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生態系最底辺の魔物に転生しましたが、平和な生活目指して全力で生き残ります 〜最弱の両生類、進化を続けて最強の龍神へと至る〜  作者: 青蛙
第一章・産まれ落ちた小さな命

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両生類、日常の魔法を知る

本日2回目の投稿です







 この家に来てからも暫くの月日が流れた。


 身体自体に大きな変化は無いが、多少なりとも魔法は使えるようになってきた。連日の魔法の訓練が実を結んだ結果だ。


 とはいえ、属性云々のあたりは未だによくつかめず、魔力の実体化に成功したというのが実のところだ。


 属性を持つ魔法はあれど、勝手にその属性が付与されてしまっているというのが現状だ。『毒液』という魔法も覚えたが、皮膚から若干しびれる程度の毒液が滲み出るというのは何に使えと言うのか。


 こうなってくると、やはりあの巻き貝さんは凄い魔物だったのだなと思ってしまう。


 水中で有効な電気の力を駆使し、自分の身を守ることに特化させた魔法。あの化け物魚に食い殺されてしまったのが本当に悔やまれる。


 彼は本当に魔法については天才だったというのに。


『お兄ちゃん? 難しい顔をしてるけど、大丈夫?』

『うん? いやあ、魔法は難しいなって』

『魔法ができるだけでもお兄ちゃんはすごいよ。私も練習は始めたけど、上手くいかないもの』

『大丈夫、イリスは筋がいいからきっと出来るようになるよ』


 ここ最近は僕の魔法の練習にあわせてイリスも魔法の練習を始めている。言葉もほぼ完璧に覚えて、不自由ないほどに会話が出来るようになった事で此方としても教えるのが楽で良い。


 たった二人になってしまった家族だけど、こうして二人で魔法の練習をしている時に1番の幸せを感じている。

 共に食事を分け合い、二人並んで魔法の練習をする、家族愛を感じるこのひとときこそが最も大切な時間。



 僕らの飼い主『ランド』についてもどんな少年なのかだいぶわかってきた。


 彼は稲作を主に行っている農家の一人息子であり、頭も良く村での評判は良いようだ。

 魔法の才もなかなかのもののようで、彼の両親が「ちゃんとした師に教われば、その道でも大成するかもしれないな」などと話しているのを聞いた。


 あと、いまのところ8歳ぐらいに見える彼だが、彼はきっといわゆるリア充になるだろう。

 なんせほぼ毎日と言ってもいいほど、近所に住んでいる少女がやってくるのだ。彼と同い年くらいの少女で、名前は『アンリ』。栗色の髪をした可愛らしい少女だ。


 彼は気がついていないようだが、おそらく彼女は彼の事が好きなのだろう。そういうところは女の子のほうが成長が早いと言うが、彼等を見ていると本当にそうなのだろうなと実感する。


 ランドのほうが若干こどもっぽく、アンリのほうは少しませている。とはいえ二人共年の割にはしっかりしているとは思う。


 自分が生きていたような世界との比較にはなるが、色々と自分でやらなければならない事が多かったり、命の危機に晒されやすいこの厳しい環境がそうさせたのだろうか。


 魔物の身となった今生だが、小さい彼等のやりとりを見ていると微笑ましい気持ちになる。


 飼い主はランド少年なのだが、一種の親心のようなものだろうか。ランドもアンリも今の自分よりも強いだろうが、可愛らしい彼等を見ていると守ってあげたくなるような気分になってくる。



『今日の確認をしておこう。イリス、こっち向いて』

『うん』


 水槽の中、置物の影で二匹顔を向き合わせる。

 この家の人々を観察していて知ったことがもう一つある。


 どうやらこの世界の人々は個人の能力や体調の管理まで魔法によって行っているらしい。


 魔法自体はごく基本的なもので、簡単な魔力操作ができれば使用できる。見様見真似でやってみたのだが、これについては自分でも使うことが出来たので便利に使わせてもらっている。


『【個体検査(ルオーラ)】』



イリス 4ヶ月 ♀

 種族:イノリ

 体長:8

 状態:健康

 生命力 34

 魔力 19

 筋力 20

 防御 12

 速度 25

 魔術 22

 技能:身体強化



 このように使った対象の情報が脳に流入し、ゲームのステータス画面でも見るように簡単に確認しにくい部分の健康状態と身体能力の確認を行えるのだ。


 内容のわかりにくいところの意味は『生命力』は命そのもの、『魔力』が体内に有している魔力で、『魔術』は魔力操作の熟練度。他は見た目通りで、『筋力』が高ければ力持ちだし『防御』が高ければ身体は相応に頑丈になる。『体長』については、だいたいセンチ単位での身体の大きさと考えていい。


 正直始めは馴れなかったが、何度も使っているとその便利さに気がついて今では毎日のように使用している。


 使用のために消費する魔力もゼロに等しく、流石にこの世界の人々に日頃から使われているだけのことはある。


 この魔法を使えば難しい病気も早期の発見が容易だろうし、この魔法を作った人はよほど凄い人物だったのだろう。


『お兄ちゃん、どう?』

『いい感じだぞ。魔力が1伸びてる。毎日魔法の練習を欠かしてないお陰だな』

『やった!この調子でどんどん増やすぞ〜』

『ははは、イリスは偉いなあ。魔法が使えると色々便利になるからね、続けて練習しような』

『うん、お兄ちゃん。……他のみんなも、魔法使えるようになってるかな』

『イリス……』


 妹の成長に喜んでいたが、ふと他の家族の事を思い出してしまう。きっと生き残った家族は他にもいるはずだけど、その数は絶望的だ。


 今こうして二匹平和に生きている事に、時折言葉にしようのない罪悪感に苛まれることがある。そして、生き残った家族に会いに行きたいという気持ちも。


『魔法は難しいかもしれないけど、きっと生きてるさ』

『そう、だよね』

『ああ、きっと大丈夫。何かあっても、お兄ちゃんに任せなさい』


 落ち込む妹の頭を優しく撫でる。

 いつか、家族達を迎えに行けたら良いな、なんて。

 どだい無理な話だけど。


『さて、僕も確認しておこうかな。【個体検査(ルオーラ)】』



セシル 4ヶ月 ♂

 種族:ルリイノリ

 体長:12

 状態:健康

 生命力 45

 魔力 26

 筋力 27

 防御 22

 速度 40

 魔術 30

 技能:身体強化、個体検査、風爪、水銃、氷包丁、毒液




 相変わらず、進化した割には能力が低い。


 一応魔力と魔術は少しずつ伸びてはいるようだが、この能力の低さは流石に弱い種族だと言われているだけのことはある。


『まあ、長い目で成長させていくほか無いか』


 今日も充分訓練は行った。

 どうせ、今日はこれ以上起きていてもすることはないだろう。その日は、また二匹寄り添って静かに眠りについた。



 そして、翌朝。

 僕と妹は騒々しい音で目を覚ます。


『なんだ……?』

『様子が変だよ、こわいよ……』


 朝早くだと言うのに、大急ぎで家の戸締まりを始めるランドの父親と母親。


 ランドのご近所さんのアンリまで親に連れられてやってきて、両親たちによって地下室へと入れられていた。


「外はどうなってる! もう来てるのか!」

「もう来てるぜ旦那。入られてる家もある」

「くそっ。なんでこんな事」

「今年の山の実りが悪かったらしい。そのせいで魔物共が飢えてやがるんだ」

「あなた。あなたも地下室に避難しましょう」

「駄目だ。俺が逃げたら誰が家を守るために戦うんだ。派遣されてる衛兵は数が足りてないし、仕方のないことだ。お前はランドを頼む」


 普段は農具ぐらいしか持っているのをみないランドの父親が、槍を持って玄関からまっすぐ続く廊下に立っている。


 木の板できつく閉めた玄関のドアは、外から何度も強く叩かれているのかギシギシと悲鳴を上げていた。


『何かに、襲われてる』


 僕らの平和に、再び危機が訪れる。




【個体検査】

 この世界では魔力という便利なものがあった為、こちら側の世界での技術は発達しなかった。代わりに発達した魔法技術により生み出されたのが、この魔法。対象の身体能力や健康状態の確認を行うことが出来る。目視や症状だけでは発見しにくい疾患の早期発見も容易であり、健康水準はこちら側の世界と遜色ない。

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