第3話 反撃
第3話 反撃
2人、3人と同じ文言を繰り返し、名刺を配る。
受け取る側は、なすすべもなくカバンの中のカードを引き出すことなく攻撃を受け入れた。
6人目にカードを出した時、
受け取った女性はニヤリと笑みを浮かべた。
「こちら、私の名刺です。
タナカ ヤスシの母のキミエです。」
そう言うとカードを差し出した。
その表情には余裕と哀れみの入り混じった表情があった。
カードを受け取った洋装の女性、
カードを見るや否や、顔が青ざめて周囲を見渡し、そそくさと席へ戻った。
「夫:ヤスオ ◯△電力 専務
妻:キミエ △□商事 部長補佐
夫婦の趣味:アウトドア、テニス」
カードに記されていた言葉は、正当防衛を超過した超弩級の大砲と言えよう。
…
……
………
この様な静かで激しいバトルが行われた中、
最初に声をあげた女性から2番目に名刺を渡されたのが俺の妻であった。
「周りのお父さんは凄い出世されてるのに、
あなたは出世の予定とかないの?」
妻の問いに言い返すこともなく、妻の言葉から目をそらす。
「出世しても、うちの会社じゃ仕事が増えて給料はさほど増えないんだよ。
それに、自慢するなら夫ではなく、自分の事で争うべきだろう。」
…と、心の中で妻に届かない様叫ぶ、
「仕事のことは個人差もあっって仕方ないよね、たけしと遊んできてくれない?
退屈しているみたいなの。」
妻の声を聞き、男の子の声が近づいてくる。
「パパ、遊ぼう!おうまさんごっこ!」
そう言うと男の子は、私に掴みかかってきた。
「俺は、弱いな…」
そう呟いた私は、1人の女性と子供の前にひれ伏すのであった。
いやー疲れました!
これにて完結です。