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鬼の居ぬ間に−神代の少女−  作者: saΦre(蒼樹勇魔)
2/3

*神代の目覚め*

憧憬あるところに恐怖あり


正義あるところに邪悪あり


癒えあるところに病みあり


光あるところに闇あり


生あるところに死あり


ーーーーーーーーーーーーーーー


白い光に包まれて目を覚ますと、そこは知らない世界だった。

いつの間にか私は、灰色の椅子の上で眠っていたようだ。


椅子から立ち上がり、辺りを見渡しながら出口を探し回ったが、あるのはただ、白い光と果てのない暗い空間だけ。

それでも歩き続けていると、今度は色とりどりの形が宙に浮かんでいた。

丸、三角、四角、ひし形、六角形……

赤、黄色、緑、橙、青……

それらが星のように輝いては、

魚のように泳いでいる。

そんな様子を見ながら歩いていると、

だんだんと形が、原型をとどめていないほどにドロドロに溶けて、暗い空間を沢山の色で染めていった。

その様子は毒々しくて、見ているだけでも吐き気が増してきた。


早くここから抜け出したい。

そんな気持ちで、私は駆け出した。

だが、何度走っても同じ光景が目に映るばかりであった。

毒々しく混ざり合い、次第に溶けていく空間の光景が。


ミシッ………メリメリ…

空間が沢山の色で溶け出したかと思えば、

今度は空間が音を立てて崩れていった。


下敷きにされる。

そう思って、私は出口の無いような場所で、出口を求めて走り出した。

だが、崩れるスピードはだんだんと上がっていき、遂には私の身体を呑み込んだ。


苦しい……助けて…!!

私は必死にもがいた。

だがもがけばもがくほど、呑み込んだ空間は

まるでとらえた獲物を離さない獣のように粘着していた……




息ができない、腕ももう上がらない、背筋が凍りそう、肩が重い………

私は、気がついたらもがくことを諦めていた。

救いなど決してないと思い知らされたかのように……


ゴボゴボゴボ………ズブッ!


そこで、私の意識は途切れた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


眩しい光がまた射し込んだ。

私が目を覚ますと、そこは電車の中だった。

眠い目をこすりながら私は呟いた。

「…………夢…?」

そう言いながら、私は辺りを見渡した。

そこにはつり革につかまって次の駅を待っている社員や、スマホを見ながら楽しそうに会話をしている女子高生達がいた。


そして、引き寄せられたかのように窓を眺めると、そこには一見普通の街並みとほぼ変わらないように見えて、どこか常識から外れたかのような感じの現代都市の風景が目に映った。沢山のビル、独特な建物のデザイン、色とりどりに立ち並ぶ店、そして、世界の中心に立っているかのようなインパクトのある大きな鳥居に現代とは言い難い程のサイバーパンクな技術や施設が見えていた。

この風景はネットの写真でしか見たことがないので、生で見るのは初めてだ。

「もうすぐつくのかぁ。以外と長かったような気がする。」


私の名前は【朝晴アサハレ 椿ツバキ

勉強も運動も特技もただ平凡な女子大生。

ただ、一つ突飛した特徴があるとすれば、

男装趣味なことである。男装といっても、スーツとか、海パンとかコスプレとか、そういうのではなく、男らしいという服装が好きなだけである。動きやすいからというのが一番の理由であるのだが、男装趣味なこと以外はただの、ごく普通の少女である。

私は、来週からこの学園都市【神代カミシロ】にある大学に通うことになっている。

自立性重視なルール、多数の行事、環境整備の完備、バランスの整った教育制度などで評価が高い。

住む場所はその大学にある学生寮だ。

元々、何かの避難所に使われていたためか、

それなりの資源が備蓄されているらしい。

高校卒業後、大学に通うことを決意した私にお母さんが、この大学にしたらと勧めてくれたのがキッカケである。


私は、これからの大学生活のことを考えると

不安と楽しみが頭の中で混ざって現れる。

しかし、そんな思考は私の学生鞄が生き物のようにモゾモゾと動いている様子を見た瞬間、すぐに途切れた。


なんだろう?

私は怖いもの見たさで少し気になった。

本当は見たく無いのに……

私の中で矛盾が現れた。

見たいのに見たくない。そんな言葉が頭をよぎった瞬間、


「ニャア?」

急に鞄の中から黒い猫が

ひょこりと顔を出した。


「うわあああああああああああっ!!」

私は突然の出来事にびっくりしてつい

叫んでしまった。

見ず知らずの猫が自分の鞄の中からいきなり現れたので、驚くのは当然だ。

周りの人が乾いた目でこっちを見た。

私は驚いて、すぐ「ごめんなさい」と謝った。


私は謝った後、ゆっくりと肩を緩めた。

「あーっ。ビックリしたぁ…」

黒猫は何気ない表情で私を見た。

「ニャ?」

私は黒猫の方を向いた。

だが猫とはいっても、背中には灰色の翼が、

額には赤色の宝石がついていて、尻尾も二つに分かれている。可愛らしいのか異形なのか

はともかく、なんで電車の中にいて、そして私の鞄の中に入ってたんだろうと疑問を感じた。ただ、自分は飼ってはいないが誰かが飼ったという痕跡も無いように思える。


「うーん。捨て猫だったのかなぁ……それで鞄の中に身を隠していたのかもしれない。それにしても、変な猫だなぁ。」

私が独り言を言うと、ケットシーはそれに反応したかのように怒って

「変な猫とはなんだ!」

と喋った。


私はまたびっくりした。

「うわあああああ!喋ったああああ!」

だが、また周りの人から冷たい目を受けるのは勘弁だと思い、私はすぐに口を閉じた。

深呼吸する私に、猫が謝った。

「あ、驚かせちゃったかな?ごめん。」

「う…うん、もう…だい…じょう…ぶだから………」

私は一息ついた直後、猫に質問をした。

「ねぇ、アンタは一体何者なの?」

私がそういうと、猫は私の膝の上に乗って全てを話した。

「んじゃあ改めて、ボクはケットシー。猫の悪魔さ。朝晴 椿、君の“能力チカラ”を嗅ぎつけてやって来たのさ。」


私は、目の前の状況がわからなかった。

急に猫が現れて、急に喋ったかと思えば、自分が悪魔だの能力チカラを嗅ぎつけて来ただのわけのわからないことを言い始めていて………

私は混乱してその場で倒れこみそうになったが、そんな私の頭をケットシーが短い手で支えていた。

そして、どういう原理なのか私を元いた席へと突き飛ばした。

「うわぁ!?」

私はびっくりした。こんなに小さい子猫に、こんな怪力があるのか!?と。

でも、気絶しなくて済んだので私は

ケットシーにお礼を言って、ゆっくりと背伸びをした。


「それでさ、ケットシー。私の能力チカラを嗅ぎつけてって言ってたけど、能力チカラってどういうことなの?それに、なんで私の名前を知ってるの…?」

私が質問をすると、ケットシーは逆に私に質問をした。

「君は超能力というものを知っているね?」

「うん知ってる、テレポートとかサイコキネシスとか、そういうやつでしょ?」

私はケットシーを見て瞬きをした。

「そう、通常の人間ではできない特殊な能力のこと。だけど、ここ最近では【異能】とも呼ばれているね。」

「へぇ、でもそれと私の能力チカラとどんな関係があるの?」

私は首を傾げた。

「椿、君はその異能を操れる素質を持っているんだ。しかも、誰よりも強い力を感じるよ。これは相当の大物に違いないね。」

「私を資源扱いしないでよ!」

椿は少し怒った。

「まぁ、いいや。それで、何で私が強い異能を操れる素質を持っているって思ったの?」

だが、気にしないようにした。

「少し昔の話をしよう。とある開発者が、人の体を突然変異させる粒子を開発した。


「そういえば、今何時なんだろう?」

私が鞄の中を探ってみると、中から白いフレームでタッチペン付きのスマートフォンが見つかった。早速ホームボタンを押して時刻を確認すると

時刻は4月14日金曜日の午前10時46分を指していた。

「もうこんなに時間が経っていたんだ……」

私が電車に乗ったのは、朝の7時15分。

場所取りの準備をするとはいえ、午前4時半と随分早い時間に起きたので、乗ってる間はすごく眠かったのを、思い出した。

私が時刻を確認し終えてまた、窓の外を眺めていると、話し声が聞こえた。

「神代市って、遊べるところがいっぱいあるって聞いたけど本当なのか?」

高校生の男性二人組だった。

「ああ、そうさ。だが中でも1番なのは【レインボーパーク】だな。あそこのジェットコースターは声が枯れるほど絶叫させられるとも言われてるんだってよ!着いたらお前も一緒に行こうぜ!」

「いや、遠慮するよ……というか僕は水族館に行きたい気分かな。あそこのイルカショーは結構評判いいらしいよ。」

「んじゃあ両方いこうぜ!遊園地で絶叫しまくったらその後水族館に行って、その後ファミレスでお昼を食う!」

「どちらかというとお昼が先なんじゃないの?それに、そんな時間あるかな…」

「大丈夫だよ!レインボーパークはいつでも入場出来るからな!」

私は二人組の男の話を聞いてちょっとワクワクした。

「大学に通うのって来週からだから、着いたら私達もレインボーパークっていう遊園地で遊んでこよ!だったら、最初はジェットコースターに乗ろうかなー…いや、コーヒーカップも良さそうかもー!」

私は子供のようにはしゃいでいた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


ピコリロリロリーン。

電車内チャイムが鳴った。

電車内チャイムを聞いた私は現実に戻った。

「まもなく、神代〜。神代〜。御出口は、右側です。御降りの際は、お忘れ物のないようにきちんと確認してから御降りください。」

駅のホームにもうすぐ着く頃だ。

ホームには通勤通学の人達が大勢いた。


電車が止まった後、出口から

「ぴょん」とホームの床についた。

目の前が人混みだらけなので急いでその場を離れた。

改札口前には無料で提供されているパンフレットがあった。

パンフレットを取り出し、大学がどこにあるのかを確認した。


神代駅前は二階構成になっていて、下に行くためには二階の噴水広場にある窓付きのエレベーターで降りるのが近道だ。

早速エレベーターで下に降りると、そこには沢山のビルやら店やらが立ち並んでいた。

「うわぁ…いろんな施設がいっぱいある!よし、ちょっと寄り道しようかな♪」

私は、ウキウキしながら街並みを進んで行った。

すると、何やらスパイシーな香りが私の鼻を誘った。

「なんだろう?」

誘われるがままに香りが出たところを調べてみると、香りは噴水広場の噴水にある小さなワゴンショップから出ていた。

看板を見てみると「ワゴンダイナー【サンセットキッチン】」とカラフルな文字で書かれている。

大勢の客でいっぱい並んでいるようだ。

「ちょっと小腹がすいてきたし、軽く食べてこうかな。」

と思って私は列に並んだ。

すると、前の列の人が私に話しかけた。

「あなた、ここに来たの初めてだよね?あんたもあの香りにつられて来たの?」

見るからにして、自分と同い年の女であるが

山吹色の頭の上には金色の光臨、そして

後ろには白鳥のような白い翼が生えている。

「え…えぇ、そうですけど。」

私は敬語であっさりと答えた。

「だと思った。あの店、味もいいし雰囲気もいいけど、何より一番のウリは香りなんだよね。特に、とろーりチーズのポテトフライといったら……5種類のチーズを使っていて、でもそれらの味を無駄にしていなくて、チーズの香りとポテトの香ばしさを見事にコーディングしていて当店オススメメニューとも言われるほどの人気を誇っているんだ!この店には昔っから通ってるんだけどこの発想には幽体離脱するほど驚かされたよ!!」

私は唖然としていた。そんなに沢山語れるほどであれば、きっと文句なしの味なのだろう。と思った。

でも、幽体離脱は流石に大袈裟かも…

「随分と詳しいんですね。でしたら他に、オススメできるメニューはありますでしょうか?」

「あぁ、あるさ!ハンバーガーやチーズバーガーなどの定番食は勿論、美味しさと新しさで作られたメニューもあるんだ。パティの代わりにチキングリルを挟んでその上にチーズをかけたチーズチキンバーガーとかさ!」

「へぇ!凄く美味しそうですね!」

「あっ、そうそう!このサンセットキッチンのワゴンショップはね、いわばチェーン店みたいなものなんだよ。」

「えっ!?そうなんですか?」

「より多くのお客さんに味わってほしいからって始めたらしいんだ。」

女の人はまるで知り合いかのように気軽に話していた。


「おっと、自己紹介がまだだったね。 私の名前は【金扇カナオウギ 神奈カンナ】。天使っていうものさ。金扇が苗字で、神奈が名前さ。呼び捨てで構わないよ。宜しくね。」

「私は【朝晴アサハレ 椿ツバキ】です。朝晴が苗字で、椿が名前です。」

そう言いながら、私は微笑んだ。


「次のお客様。ご注文をどうぞ。」

二人が気づくと、もうカウンターの前にいた

「あっ、やっと私か。んじゃあチーズチキンバーガーを一つととろーりチーズのポテトフライ一つください。」

「同じのを一つください。」

私が割り込むように言った。

「あっ、ずるい」

神奈はしかめっ面で言った。

「かしこまりました。」

店員は神奈と私の注文を受けてすぐに厨房へ向かい、調理を始めた。


「すごくおいしそうだな………」

私の肩に乗っていたケットシーがよだれを垂らしながら言った。

「ケットシー、大丈夫なの?アンタ猫だったはずじゃ……」

そういうとケットシーは少し怒ってジタバタ暴れ出した。

「もう、忘れたの!?僕は悪魔だよ!人間が食べれるものもちゃんと食べれるよ!」

手がつけられないほどに怒り狂うケットシーに耳を塞いでる私に、神奈が質問してきた。

「ねえ、この猫アンタが飼ってるの?」

私はケットシーを押さえて、神奈の質問に答えた。

「うん、名前はケットシーっていうんだ。結構触り心地がいいよ。」

私がケットシーを神奈に差し出すと、神奈は笑顔でケットシーをナデナデした。

「おー、よしよーし。かわいいなー!」

しかし、ケットシーの頭から白い煙が出ていた。その煙は、光のように眩しかった。

その瞬間、ケットシーが更に暴れ出した。

「あっつうううううううううういっ!!!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!煙!煙出てるよ!やめてー!やめてー!ナデナデやめてえええ!」

ケットシーが苦しそうにもがく。

私は何が起きているのかがわからなかった。

神奈はむすっとして

「なにさ、せっかく可愛がってるのに。」

撫でるのをやめた。

すると、煙はもう出なくなった。

ケットシーはヘトヘトだった。

私はそんなケットシーに質問をした。

「なんで私が撫でても何もなかったのに、神奈が撫でると煙が出るの?」

「うん…それは……神奈が………天使だから…だよ…悪魔と天使…は対を成す…存在だからか…触れただけでも…発火しちゃうんだ。」

「そうだったんだ……でも、触れただけでも発火するなんてどんな原理なんだろう…」


登場人物の容姿の説明をこのあとがきに

使って話します。


朝晴アサハレ 椿ツバキ】は焦げ茶色のストレートロングヘアーで、瞳の色は水色です。みずみずしい感じの藍色の半袖セーラー服を着ている子です。白いニーハイに茶色いローファーを履いています。名前の由来は花のツバキです


金扇神奈カナオウギカンナ】は、山吹色のショートヘアーで、頭の上に金色の光臨がついており、背中に白い翼が生えています。

そして白と黒の袖をまくったボーイッシュなジャージを着ています。

瞳の色は赤に近い橙色です

ちなみに名前の由来はカンナです。


【ケットシー】は、黒い猫で灰色の翼を生やしており、額には赤色の宝石がついています。尻尾は二本に分かれています。

目も宝石みたいな感じです。


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