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国の宝がこんなにもいっぱい

 出産確認を無事に終え、シュンは病院を出た。妻やトルフィンともっと戯れたい気持ちはあるが、シュンは国王である。プライベートなことにばかり囚われてはいられない。


 まず田畑の偵察。

《城下町》からほど近い草原を開墾し、米や作物の栽培をモンスターに任せてある。彼らは本当によく働いてくれている。


 特に植物型モンスター《ネプト》の働きはすさまじい。通常、米は秋頃に収穫時期となるが、ネプトのおかげで、シュロン国にのみ春・秋が収穫時期となる。それでいて質もしっかりしているのだから恐ろしい。


「はは……すげえな」

 苦笑しながら、シュンは目の前に広がる田んぼを見渡した。

 地平線まで広がる田園に、程良く成長した麦が風に揺れている。そして、あちらこちらに植物型モンスター《ネプト》が両手を合わせているのが見て取れる。ネプトもロニンと同じ、人間の女の子の姿を模している。体毛が草になっているが。


「どうだ、調子は」

 シュンは近くにいたネプトに話しかけた。

「あ……王様……」

 ネプトは顔を赤らめながらシュンを見上げた。

「えへへ……はい、ばっちりです」

「ほん?」

「王様が毎日、しっかりした食事を私たちにくださるおかげです。昔よりも《祈り》が通じるようになりました」

「……なるほどな」


 少女たちが言うには、ネプトらは毎日、作物に《祈り》を捧げているらしい。そうして成長を促進させているのだと。

 まあ、それだけではなく、魔王城とシュロン国では土地の質が違う。それらいくつもの要素が、豊かな収穫に繋がっているのである。


 ネプトは変わらず頬を染めたまま、シュンに言った。

「私の仲間、みんな言ってます。王様のおかげで幸せになれたと」

「そんなこたぁないんだぜ? 頑張ってんのはおまえたちだ」


 実際、この件に関してシュンがやっているのは、大切な人材を適所に配置しているだけ。国民は実によく働いてくれている。

 人間とモンスター。

 二つの種族を協力させるだけで、思わぬ相乗効果を得たというわけだ。さすがにシュンはそこまで予想していなかった。


 シュンはネプトの頭を撫で、優しく言った。


「おまえたちは国の宝だ。これからも頑張ってくれよ」

「あ……あうあう」


 ネプトはなぜかさらに顔を赤くし、続いてぶんぶん首を縦に振った。


「わ、わわわかりました! 一族にもそのように伝えておきます!」

「おう」

「……羨ましいな、ロニン様」

「なんか言ったか?」

「な、なんでもありません!」

「そうかい」

 シュンは最後に手を振りながら、農場を後にした。


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