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生態系最底辺の魔物に転生しましたが、平和な生活目指して全力で生き残ります 〜最弱の両生類、進化を続けて最強の龍神へと至る〜  作者: 青蛙
最終章・永久の龍神

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ヒトとマモノ

本日は2話投稿




『イヴリースが、マギステアに宣戦布告を……!?』


 今もまだニニィとセレスはマギステアにいるはず。


 もしかしたら、セレスが獣人族である事もあって、既にフランクラッドに移動しているかもしれないが、僕にそれはわからない。


「信じられぬ事かもしれませんが、そうなのです。今はマギステアとの国境付近までイヴリースの軍が来ていると。それに、フランクラッドも最近どうにもきな臭い。ここ数日の間で、いくつかの村が盗賊に襲われて滅んだそうなのです。ですが、まさか盗賊の力だけでそうなるとは考え難く……」


『村、が』


 脳裏によぎるのは、生まれ故郷の村のこと。


 フランクラッドのどこともしれない村だったが、あの村には大切な妹がいるのだ。


 ランド少年とその家族に守られて、今も生きているだろう大切な妹が。


 サッと頭から血の気が引いていく。

 心臓がぎゅっと押し潰されるような気分だった。


『……行かなきゃ』


「どこへ、ですか?」


『フランクラッドです。助けを求めてる家族がいるんです』


「家族が!それは一大事ですな。ですが、デュレシア大陸まで移動するのは龍神様とはいえ長い距離。傷も完全に癒えておらぬようで、少し村で休んでいってくだされ。出立の時は安全な道の案内が出来る者もつけましょう」


『本当ですか。それは助かります。僕からも何か返せるものがあったら良いのですが』


「村の娘達を救ってくれた、それだけで充分ですとも」


 彼がそう言うと、彼の隣で行儀良く控えていた海龍も「フルルル」と小さく(いなな)いた。




ルドラ 172歳 ♀

 種族:死水龍オルドランド

 体長:2150

 状態:健康

 生命力 115240

 魔力 13540

 筋力 5450

 防御 3100

 速度 2648

 魔術 54000

 技能:身体強化、水魔法系統合、毒液




 よく鍛えられた強いドラゴンだ。

 だが、年齢の割には僕よりも少し弱いのだなとも感じる。


 こう見ると、短期間に妙な進化を繰り返した僕の方が異端なのだなと思う。


 力はあるのに、それを使う中身が伴っていない。

 今の僕は歪な状態だ。


 だからと言って、それが悪いとは僕は思わない。

 命が軽いこの世界で、力があるに越したことはないのだ。


「ひとまず今日はお休みなされよ。村の神殿に、ちょうど龍神様が休めそうな場所があるので、案内させましょう」


 彼が手招きをすると、さきほど助けた姉妹がこちらに歩み寄ってきた。


 褐色肌で、エルフのわりに筋肉質な身体。

 イメージしていたエルフといえば、スレンダーな体型だったのだけど、彼女はなんというか、ダイナマイトボディといった感じ。


 見た目だけなら腕っぷしはニニィよりも強そうだ。


「龍神様、今日は助けていただきありがとう存じます。改めて、私はサルマが長子ウィニア・ラ・サルマと申します。そして、こちらが妹のメルゥ・ラ・サルマです」

「める、ぅ、です……」

「はは……見ての通り、恥ずかしがりやで……」


 苦笑いしたウィニアが、彼女の背中に隠れてしまったメルゥの頭を撫でて苦笑いした。


『構いませんよ。僕も、昔はそんな感じでしたし』


「龍神様にもそんな時代があったのですね」


 穏やかに彼女が笑い、つられて僕も軽く笑う。

 心を蝕んでいた孤独感が薄れていくようで、つかえていた胸が少し軽くなったようにも感じた。


「私達が村の神殿まで案内しますので、ついてきてください」

『はい、よろしくおねがいしますね』


 紅樹の民の長老と死水龍オルドランドに見送られ、僕はウィニアさんのあとを追って長老の家を出た。





 村の道を、建物などを壊さないように気をつけながらゆっくりと歩いていく。


 大型のドラゴンである僕が、周りを気にしないでそのまま歩けば結構な被害が出てしまう。


 ゆえに、人の住む場所では、人々に迷惑をかけないように身体の動きには気を付ける必要があった。


『しかし……不思議だな』

「おや、龍神様、どうかなさいましたか?」

『ああ。この村は、みんな魔物と共に暮らしているのだなと思って』

「確かに、外では珍しいと聞きますね」


 道をゆく人々や仕事をしている人々を見ると、そのほとんど全ての人々が魔物と共に居る。


 魔物が荷物運びの手伝いをしていたり、漁師達と共に水揚げ作業をしていたり。人々が魔物と心を通わせているような、そんな感じがした。


「我ら紅樹の民は、『召喚士』の末裔なのです」

『召喚士……?』

「特殊な術により魔物を召喚して、心を通わせ、『パートナー』として使役する者の事です。とは言っても、召喚士としての力を持つのは召喚士の一族のみなのですが」

『今となっては珍しい存在なのか』

「ええ。ずっと昔はデュレシア大陸に多くの召喚士がいたと聞いていますが、いまや央海の島々に流れてきたこの紅樹の民だけが召喚士として残っています」


 そう言うと、彼女もまた自身の胸をトンと叩いて「私も召喚士なんですよ」と言う。彼女がトンと胸を叩いた時に、その豊かな双丘もずっしりとした重さを見た目に伴って揺れて、思わず僕は目を逸らした。


『あ、でも、ウィニアさんのパートナーはまだ見てないですね』

「あー、それなんですが……あの魔物に、やられてしまって」

『………あ、ごめんなさい。無神経に聞いてしまって』

「いえ、構いませんよ。それに、妹の方はちゃんと生き残っていますし」


 ふと、彼女の背中に隠れ続けているメルゥを見る。

 おそるおそるといった様子で顔を覗かせた彼女の肩には、小さなイノリが乗っかっていた。


『イノリ……?なぜ、ここに』


 昔の僕と同じ種族。

 だが、イノリが生息しているのはフランクラッドだけだとニニィが言っていたはず。


「珍しいですよね。メルゥが召喚をしたら出てきたんです」

『ああそうか、召喚だから距離は関係ないのか』

「ええ。それに、イノリは特別なんです。長老がイノリの進化系をパートナーにしていたように、イノリは私達にとってパートナーにする魔物の中でも特別な存在。龍神様への信仰の一つとして、優れた召喚士になる者はイノリをパートナーにしていると言うものがあるのですよ」

『僕らの仲間が、特別な魔物、か』

「そうした慣わしを真似て、召喚士以外の人々の間でもイノリをペットにする事が流行った事もあったそうです。今は、ただ飼いやすい魔物というふうになっていますが」


 それを聞き、ランド少年が僕らイノリを捕まえて飼ったのには、もともとそうした理由もあったのだなと、ぼんやりと思った。


 しかし、それにしても召喚とは面白い。

 彼女の妹のメルゥは、イノリを召喚した事から将来を期待されているらしいが、不思議なものだ。


 元々はまったく関係のなかった一人と一匹が、突然そこで出会ってパートナーになるのだから。


『(おや?そうなると、僕とニニィもそれに近いかもしれないな)』


 そういえば、ニニィと僕の出会いも突然だったなと、あの日のことを思い出す。


 奇跡のような出会いの積み重ねが、今の僕を形作っているのだ。



「ここが、村の神殿です」

『おお……!』


 村のはずれに、巨大な石造りの神殿が建っていた。

 神殿は海と木々と一体化して、その壁や柱は木の根やツタが複雑に絡み一つの自然な空間を作り出している。


「昔は龍神様を祀っていたと言われていましたが、その祭壇も村の中央に移ってからはあまり人も来なくて。いつでも使えるように、村の皆で管理はしていたのですが」

『いや、綺麗なところだ、本当に』

「そうですか?! それなら良かったです。さ、こちらに、龍神様がお休みなさる場所はこの中ですよ」


 神殿の奥には幻想的な空間が広がっていた。

 入り口から直接海につながる水路からは海水がゆるやかに流れ込み、大広間のような空間の真ん中に深い池を作っている。


 流れ込んでいるのは海水だというのに、その水を糧に色とりどりの華が緑の中に咲き乱れ、反射した水面の蒼に照らされて揺らめいている。


 ホタルのようなものが無数に飛んでいるように見えたが、驚くことに触ってみると実体が無い。


「それは魔力の粒ですよ、龍神様」

『魔力の粒? 自然に浮かんでいるようなものなの?』

「いいえ、他ではあまり見ることの出来ない現象です。魔力だけならば大気中に漂っていますけど、こうして目に見える形で現れるのはごく稀なんですよ」

『それは、すごいね』


 触ると一瞬、身体に溶けていったような感覚がして消えた。


 体内の魔力が少し回復したような感覚があったが、なんだろう、これは。自分はこの感覚を知っている。


『(龍脈、か?)』


 アルトはマギステアの大地に流れるものだと言っていたが、それがなぜ央海にぽつりと浮かぶ島にあるのか。


 もしくは、龍神と龍脈が何か密接に関わっているのか。

 謎は深まるばかりだ。


「あっ、龍神様。今日は私達姉妹もここに泊まりますので」


『えっ?』

「ふぇ!?」


 ふと物思いに耽っていたところに、ウィニアさんから突然爆弾発言が落とされた。


 まさかの言葉に、僕とメルゥちゃんの声が重なる。


「傷の手当も致しますので、何かあれば何なりと!」


 ウィニアさんが元気よく声を上げる。

 当のウィニアさんは、何だか機嫌が良さそうだった。



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