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界黎学園の365日  作者: 天馬光
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出会いは死臭と共に

 そんなポジティブで面白いサダコ先生の授業が終わった後、私は次の授業の準備をしながらコウメイと雑談していた。


「はぁ……今更だけど、なんでこの学校に来てまで、英語を習わなきゃなんないんだろう?」


「必履修科目だから仕方ないよ。やっぱり、嫌なんだ」


「うん。死にたいくらい」


「いやいや。岸川さんもう死んでるだろ?」

 コウメイから的確なツッコミが入る。


「まぁでも、気が滅入るのはわかるよ。僕も苦手だし」


「でしょ!? だーかーらー……」


「ダメだよ。式神に頼るのは」

 皆まで言わない内に拒否されたけど、ここで折れる私じゃない。拝むように手を合わせ、親友に頼み込んだ。


「そこを何とか! お願いコウえもん!」


「どれだけ頼まれても、式神をサボりには使わないよ。それに、僕はド〇えもんじゃないしね。ゆか太君」

 この一言にトドメを刺された私は、お決まりの『ケチ!』の2文字を心の中で叫んで、机に突っ伏した。『願わくば自習になりますように』それだけを願って……だってそんぐらい嫌いなんだもん! 明日この世から無くなっても、私は何も困らない。


 なんて憂鬱な気分になっていると、何やらコウメイの様子がおかしい。何かを気にして周りをクンクンと嗅いでるみたい。


「ん? どったの? コウメイ」


「いや。今……何かが腐ったような臭いがして……」


「におい?」

 そう言ってると、私が突っ伏してる間にコウメイの横を通った女子が戻ってきて、


「あ、ごめん……臭かった?」

 って、いきなり耳元に話しかけてきた。

 もちろんそこにも驚いたけど、何よりびっくりしたのは、その子の肌が見るからに腐敗していて、黒ずんでいるところ。それを見た瞬間、私とコウメイは思わず叫び、椅子から転げ落ちた。


「大丈夫?」


「あ、あぁ、うん。えっと、あんたは確か、今年から同じクラスの……」


「うん。そういえば、まともに顔を合わせたことなかったね。敷村(しきむら)(かすみ)よ。よろしく」

 そう言って霞は、礼儀正しく頭を下げた。


「こ、こちらこそ、よろしく……」


「その……不快にさせてしまったのなら、ごめんなさい」


「き、気にしないで。仕方ないことだし、ね?」


「そ、そうそう!」

 必死にそうフォローするけど、多分、鏡で確かめるまでもないぐらい、私達の顔は引き攣っていたと思う。


「そう……じゃあ」

 霞はそう言うと、俯きながら教室を後にした。

 その背を見送った私とコウメイは、霞の姿が見えなくなったのを確認してから、互いに顔を見合わせ、大きく息を吐いた。


 そういえば、サダコ先生言ってたなぁ。『あんたと同じいっぺん死んだ奴がこの学校にいる』って。でも……ゾンビっ娘とは聞いてないよー! 万が一生徒が襲われたらどうすんの!? あ、でも、私は幽霊だから、噛まれる心配は無いか。


 そう思ってると、背後から、


「コラ!」

 と、いつの間にか後ろに立っていたサダコ先生に怒鳴られた。


「サ、サダコ先生……」


「あんたら、この学校の校則忘れたの?」

 忘れるはずがない。その理念を理解した上で、私達は入学したんだから。


「わ、わかってます。『他人を差別せず、親交を深めることに努めるべし』でしたよね?」


「わかってんじゃない。だったら、ゾンビだからって差別しちゃダメでしょ」

 そう言われて、私達は猛省した。

 本当にあいつが心までゾンビと化していたら、すれ違いざまに襲われているはず。だけど、霞はそんなことは一切せず、終始私達を気づかってくれた。

 なのに私達は、ゾンビってだけで、あいつを化け物扱いしてしまった。それがどれだけあいつの心を傷付けたことか……


「……ですよね。あいつも私と同じ、でしたもんね?」


「そゆこと。わかったら折を見て謝りに行きなさい。じゃね。少年少女達」

 そう言ってサダコ先生は、手を振りながら教室を出て行った。


 考えることは、コウメイも同じみたい。ちゃんと霞に謝らないとね……

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