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ORDA オルダ~蟲の住む石~  作者: ふじしー
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75.五十嵐の過去

 オレたちと刑事たちが合流した時間帯は、ちょうど神主の退院の時間だったようで、二階から神主と神主の妻、医者が降りてきた。神主の目には眼帯が付けられていた。 


「刑事さん、みなさん、こんにちは」


 神主の妻が言った。その横で神主が会釈をした。


「退院ですか?」


 香川さんが言うと、神主は「はい」と答えた。


「おかげさまで、無事退院できました」

「もうオルダと契約していないので問題はないかと思いますが、笹嶺神社の管理をする時に違和感であるとか、何かありましたらご連絡ください」


 神主の背後にいた医者が言った。

 神主は振り返って、医者を見た。


「分かりました。ありがとうございました」


 そして、神主と神主の妻は診療所を出ていった。

 二人を見送った後、オレは刑事たちに今朝五十嵐から聞いた話を一通り話した。

 五十嵐がこの村に来た理由はオレと同じであったこと。五十嵐は鬼虎の話を聞いて笹嶺神社を訪れたものの、検視官の三田さんと同じ引っ張られるような感覚に襲われて一度逃げたこと。その後うちのオーナーから何とかという先生の助手がこの村の出身だと教えられ、その助手の苗字と同じ苗字の家を手当たり次第訪れたところ、契約解除について知っている人に会い、笹嶺神社で試したこと。そして、何とかという先生と助手の名前は携帯を紛失したため分からないこと。


「携帯と身分証を奪われた可能性がある?」


 香川さんは人差し指を口の下に当てて聞いてきた。


「本人は携帯も身分証も持っていたと言っていましたし、おそらくそうなのだと思います。もしかしたら、五十嵐が訪れた村の人が奪っていったのかもしれないと思ったので、うちのオーナーに何とかという先生とその助手の名前を確認するメールを送りましたが…」


 オレは携帯を取り出して確認したが、まだ返事は無いようだ。


「まだ来てないようです。返事が来るのは14時過ぎかなと思います。その時間に動き出す習性なので」


 香川さんは頷いて言った。

 そこへ看護師が階段を降りてやってきた。


「五十嵐さんのお食事終わりました」


 香川さんは振り返って「分かりました」と看護師に伝え、オレたちの方を向いて言った。


「では、行きますか」


 オレたちは2階の五十嵐の部屋に向かった。

 五十嵐は刑事が来る準備が出来ていたようで、待ち構えたようにベッドの上で座っていた。目には神主とおそろいの眼帯を付けている。


「お待ちしておりました」


 五十嵐が言った。

 香川さんと松井さんは昨日の朦朧とした姿しか見ていなかったので、驚異の回復に驚いたようだった。


「聞いてはいましたが、普通にしゃべられるんですね」


 松井さんが言った。


「立とうとするとフラっとしますが、話す分には問題ないです」


 五十嵐が答えた。

 香川さんは頷いて、


「では、お話を聞かせてください。この村に来た経緯、笹嶺神社に一度訪れたが引っ張られるような感覚に襲われ逃げたこと、オーナーさんから聞いたこの村の出身者の名字を頼りに家を回って契約解除の方法を知る人に会ったことまでは戸塚さんから聞きました」


 五十嵐はオレを見て、状況は把握したらしく「はい」頷いた。


「話を聞いた家というのは、どのあたりになりますか?」


 五十嵐は「んー」と考え込んで、


「その日は苗字を探してひたすら回って、しかも初めての土地なんで正確には覚えてないんですが、近くに寺があった気がします」

「寺か…結構多いな」

「笹嶺神社からは離れてます」


 香川さんは頭をポリポリとかいた。そして、諦めたようだ。


「では、笹嶺神社で倒れるまでの話を聞かせてください」


 五十嵐は頷いた。


「笹嶺神社でどういう手順で何をされましたか?」

「まず、村の人に聞いた通り、社の下のオルダがいる石に自分の石を重ねて、オレの中から出ていってくださいと願いました。すると突然目を殴られたような感じになって、倒れました。それ以降のことは覚えていません」


 香川さんは口の下に人差し指を当てて言った。


「神主さんと同じですな」


 松井さんも医者も頷いている。


「痛みはありましたか?」

「いや、一瞬のことだったので覚えてないですが…痛かったような気はします」

「誰かと一緒に来たわけではない?」

「一人で行きました」


 香川さんは頷きながら「なるほど」と呟いた。


「では、次に、五十嵐さんがオルダハンターになった経緯を教えていただけますか?」

「経緯?」

「何がきっかけでオルダハンターになられましたか?」


 突然話が変わった。

 五十嵐は思い出そうとして、しかし、「ん?」と考え込んだ。


「覚えていないですか?」

「どうやってオルダハンターになったんだっけ…」


 五十嵐は目を丸くした。

 それはオレも同様だった。まるでオレと同じである。


「気づいたら、この仕事をしていたような」


 香川さんはオレを見た。そして、再び五十嵐を見た。香川さんは既に何かを調べ終わっている。そう思った。


「どうやってなったかな…」


 五十嵐は考え込んでいるが、思い出せないようだ。


「では、親御さんのことお聞かせください」

「親?」

「ご職業であるとか、出身地であるとか」


 五十嵐は再び考え込んだ。


「親…」


 その姿を見て、香川さんが追加の質問をした。


「学生時代とか、オルダハンターになる前のこととか覚えていらっしゃいますか?」


 五十嵐は頭を押さえ始めた。


「…いや、全然思い出せないです。え、俺、オルダと契約解除して過去の記憶が消えちゃったんですか?」


 医者もビックリした様子で香川さんを見た。

 香川さんが首を傾げた。


「契約解除が原因かは分かりません。ただ、オルダハンターになった後のことは覚えてらっしゃるんですよね? 戸塚さんのことも覚えていた」


 五十嵐は頷いた。


「だから、おそらく違うでしょう。記憶が消えているのは、契約解除する前からだと思われます。ありがとうございます。現状は分かりました」


 香川さんはオレを見た。


「戸塚さんだけ、待合所に来ていただけますか?」


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