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生態系最底辺の魔物に転生しましたが、平和な生活目指して全力で生き残ります 〜最弱の両生類、進化を続けて最強の龍神へと至る〜  作者: 青蛙
第三章・聖なる獣と邪なる龍の伝説

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32/90

両生類、犯罪組織を迎え撃つ


◆◆◆◆◆◆◆◆




 ニニィとラバルトが出発したのは、次の日の早朝だった。


 ラバルト曰く、拐われた獣人族の女性達は富裕層向けの奴隷として、闇オークションなどを通じて売り捌かれるだろうとのこと。

 拐われた彼女らも商品として大切に扱われるだろうから、今現在酷い目にあっていることは無いだろうとは言っていたが、出来るだけ早く救出してやりたいと彼は言っていた。

 現在、オラクルの街から出るルートの監視も仲間の冒険者の何人かが行っており、グリセントファミリーの連中が街から出ていかないかの情報共有を続けている。彼等からの連絡では、今のところ相手に動きは無いらしい。


「彼女の事、頼んだよセシル」

『うん、任せて』

「一応、あの子に魔力を使った会話の方法は教えておいたが、あまり期待しないでくれ。あと、キミのその首に付けたそれ。先程も使い方は説明したと思うが、上手く使ってくれよ」


 今、僕の首には犬なんかに付けるような首輪がついている。そして、その首輪にはブローチのような魔道具が。

 昨日、ニニィが僕のためにと用意してくれた魔道具だ。小さなブローチのような見た目をしているが、内部にそれよりも大きな道具をしまっておける。使い方は簡単で、身につけた状態で入れたいもの、出したいものを決めて魔力を流すだけ。それだけで物の出し入れが出来る。なぜこんな便利なものがあるのにニニィは使わないのかと聞くと、彼女曰く「荷物の重さが無いと旅をしている気分にならない」らしい。


「まあ、何も起こらない事が一番なんだがね」

『そうだね。何も起こらなければ良いけど。とにかく、お互い頑張ろう、ニニィ』


 そんなやり取りを交わして、僕と少女は部屋に残された。











『か……』

『ん?』


 ニニィとラバルトが出発してからもう数時間。

 ニニィに渡された物語の本を、難しい顔をしながら読み続けていた少女だったが、不意にその彼女から僕に向けて魔力が伸ばされた。


 そういえばニニィが魔力を使用した会話について少し教えたと言っていたが、


『か、▲◆◇▶■●◁!#$?』

『うわわっ!?』


 僕の脳に流れ込んできたのは言葉にならない思念の濁流。

 ニニィはあまり期待しないでくれと言っていたが、確かにこれは苦労しそうだ。


「むぅ……」

『あー、落ち込まないで。僕はキミの言葉をちゃんとわかってるから。普通に話してくれていいよ。えっと、聞こえてるんだよね?』

「……ん」


 彼女はムスッとした表情のままだったが、こくりと素直に頷いてくれた。

 なにも彼女が魔力を使用した会話を使いこなせるようになる必要は無いのだ。僕は彼女の言葉をちゃんと理解出来ているのだから、僕の声をこの子が聞けるようになっただけで会話は充分に出来る。


「かみさま、おはなし、できる」

『うん、お話しできるね』

「わたし、ききたいこと、かみさま、ある」

『聞きたいこと?僕に?』


 少女はゆらゆらと黄金色の尻尾を揺らしながら寄ってくると、真正面にぺたんと腰をおろしてこちらをじっと見つめてきた。


「かみさま、ちいさい。けど、かみさま、おおきい、なぜ?」

『えっ、なに?ちいさいけどおおきい?』

「なんで?」

『いや、なんでと聞かれても』


 彼女は時折、今のように要領を得ない事を言う。

 言葉としては通じても、何を言っているのかわからない。


『えっと……僕が大きくて小さいって、どういうこと?』

「ちがう。かみさま、ちいさい。だけど、ほんとうはおおきい。なんで?」

『僕は前からずっと小さいけど……これでも大きくはなってるんだけどな』


 そう言うと、彼女は不思議そうに首をかしげた。

 数秒ほど彼女はその姿勢のまま思案していたが、ふと何かを思いついたのか部屋の机から紙を引っ張り出し、鉛筆を使って何かを描き始める。


 気になってその手元をのぞくと、小さな人のようなシルエットと大きな何かが描かれていっていた。

 その大きな何かは、小さな人々に囲まれて立ち。空を見上げている。奇妙な姿をしていたが、なんとなくドラゴンのようにも見える。

 ぼんやりとその絵を眺めていると、炎を表現したようなぐちゃぐちゃの線と、波を表現したようなねじれ線がいくつも続いて描き足されていく。


『これは……?』

「かみさま。とてもこわい、ぜんぶもやす、ぜんぶながす。けど、やさしい」

『これが、かみさまなんだ』


 頭の形から察するに、おそらくは僕と同じ水棲の竜。

 4足歩行で、尾は3本に分かれている。大きく捻れた角からは、なんとも言えない禍々しさを感じずにはいられない。


『やっぱり、僕はかみさまじゃないと思うよ』

「?ちがう、かみさまは、かみさま」


 少女の描いたそれを見て、やっぱり自分は違うなと思ったのだが、彼女は横に首を振ってそれを否定する。

 彼女の中では僕がかみさまであるという確信があるようだが、やはり僕にはわからない。魔物としては高い知能を持っているのも、僕が元々人間だったからで、水魔法以外の魔法を使えるのも同様。

 だが、それを言っても彼女は理解してはくれないだろう。理解してくれたとしても、それで残念に思わせてしまうかもしれない。


「だからふしぎ。かみさま、ちいさい」

『僕、かみさまなのかな……変な感じ』


 その時、下の階が少し騒がしくなってきたのに気が付いた。


 冒険者同士のいざこざでも起きたのかと思えば、そうでも無いらしい。

 誰かを引き止めるような大声と、ドタドタと言う大勢が走り回るような音。


 2階へと上がってきているのか、その激しい音は近付いてきていた。


『ねえ、ベッドの下に少し隠れてて』

「……かみさま?」

『急いで』


 嫌な予感がした。


「待てやあんた等!何勝手に宿泊エリアに入ろうとしてるんだ!」

「るせぇな、邪魔なんだよオッサン。おい、お前、このオッサン殺せ」

「鍵取ってきたな?ここ開けるぞ」


 嫌な予感を裏付けるように、血の匂いが漂ってきた。

 部屋の外の喧騒を聞いて呆然としていた少女も、異常事態だとやっと気が付いたのか、言ったとおりにベッドの下にその身を隠す。


 僕らの部屋の鍵が、カチャリと音を立てて開いた。




「ここだ。獣人族(スロゥプ)のガキ探せ」

「なんかトカゲいるぜ」

「馬鹿か、そりゃ水竜イリノアだ。革剥がせば高値で売れる」


 扉が開き、見るからに粗野な男たちがぞろぞろと入ってくる。おそらく、少女をさらいに来たと思われる彼等は、部屋の真ん中に居た僕に気が付くと、欲望に塗れた視線を向けてきた。


「へへ、()()()()()もの以外なら、アニキに報告する必要もねえよな」


 一人の男が腰から下げていた剣を抜き、此方に近付いてくる。


 彼等の背後に見えている廊下に、冒険者酒場で働いていた男が血を流してぐったりと倒れていた。



『ニニィには後で報告するとして、こいつら全員殺しておくか』



セシル 4ヶ月 ♂

 種族:水竜イリノア

 体長:48

 状態:健康

 生命力 1850

 魔力 980

 筋力 2545

 防御 1130

 速度 1100

 魔術 2124

 技能:身体強化、個体検査、炎魔法統合、水魔法統合、風魔法統合、毒液



 一応、身体の成長に合わせて使える魔法も増やした。

 見たところこの男たちもたいした強さではなさそうだ。僕一匹でも、充分に殺しきれる。


 この男たちが何者なのかは知らないが、獣人族の少女をさらいにきたと言う事と、無関係の人にまで危害を加えられていた事で完全に頭に血がのぼっていた。


『【氷炎武装(ジェネレイド・テラ)】』


 燃え尽きるほど熱く、そして凍えるほど冷たく。

 身体のあちこちから刃のような氷が生え、燃え滾る炎が衣のように全身を包み込む。

 相反する2属性の魔法は互いを弱めるどころか強めあい、今や僕の周囲は霜で白く凍りついた場所と黒く焦げついた場所とが混ざり合う奇妙な空間へと変化していた。


「は、え? なん、こいつ」

「これ、あの男が言ってた……!」

「おい、どういう事だよ!逃げ道が!」


 男達も異変に気が付いたようだが、もう遅い。

 既にドアや窓などの逃げ道は魔法で創り出した氷で全て塞いだ。


「ぶ、ぎゃ」


 まずは一人。

 床から勢いよく飛び上がり、頭蓋をかち割って吹き飛ばす。


 タパパッと飛び散った血が音をたて、ぐらりと男の身体は糸の切れたあやつり人形のように崩れ落ちる。


 一方的な戦いが始まった。



【セリオン】

 この世界における共通の通貨。国ひとつひとつに通貨は存在せず、物価に多少の差はあれどどの国でも同じように使用できる。なぜ共通の通貨になっているのかと言うと、現存している国の全てが元は一つの国から分離して広がっていったものである事が原因。今のところ経済、文化レベル共にどの国も大きな差は無いために問題は起きていない。





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