第2話 決闘
第2話 決闘
少し静かになった室内、
数人が会話を楽しんでいる。
その静寂を切り裂くように、
1人の女性が声をあげた。
「あの、先程は人数が多くてよくわからなかったので、
もう一度自己紹介をしませんか?
親睦を深めるためにも…」
1人の女性の発言により、凍りつく。
ここは私立高校入学式後のPTA。
親同士の初対面の場である。
輝かしい洋装と装飾品、余裕があり堂々とした表情の女性。
彼女は「まず私から…」と、自己紹介を始めた。
「私は、カトウ トクヒロの母のヒロミです。
よろしくお願いします。」
ぱちぱちぱち…
周囲の控えめな拍手が教室を包む。
周囲は少し安堵した表情を浮かべた。
平穏な空気の中、その雰囲気を
切り裂く一枚のカードが
1人の聴衆へと差し出された。
カードを差し出し主導権をつかんだ女性は
続けて声をあげた。
「旦那は◯◯電力の部長で、年収は…
……。………。
よろしくお願いします。」
いきなりの強カード、夫の年収=戦闘力。
周囲のマウントをとるには十分、最初からクライマックスのように思えるレベルである。
そのカードには女性の発言が箇条書きされていた。
そう、ママ友用名刺である。