張る。
「犯罪……だめ……」
「わかった。もうやめる」
「(なんということだ……近所でも「歩く公害」とまで恐れられてきたSKであるこの俺が、たったの一言で生き様を変えるとは……幼女、恐るべし!)」
「ん?どうした、鈴木。さっきからわなわなと震えだして」
「き、貴様……さっきから気になっていたが、貴様とそこな少女はどうゆう関係だ……?」
「ん?ああなに、ただこれからデートに行くだけの関係さ。まあ、男としてデートなど当然の娯楽だろう」
「き、きききききき貴様ァァァァァァァ!!!貴様、貴様、貴様、貴様、貴様ァァァァァァ!!!」
「おいおいどーした?鈴木。デートなど、男としてやって当然のことだろ?」
「ああ!そういえば、お前はヒキニートであったな。これは失敬、ヒキニートにはちと縁の無い話だったかな?w」
「貴様、SK憲法第139章、「SKは決してデートするべからず」を忘れたか!?貴様には、SKとしての誇りはないのか!?」
「誇り?生憎そのような物はない身でな。別に、日本全国全ての幼女とデートしても構わんのだろう?」
「くっ……貴様ァァァ」
「まあ、所詮ヒキニートのお前は、社会の負け犬らしくママのおっぱいでも吸ってるんだなw」
「くっ……うっ……」
鈴木は、目から大粒の涙を垂らしながら――
「ママああああああああああ!!!」
大声で叫びながら自宅へと帰っていった。
「ふっ。男としての格付けも完了したところで、それではデートの続きといこうか。My lady」
「私……デートなんかしてないし」
「え……いや、男と女が一緒に出かけるということは、即ちデートだろう」
「デートって言い方だと、恋人同士みたいでヤダ。私まだそこまでおじさんのこと好きじゃないし」
「え……」
スキジャナイ――すきじゃない――好き、じゃない――
俺は、目から大粒の涙を垂らしながら――
「ママああああああああああああ!!!」
大声で叫びながら実家へと走っていった。
「おじさん!?どこいくの!?」
こうして俺と奈留は、朝から夕方になるまで町の中をグルグルと走り回った。
「はあ……おじさんのせいで今日はホントに疲れた……」
「いやーごめんごめん。あ!」
「やばい、今日は病院行かないといけないんだった……」
「病院?」
「ああ、奈留は先に帰ってていいぞ」
「……イヤ。おじさんと一緒に行く」
「そっか。じゃあ一緒に行くか」
「うん」
――あれ?そういや、何で俺は病院に行くんだっけ……まあ、いいか。
「――すみません。面会に来ました、高井です」
「はい、高井様ですね。403号室でお待ちになられてます」
「……ありがとうございます。」
「誰に会うの?」
「誰って、そりゃあ……誰だっけ?」
「……?誰かわからない人に会いにいくの?」
「いや、知ってる人のはずなんだけど……まあ、会ってみればわかるだろ」
そう思って俺は、403号室の扉をゆっくりと開けた。
――そこには、昏睡状態で眠っている少女の姿があった。
「…………」
見覚えのある顔だった。いや、見覚えしかない顔だった。
「…………ぁ…………ぁ…………」
当たり前だ。なんせこの子は、俺の実の娘なのだから。
「あああああああああああああああ!!!」
――全部、思い出した。
毎日、夜9時頃に投稿予定です(出来なかったらごめんなさい)