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死亡志願者は最強で不老不死  作者: ウエハル
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不死身の男

 



 バンの頭を貫いた槍。コウモリのように天井から降りてきた男達は、その死に様を嘲笑する。


「ギャハハハハハハハハ!!!一発KOだぜ!わざわざ来たのに呆気ねぇな!!!」


 服装が統一された黒装束の男達。それぞれが様々な武器を所持し、見た目からして強盗団などの犯罪集団だろう。天井に張り付いていた点から考えて、かなりの強者と見た。しかし、あのナツという女は見当たらない。


「よーしお前ら!売り手がつくまで好きにしていいぞ!でも傷はつけんなよ!!」


 犯罪集団のボスと思われる男が号令をかけると、他の男達が雄叫びを上げてハルのもとに集まっていく。

 ハルは怯え、顔を伏せて泣いているようだ。



 すると突然、一人の男の肩を、禍々しい手が掴む。西から日が出るように、森羅万象に存在しないはずの男が、そこにいた。


 ニコッ。


「え?」


 血だらけの顔から淡い瞳を覗かせて、頭に槍を貫通させたまま、バンが男を頬を殴り飛ばした。

 完璧に生きている。我慢強いとか神の意志などでは説明のつかない生還。

 おもむろに槍を抜き捨て、顔を手で拭う。いつの間にか、大きな傷口も消えている。


「今回は人は殺さないって決めたんだ。穏便に頼む」


「なッ!なんでテメー……!!」


「なんでテメー生きてやがる……言いたいことはよーく分かる。その言葉は聞き飽きたし、かといって言うなとは言わない。でも、お前ら如きに名乗る名は無い」


 バンは地面を足で軽く叩き、岩が飛び散らせる。

 空中に大小いくつもの岩が舞い上がる様子は、男達には急に魔法か何かで浮かび上がったように見えるだろう。

 バンはそれら全てを一瞬で蹴り飛ばし、全員の額に寸分の狂いなく命中させた。


 男達は声を上げる暇すらなく、その場に眠るように倒れる。


 こんな他愛ない厄介事にバンはよく巻き込まれるので、最低限の手加減は知っている。死ぬことはないだろう。

 しかし少し面倒なのは、まだ一人生き残っているということだ。


「はぁ……はぁ…はぁ…はぁ………なんだこのバケモンは……人間じゃねぇ!モンスターだ!助けてくれェ!!!」


 間一髪で回避した一人の男がいた。息を切らし、血の気が引いたような怯えた顔をしている。おそらく犯罪集団の親玉、と言ったところだろう。親玉ならあの一撃を避ける技量があるのも納得だ。

 今度はちゃんと当てよう。


「さっきから気になってるんだが、現代にはモンスターなんているのか?あんた達がトチ狂っているのか?」


「ヒィィィィィィイ!!!!」


 話が通じない。さっさと気絶させてハルを連れて行こう。

 バンが右足から一歩踏み出したその時、目に見えないほど細い糸を踏みつけており、トラップが発動する。


「!」


 両横から低空飛行で飛んできたカミソリの刃のような鋭利な刃物が足首を、ハサミで切るようにして切断した。


「ヘヘッ!!妙なハッタリかましやがって!ちと魔法が使えるくらいでイキがってるんじゃあねェッ!!!」


 バンがバランスを崩して地面に体を付けるかと思った直後、開花するかのように、切断面から一瞬で足が生えた。

 バンは踏ん張り、まるで何も無かったかのように歩き出す。


「な……なんなんだァ!テメェーーッ!!!」


「……事情をわざわざ説明する手間が省けたのは良かったんだが……やっぱりさっきのは余計だった」


「……ヘ…………ヘヘヘッ!冗談ですよォ~。ちょっとした戯れってあるでしょ?ね?この世界じゃあこれが常識なんですよォ~。反撃するってのは礼儀に反するってことでっせェ~」


 男は浮ついた態度で、尻もちをついても言い逃れをしようとする。

 あいつは何か事情あってこの世界の常識を知らないと見た。適当な事を吹き込んでおけば、ワンチャンある。


「面倒な常識は嫌いなんだ」


「理由は以上ですか、ハハハッ!」


「ハハハハハハハハハッ」


「アハハハハハハハハッ」


 男が腹を抱えて笑い妙な空間が完成する。

 バンが片手で腹を押さえ、片手で待ってくれという感じで手を翳す。と同時にバンが前触れなく唐突に掌から電撃を飛ばした。

 一直線で飛ぶ電撃は男の体を貫き、感電させる。


「あびっ」


「……後で縛っとこ」


 男は一瞬震えて、倒れた。

 こんな相手は朝飯前どころか数万年の眠りから覚めた直後でもいけるので、特に苦はなく楽しさもない。

 縛り付けてそこらへんに放置しておけばいつか衛兵隊が見つけるだろう。今は追われている身、変に大きな騒動は起こしたくはない。


 ハルのもとへ歩み寄ると、星のようにキラキラとした眼差しを向けてきた。


「流石バンさん!かっこよかったです!」


 一応は全員気絶という形で倒しているせいか、尊敬の眼差しが途絶えない。バンが縄を解いても、尊敬という名の重圧が尾行してくる。


「そういえばハル。あの女どこにいった?」


「上です」


「上ェ?」


 ハルが指差した方向を見てみてると、網に包まれたナツが目を回して吊り下がっていた。肉が漁網みたいに強靱な網に食い込んで痛そうだ。

 哀れむ目を向け、ため息をつく。仕方がない。


「よし、外に出るぞ」


「えっ!?見捨てるんですか!?助けないんですか!?」


「……いや…別に……どうでもいいし」


「はぁ……見損ないました」


「えェッ!!?」


 どうやら彼女はバンの使い方をよく分かっていたようだ。

 服を買い揃えたら久しぶりの飯を食べつつ事情を説明するつもりだったが、いろいろ脱線しすぎた。早くしないと日が暮れてしまうではないか。



題名をよくあるようなものに変えました。

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