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死亡志願者は最強で不老不死  作者: ウエハル
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悪の秘密結社と正義の味方?

 


「ヴァン・オリゴ・テンプス。天に立たぬ我らの父よ」


「………」


 その名を聞いて二人の間に静寂が訪れた。

 こいつはマジモンで俺を知っている。子供を作った覚えはない。童貞というわけではないが、子供が出来たという報告を受けたことはない。もしや、俺が知らないところで子孫が繁栄したというのか。そして二万年間、何が起こったのか分からないこの世界を生き抜いたというのか。


「……子供ってことは信じよう。……だが、俺を殺す理由はなんだ?」


「あなたは……頂点に立ちたいと思わないのか?」


「まあ、思わねぇな。注目を浴びると面倒だからな」


 有名人がいつまで経っても死なないとなったら大騒ぎだろう。不死身の男なんてレッテルを貼られたら終わりだ。どこまでも追いかけられる。それを避けるために目立つことはしない。


「私達はあなたが存在するせいで頂点には立てない……上位互換がいるというのに頂点を名乗るのはアホらしいでしょう?」


「上にいる者を殺すことで、自分達が頂点になるってことか。一つだけ問題があるとすれば、下克上は不可能ってことだけだな」


 殺せるもんなら殺してくれ、と言いたいもんだ。

 周囲ではワーワーと賞賛の声を上げているが、ハルとシュウはただならぬ雰囲気を察してかバンに近づこうとはしない。


「哀れな恥曝しめ……この軟弱者がァッ!」


 突然怒り狂った白騎士が、抜刀術を繰り出してきた。雷速の抜刀術は精錬されており、速度も精度も十分。しかし


 カァン!──火花が飛び散り、刃は交じり合った。いつの間にかバンが手にしていたのは、ナツの一撃を防いだ際に使っていた剣。かなり昔に苦労して手に入れた聖剣『テミオン』。その刃はいつまでも輝き、刃毀れを起こすことはない。

 周囲のアホみたいなハンター達もやっと静まり返り、二人の攻防を慌てた目で見ている。

 バンは剣越しに白騎士の兜を見つめる。


「目立つってのも……たまには良いかもな」


「我が抜刀を防ぐとは……腕は立つようだ。しかし、これはどうかな」


 男の背中から突如として赤く煌めく四つの刃が現れる。その刃はクワガタの角のように不思議な形状をしており、刃の周りをチェーンソーのように小さな刃が回っている。

 これまた見たことのない魔法だ。

 魔法には下位・上位・最上位・神位とランク分けがされている。らしい。上位でも覚えるのに10年はかかるらしいが、バンには一日と同じような感覚に過ぎない。


「上位魔法!『スカーレット・カーマイン』ッ!」


 浮遊している刃は白騎士を避けてバンにその刃先を向けて、かなり速く迫ってくる。

 バンは大きく後ろに跳び、一旦距離を置いた。

 スカーレットとカーマイン。一体何色なんだそれは。


「どっちだよ。『ハウス』」


 急に『スカーレット・カーマイン』の刃が停止した。これは犬のしつけをしている際に開発したバンだけが扱える魔法。その効果はある意味最強。


 バンのオリジナル魔法『ハウス』は、魔法や飛び道具を持ち主の元に戻す魔法。持ち主の元に戻すとは言っているが、実際は持ち主の元に返す魔法。つまり切っ先は必ず持ち主に向く。

 赤い刃は方向転換し、持ち主へと戻っていく。


「アギャァアッ!!!」


 無様な断末魔を響かせ、白騎士の背中は刃によって裂かれた。やはり強そうな雰囲気を作っても、所詮こんなものか。


「このッ……揺るさんぞォッ!!」


 白騎士は鎧を血で濡らしながらも立ち上がり、走ってくる。

 俺を狙っているというのに、不老不死のことを知らないのか。てっきり秘密兵器でもあるのかと思ったが、かなりの期待外れだ。


「喰らえッ!『スカーレット・ヨハン──」


「それ以上は言わせない!終わりだ!『エレクトリック・ユニヴァース』!」


 白騎士はバンを通り過ぎて転がり、悶えている。

 これは相手の四肢の自由を奪う魔法。確か最上位魔法だった気がする。さっきの一件もあるため、もう魔法は惜しまず使っていくことにした。

バンは白騎士に背を向け、去っていく。


「そんな……この私がァ……負けるわけがないんだ…!」


四肢が動かないはずだというのに、白騎士は飛び上がった。

風の魔法か何かだろうが、もう用済み。背後から白騎士が来ているというのにバンは一切動こうとしない。


「おふっ」


シュウより、一本の矢が横から既に放たれていた。


「毒は無いから、安心しな」




 念のため縛り付けた白騎士を笑顔で尋問する。一応回復魔法はかけておいたが、このまま逃がすつもりはない。

 周りには、ややしつこいハンター達の野次馬が囲い、逃げられないようになっている。ハンター達にとってみれば、この白騎士もかなりの実力者だろう。


「お前の名前は?」

「………」

「よし、シュウ毒矢を打て」

「我が名はルブルムッ!」

「急になんだこいつ……組織の名前と所在地は?」

「我が組織はヴァダクルム!我らグレーバー区に有り!」

「口軽いなお前……強さの理由は」

「我らが血を──」


「オイお前達!何を集まっている!どけどけ!ここは我ら「モンスーン」が通る道だ!」


「げっ、また来たぜあいつら」

「さっさと行こうぜ。ロクなことにならねぇ」

「「モンスーン」は傲慢無礼、ってな」


 厳つい声がハンター達の海を裂き、装備を身に纏った数十人のハンターと思われる者達が我が物顔で行進してくる。それぞれ鎧の一部位に鳥の翼のような紋章が刻まれ、身長2メートルはあるんじゃないかと思うほどの巨体のハンターが先導している。


 野次馬のハンター達はいつの間にか消え去り、その場にはルブルム、バン、ハル、シュウの三名が残った。

 先頭にいるのはどうせマスターだろう。赤色の派手で大きな鎧を身に纏い、強面な顔は出している。背中にはこれまた大きな斧を背負い、強者の風格を感じる。


「シュウ、ここにいたのか。事情を説明しろ。それと、我が団の紋章が隠れているぞ」


 マスターに言われ、シュウは嫌々折り曲げていた服の裾を元に戻し、翼の紋章を見せた。それは「モンスーン」の紋章であり、シュウにとっては嫌悪の象徴のような物。

 周囲には手足を縛られたルブルムと、首元から真っ二つになった巨大な白蛇。そして闘いの痕。


「えっと……これはですね……」


 言葉に詰まっている。やはり、面と向かって規律を破りましたなんて言える奴はいないだろう。


「俺が一人でやりました。全部、蛇もこの男も、襲ってきたのは向こうからでしたから。正当なる防衛、ですよね?」


「シュウ、本当か?」


「いいえ、私も共に戦いました」



シュウの出番が少ない気がしたので少し追加しました。

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