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生態系最底辺の魔物に転生しましたが、平和な生活目指して全力で生き残ります 〜最弱の両生類、進化を続けて最強の龍神へと至る〜  作者: 青蛙
第三章・聖なる獣と邪なる龍の伝説

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人と魔物と、三つ巴




◆◆◆◆◆



「聖なる獣マアト……セシルを殺す気か!」


 突如として目の前で白く巨大な魔物化した騎士。

 全身を白い羽毛で包んだその魔物は、セシルを追って飛び立っていった。


 セシルとセレスを助けに自分も行きたいが、イヴリースからの刺客『テオ・サラメーヤ』とマギステア聖国の六大聖天が一人『オルキス・トラヴァース』に行く手を阻まれてしまう。

 二人共、自分をセシルと合流させたくないのだ。しかし、だからと言って彼らが協力をするかと言えばそうではないらしい。


「死ねずのニニィは兎も角、お前は捕らえなければ。……ムジカの正体について、吐いてもらうぞ」


「……断る。だが、作戦の邪魔はさせん」


 テオとオルキスが睨み合う。

 飛空艇港の戦いは、ヒヒイロカネ等級冒険者『ニニィ・エレオノーラ』、アイオーン龍尾『テオ・サラメーヤ』、第四聖天『オルキス・トラヴァース』の三つ巴となっていた。



「どいつもこいつも、面倒な……【無双聖炎天(オラトリア・セレスタ)】!」


 だが、今の私にはそんな事は関係無い。

 このまま二人共ブッ潰してやる。


 セシルとセレスを奪われ、完全にニニィは理性のストッパーが外れてしまっていた。


「……!こいつ」

「まだまだ先があったのか……!」


 今までは出来るだけ建物を破壊しないように力を制して来たが、もう自制してなんていられない。


 【無双聖炎天】は光魔法と炎魔法の複合魔法。炎の力と光の力をその身に宿す強化魔法。だが、ただの強化魔法ではない。この力は、光と炎の概念そのものにも干渉し得る。


「切り刻んでやる」


「……っ、まずい!【次元転影(ヴィジョンスネア)】」

「【剣王血界(テラ・ジュネッス)】!」


 テオの姿が突如として掻き消え、オルキスの周囲には赤色に光る半透明の剣が六本現れる。次の瞬間には何十人ものテオの姿が建物内に現れ、オルキスの身体から赤いオーラと熱波が吹き上がる。


「影分身と無制限の瞬間移動、そしてあちらは属性相性の無効化と身体能力の倍化。剣の本数からして七倍か」


 瞬間移動をして接近してきたテオの内、四人が同時にニニィの身体に刀を突き刺した。だが、ニニィの表情はぴくりとも変わらない。それどころか、血が出ない上に刺した感覚すらなく、テオの目が驚きに見開かれた。


「身体が、光に……!?」

「おや、私の魔法は知らなかったのかい」


 ニニィの身体に刀を突き刺した四人のテオを、ニニィは即席で作った刀を一振りしてあっという間に両断してしまった。両断されたテオの身体は力を失って崩れ、ジジジと音をたてながらその身体にノイズが走り、そして空気中に弾けて消えた。


「キミも、かかって来なよ」

「……チィッ」

「様子見かい。なら、こちらから行こうか!」


 戦おうにも、オルキスは攻めあぐねていた。

 どう考えても、自分とは相性が悪過ぎる。


 あらゆる属性相性を無効化する、自分の【剣王血界】であればニニィの守りも突破できるだろうが、今の彼女は光属性の概念に干渉している為に自分のスピードではまず追い付くことなど不可能。


 だが、攻めあぐねていた彼を見てか、彼女は動き出した。

 彼女が何をしようとしているのか勘付いたテオが瞬間移動でその場から姿を消す。咄嗟にオルキスも自身の周囲に結界を張り巡らせた。


「消え失せろ」


 瞬間、全てが白塗りになった。

 否、光の奔流に周囲全てが飲み込まれたのだ。


 光が消えた時にはオルキスの身体はボロボロになり、纏っていた鎧もいくらか溶けてしまっていた。あの光には炎の概念まで混ぜ込まれていたらしい。

 壁も天井も、すっかりなくなったこのフロアに、残されたのはオルキスただ一人。


「何処へ……」



―――ズガン!ズズン……ドゴォ!


 遠くから、地響きのような音がする。

 地響きのような音はそれから十数秒ほど続き、そして突然に静かになった。



「終わった……のか」



 音もなく、ニニィはこのフロアに戻ってきた。

 その手に、ぐったりと動かなくなったテオを引きずって。


「次は、キミの番だ」

「フフ……私はこんな化け物の足止めを一人で任されていたのか?全く、笑えるな」


 オルキスの口から乾いた笑いが漏れる。

 おそらく、全力であたれば数合は渡り合えるだろう。だが、それまでだ。足止めなんて、出来たものではない。


 だが、先程の一撃をもろに受けてボロボロになった身体を立たせ、剣を真っ直ぐに構える。


「良いだろう。戦いはこれからというものだ」

「威勢が良いねえ」


 次の瞬間、その場に気絶したテオを残して彼女の姿が掻き消えた。咄嗟の判断でオルキスはその目をとじ、気配のみを頼りに素早く剣で身を守る。

 相手を目で追うことが出来ないのだから、こちらの方が確実性が高いと踏んでの判断だったが、それは上手く行ったようでオルキスの剣は確かにニニィの刀をしっかりと受け止めていた。


「ニニィ・エレオノーラ、光の速さを弄ったな!?」

「よく気付いたねえ。確かにその通りさ。私を中心とした一定範囲の光速を通常の倍に変えた。今の私の速さも、それと同速だよ」

「道理で、奴の瞬間移動も追い付かなかった訳だ! いくら瞬間移動といえど合間合間の隙に距離を詰められては戦いにならんな!」

「一撃受けられただけでも上々だね、キミは」


 再び彼女の姿が消えた。それと同時に脇腹に鈍い痛みが走った。

 まるで攻撃を受けた痛みが一気に押し寄せてきたかのような、何重にも合わさった鈍痛。おそらく、今の一瞬で何度か斬るか殴るかされたのだろう。だが、それを判断する余裕も無い、次の一撃が迫ってきているのだから。


「『六剣斬穢』!」


 目を瞑ったまま、気配を感じた方向に剣技を繰り出す。

 光属性のエネルギーを纏わせた剣を、瞬時に6度繰り出す超高速の剣。だが、それでも今の彼女のスピードには届かない。


「『次元断破』」


 彼女の声が聞こえた。

 一瞬、剣先がなにかに触れたかと思った次の瞬間、凄まじい衝撃を受けたオルキスの身体は建物の外へと吹き飛ばされる。


 オルキスがはっとして目を見開いた時、今にも刀を突き刺さんと両手で刀を逆手に構えた彼女の姿が見えた。


「(やられる……!)」


 オルキスがそう思った、その時だった。

 凄まじい爆発音がきこえ、眩い光が二人を包み込んだ。


 音のした方を見てみれば、二匹の巨大な獣と一匹のドラゴンがはるか上空で激しい争いを繰り広げていた。


「……セレス!」


 オルキスにとどめを刺す前に、ニニィの姿がその場から消える。地面へと落下したオルキスは、ぐったりと両手を広げて深く息を吐いた。


「酷い戦いだった。あんな化け物と二度とやりあうものか」



【魔物の進化】

 世界の至るところに生息している魔物たち。彼らの殆どは、進化をして強くなる性質を持っている。通常、彼らの進化は一本道であるが、ドラゴン系などの一部の魔物の中には進化先が分岐するものもある。分岐した進化先によっては、生息地までまるっきり変化してしまうものもいる。



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― 新着の感想 ―
[良い点] セシルはまだまだ弱いね [気になる点] いきなり強さにインフレがかかってきた [一言] >一定範囲の光速を通常の倍に変えた ニニィは光速の2倍の速さで動けるってこと?
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