昔の話
先輩と連絡がとれなくなった。
元々返事は遅い方だったし、時間にルーズでマイペースな部分も多かった。
だから今回もいつものことだと思って流してた。
でも違った。
待てど暮らせど連絡は来なかった。
仲はいい方だったと思う。
高校2年、初めてのバイト先、そこで知り合った一つ上の先輩。
当たり障りのない会話しているうちに同じ学校だと知った。
趣味も似ていた。
性格は全然似てなかったけど、自分にはないものをもっている人だった。
とても優しくて気があう人だった。
学校でもバイトでも会う度話しをした。
わざわざ同じ日にシフトを出したりもした。
いろんなところに遊びに行った。
お泊まりもした。
でもなにもなかった。
当たり前だけど。
先輩の卒業式のあと、夏に旅行に行く計画を立てた。
どこに行くか、何をするか、考えるのがとても楽しかった。
"お前とならどこへ行っても楽しいけどな"
そう言ってくれたのも覚えている。
最後の会話も、なんともない普通の会話だった。
返事が返って来なくなっても、何事もなかったかのように過ごした。
心の片隅にはずっとひっかかっていたけど、気にしないふりもした。
でも自分から連絡するのも癪で、そんなことばかり考えていたら、どんどん月日は流れていった。
時間がたつと消えると思っていたこの感情も、どんどん増えていくばかりだ。
どこかに落としてしまいたいのに、それを離せない自分がいる。
流れていく時間は、僕がそれの正体を知るには十分な時間だった。
好きだった。
ずっと好きだった。
愛していた。
ちょっと短気なところも、怖がりなところも、一度決めたら曲げないところも、本当は人一倍優しいところも、全部全部好きだった。
わかっている。
もう二度と返事は返って来ない。
会うこともできない。
声も聞けない。
顔も見れない。
なんで何も言わないままいなくなるんだ。
最後に顔くらい見せて欲しかった。
いつもみたいに笑っていて欲しかった。
君の目を見て、好きだと言いたかった。
こんなに人を好きになるのは初めてだったんだ。
君だから好きになったんだ。
僕のことは嫌いでもいい。
愛してくれなくていい。
二度と目を合わせてくれなくてもいい。
ただ聞いて欲しかった。
きみに知って欲しかった。
僕がこんなにきみを愛していたということを。
僕はもう何年も、君に片想いをしている。
昔のまま、何も変わらない記憶の中の君に。