「ざまぁ」「悪役令嬢」を活用した長編小説の作成手法に関する考察
本エッセイは、これまでに私が読んだ多くの方のエッセイを参考にして、小説家になろうにおける人気テーマを活用した長編小説の作成の手順書化を試みたものです。
もし、あなたの知的好奇心を刺激できたなら、幸いです。
【本エッセイで語りたいこと】
小説家になろうでは、人気の高い「悪役令嬢」や「ざまぁ」などのテーマを用いて、長編小説の作成にチャレンジする作者が多いことが知られています。しかし、読者は「悪役令嬢」や「ざまぁ」について、ある程度短い読了時間内にカタルシスを得ることを期待するため、これらを長編小説のメインテーマとして使いにくいという問題があります。
そこで本エッセイでは、もし私が人気テーマについて初めて長編小説を書こうとしたとき、前記の問題をどのように解決するかを具体化することを目的とします。
【具体化】
前述のとおり、「ざまぁ」を作品テーマとして使う場合、長編小説の全体を通底するテーマとしては活用しにくいという問題があります。
そこで、この問題を解決するために「ざまぁ」以外の親ストーリーを設け、「ざまぁ」を親ストーリー中の一部で語られる第1子ストーリーとして長編小説中に配置します。
私は「ざまぁ」をシンデレラストーリーの一類型と捉えていますので、以下ではそのように話を進めます。
親ストーリーに第1子ストーリーを内包させることを、具体例を古典童話を例にとり説明すると、親ストーリーである桃太郎の中に、シンデレラを埋め込むということです。
桃太郎の物語の始点と終点は、鬼退治に出発 → 勝利し宝を持ち帰る というものです。
シンデレラの物語の始点と終点は、義母や義姉からの迫害と奴隷労働 → 王子に見出されて解放と幸福な結婚 というものです。
そして桃太郎の中にシンデレラを埋め込むと以下のようになります。
第1幕 鬼退治のために出発
第2幕 最初に出会った悪しき者たち(義姉)とパーティーを組むが、不当評価され奴隷労働させられる
第3幕 新しく出会ったより優れた者たち(王子)のパーティーに迎えられ、悪しき者たちから解放される
第4幕 鬼退治に成功して宝を持ち帰る
第2幕と第3幕は、固定読者の獲得を目指すために、早い段階で語り終えてカタルシスを与えることとします。
どのぐらいを目安にすると良いかは不明ですが、直感的には単行本1冊から2冊目の半ばぐらいが良いものと思います。
単行本1冊がおおよそ5~13万文字らしいので、5万文字から20万文字の間となるでしょう。
さて、小説家になろうでは、読者への訴求力の高いテーマの要約をタイトルにすると読んでもらえるとのことですので、シンデレラの要約をタイトルにつけます。
例えば「鬼退治パーティーの中で私だけが粗末な食事で寝れないほど働かされる、こんなところは出ていくわ!いまさら戻って来いと言ってももう遅い。(副題:桃太郎)」のようなタイトルです。
また、長編小説なので、もう少し肉付けして尺を伸ばしたいところです。
そこで「シンデレラ」の次に語る第2子ストーリーとして、例えば「舌きり雀」を入れます。
ここで「シンデレラ」は、読者に早い段階でカタルシスを与えるため、「舌きり雀」より前に配置します。
第2子ストーリを挟み込むと以下のようになります。
第3.1幕 義姉が虐待していた雀を、シンデレラが助ける。
第3.2幕 シンデレラが雀のお宿に招かれて宝をもらう。
第3.3幕 義姉が雀を締め上げて、雀から宝箱を強奪したが、宝箱から魑魅魍魎が溢れてくる(第2ざまぁ)
このように、できれば第2子ストーリーでも「ざまぁ」という人気要素を入れて、固定読者のさらなる定着強化をめざします。この後は、第3子ストーリーとして「浦島太郎」など物語の尺に応じて、新たなストーリーを語ります。
一応、物語の基本骨格はできあがりました。後はイヌ、サル、キジとの出会いをビーストテイム能力の獲得のように置換して、古典童話の用語をファンタジー用語へ全て置換します。
【作成手法まとめ】
①親ストーリーは第1子ストーリーを内包する入れ子構造であり、第1子ストーリーはビュー数の獲得効率が高いテーマとすることを特徴とする長編小説の作成方法。
②第1子ストーリーの要約を作品名称とすることを特徴とする①記載の長編小説の作成方法。
③親ストーリーは、第1子ストーリーと独立した、第2子ストーリーを有し、第1子ストーリーは第2子ストーリーよりも先に語られることを特徴とする①または②記載の長編小説の作成方法。
④第1子ストーリーで語られるテーマは、「悪役令嬢」または「ざまぁ」であることを特徴とする①から③のいずれかに記載の長編小説の作成方法。
⑤第1子ストーリーは、所定文字数以内(例:単行本1冊分 10万文字以内)で語り終えられることを特徴とする①から④のいずれかに記載の長編小説の作成方法。
【あとがき】
年休中の朝の寝ぼけた頭でとりとめもなく考えついたことです。書き出してしまわないと、いつまでもこの考えに囚われるので、書き起こしてみました。すでに多くの方が述べられていることを組み合わせたものなので、この手順書に新規性や進歩性はないなぁと思います。
また、一応ここまでのところで整合性をもった小説の体裁までは作れそうですが、全然オリジナリティがないので何か皆が初めて見るような新発明を盛り込まないと人気を博すところまではいかないだろうなと感じます。それが難しいし、それこそが創作の根幹でしょうね。