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念願の赤ん坊

 シュンは十八歳になった。

 ロニンは十六歳。

 人間世界の常識に照らし合わせれば、とうに結婚してもおかしくない年齢ではある。


 そしてその国王と王女が、本日、子どもを出産した。その吉報は、狭いシュロン国にあっという間に広まっていくだろう。ディストを除くすべての国民が歓喜すると思われる。


「おぎゃーおぎゃー」

 泣き叫ぶ赤ん坊を抱えながら、シュンは深い感慨を噛みしめていた。


 俺も随分遠いところまで来たなーーと。

 ロニンとエ○チ三昧な生活を送っていたときもそう感じたが、もう自分は国王であり父親なのだと。この子には立派な《引きこもり》となってもらわねばなるまい。


「シュンさん……その子の、名前……」

 ロニンが息切れしながら言った。

「ん? あー、そっか」

 出産前にも色々と名前を考案してみたが、良い名はついぞ思い浮かばなかった。というより、国王として多忙の日々を送っていたので、名前付けは後回しにせざるをえなかった。


「これ……」

 ロニンが一枚の紙切れを差し出してきた。そこには赤ちゃんの名前候補と思われる人名がびっしりと並んでいる。

「はは……すげえな」

 あまりにも多い名前リストを見て、さしものシュンも苦笑を禁じ得ない。

「楽しみにしてたんだもん……シュンさんと、私の子ども……」

「そうだな……俺も楽しみにしてたよ」


 引きこもっていた時期には考えもしなかった。

 自分の子どもが、ここまで可愛いなんて。親になるとはこういうことかもしれない。この子がどんなことをしでかしても許せそうだ。


 ーー親、か……

 そう思えば、引きこもり時代には世話になった。いつか礼を言わねばなるまい。

 そんなことをぼんやり考えていると、ふと、リストのなかから気になる名前を見つけた。


「これ、いいんじゃねえか」

「ん、どれどれ?」


 その名もーートルフィン。

 特に理由はないが、シュンはこの名前に引きつけられた。強さのなかに可愛らしさ、優しさの感じる名前だ。まさにシュンとロニンの性格を組み合わせたような。


「それね。私もいいと思ってた……」

 薄い笑みを浮かべながら頷くロニン。

 かくして、二人と子はトルフィンと名付けられることになった。

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