表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
界黎学園の365日  作者: 天馬光
6/205

問題児現る

 てな訳で、私とコウメイは霞に謝るべく、あいつに話しかけようと思ったんだけど、霞は授業が終わる度に、どこかに行ってるらしくって、昼休みになった直後もそそくさと教室を出て行った。

 私達も必死に後を追おうとしたけど、生徒でごった返す廊下で、霞を追跡することはできず、結局見失ってしまった。


「あーもう! 霞の奴どこ行ったの!?」


「こうも人が多いと、探すのも一苦労だね。臭いで辿ることもできそうにないし」

 どうしたらいいんだろう? 手詰まりに等しい状況に、私達は頭を抱える。


 すると、そんな私達にある人が声をかけてきてくれた。


「む? おぬしら。霞を探しておるのか?」


「ん? 龍じぃ!」

 驚いた私がそう呼んだこの人の名前は、応老龍(イン=ラオロン)

 応龍っていうすごい龍の一族出身の龍で、みんなから親しみを込めて龍じぃって呼ばれてる校長先生。

 普段は花壇に水やりしてるか、お茶啜ってるか、学校を散策してるだけのおじいちゃんなんだけど、記憶力や知能が桁外れで、この学校はおろか、町の人の顔とか名前とかを全部記憶してるすごい人だったりする。


「ちょうどよかった! 龍じぃ、霞がどこにいるか知らない?」


「もちろん知っとるとも。この時間なら学食で飯を食っておる頃じゃろう。席は確か……厠のすぐ側だったはずじゃ」


「トイレの側……ありがとう龍じぃ!」

 私は龍じぃに礼を言うと、急いで学食に向かった。



 うちの学食はフードコートみたいにとにかく広くって、各店が色んな国や種族の料理を安く提供している。

 一応、購買もあって、そこでパンを買って食べる生徒もいるにはいるけど、最近万引きが横行してるせいで品揃えも少ないし、そうでなくても、そもそものメニューのクオリティーとレパートリーが段違いだから、昼ご飯目的で購買に行く人はほとんどいない。

 だから昼休みになると、7~8割の生徒がここに来てご飯を食べることになり、廊下の比じゃないぐらい混雑してしまう。

 この中から霞を見つけ出すなんて、普通は厳しいけど、龍じぃから場所を聞いてたおかげで、すぐに見つけることができた。


「いた! かす……」

 私はそう言いながら霞のところに行こうとした。


 けど、そこに割り込むように、古いタイプのヤンキー集団が現れ、あっという間に霞を取り囲んだ。

 一発文句言ってやりたかったけど、あいつらは私が怒鳴るより先に、霞が食べてた牛丼を取り上げて、頭にぶちまけた。


「霞!」


「………………」


「死臭臭ぇんだよゾンビが。こんなとこで飯なんか食ってんじゃねぇ」

 番長らしき魔族の一種・オークの不良がそう言うと、子分のスケルトン共がケタケタと笑い出す。

 それでも、霞はまるで何事も無かったかのように、頭や肩に乗っかった牛丼を払った。

 その態度が気に入らなかったんだと思う。今度は番長の相棒っぽい男子が、霞の胸ぐらを掴んで脅しにかかった。


「おい。死体の分際で無視してんじゃねぇぞ。それとも何か? 今夜こそ俺に食われてぇか? え?」


「待て待てヴォルグ。こんな奴食ったって腹壊すだけだ。お前も嫌だよなぁ?」

 そう聞かれて、霞は頷く。


「じゃあ、許してやる。その代わり、金出せよ。俺らへの慰謝料としてな。つーか、どうせ金なんていらねぇだろ? 死体なんだから」

 そう言ってオークはブヒヒと下品な笑いを浮かべる。その様子と要求に、拳を握り締めるぐらい霞がムカついていたのが、遠くにいた私からでもわかった。

 霞は、ずっとあいつらにいじめられてたんだ。そう思うと、あいつらを思いっきりぶん殴りたくて仕方なかった。


 そう思ってると、教頭先生達がすごい剣幕で学食に来た。どうやら生徒か誰かの知らせを受けて、不良共を叱りに来たみたい。

 分が悪いと判断したヴォルグ達は逃げてったみたいだけど、そのどさくさに紛れて気付いたら霞もいなくなってた。


 いじめの影響で、霞はゾンビであることを気にしてるのかもしれない。だから、みんなに気を使われないように、距離をとってるんじゃ……私は、そんな状態になってるかもしれない霞を心配した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ